今なお苦しみつづける被害者にご支援を｜全国統一教会被害対策弁護団

プロジェクトページ上でも紹介させていただいています、櫻井義秀先生からの応援メッセージの全文です。

■櫻井義秀先生（北海道大学大学院教授）

　統一教会（現在は世界平和統一家庭連合）は、60年におよぶ活動において日本社会に3つの大きなインパクトを与えました。
　第一に、「霊感商法」と呼ばれる資金調達活動によって一般市民の資産を収奪したことです。姓名判断や家系図診断によって不安や不幸せ感を増幅させ、数十万円から数百万円相当の霊感グッズを販売しました。しかし、全国霊感商法対策弁護士連絡会が30年以上にわたって被害者救済を継続してきたことで、霊感商法の違法性が判例として確立し、今般の「法人不当寄附勧誘防止法」の制定においても禁止行為として明示されました。
　第二に、信者に長期にわたる多額の献金要請を行ってきたために信者の家庭が疲弊し、子どもの扶養や教育を十分にできない信者家庭を生み出してきたことです。子どもたちのなかには、宗教的教説や規範によって子世代の信教の自由や性・結婚の自由を奪うことを「宗教的虐待」として問題を告発し、統一教会に限らない「宗教二世」の問題が日本の宗教界でクローズアップされてきました。厚生労働省は、「宗教の信仰に関する児童虐待への対応指針」を全国の自治体に通知しています。
　第三に、統一教会は、1980年代末までは反共産主義、それ以降は保守的な家族観や家庭教育などをとなえることで多くの自民党政治家と関係を構築し、日本の政治に影響力を行使してきました。現在、政治と宗教の関係が問い直され、宗教法人のあり方についても厳しく批判されているところです。
　このような状況において、統一教会の活動に巻き込まれて多額の金銭的損失（霊感商品の購入や過度の献金要請に応じて財産を費消）を被った一般市民や元信者（現在の統一教会に批判的な信者も含む）が、全国統一教会被害対策弁護団に「被害の回復」を求めて集団交渉を委任しています。少なからぬ被害者が高年齢者であり、統一教会を相手取って損害賠償請求訴訟を起こす資力も時間もありません。しかしながら、統一教会は第一と第二の論点で述べた宗教法人としての組織的な資金調達活動を認めず、個別の販社や信徒会なるものが独自の意思で個別に市民や信者対象に販売や献金要請を行ってきたと述べ、今に至るまで個別交渉を原則的に主張してきました。
　誠実に元信者や現在の信者に対応することが、宗教法人としての適格性に関わることは言うまでもないことです。まして、信者の福祉に反する態度を維持したり、一般市民や政治家・自治体職員に対して種々の団体を使って統一教会の名前を明かすことなくアプローチしたりするような行為もまた、宗教倫理にそぐわない行為と言わざるをえません。
　現在、統一教会問題に端を発した宗教不信や政治不信が深まっています。全国統一教会被害対策弁護団の活動は、統一教会に関する被害の回復にとどまらず、日本の宗教や政治のあり方を問い直し、信頼を回復する大きな社会運動になるのではないかと期待しています。多くの市民の方に運動を支えてもらうことができれば、大変にありがたいことです。

櫻井義秀：宗教社会学者　東アジアの宗教文化や現代宗教の動向を研究

櫻井義秀・中西尋子『統一教会－日本宣教の戦略と韓日祝福』（北海道大学出版会、2010年、四刷新版2022年）
櫻井義秀『統一教会－性・カネ・恨（ハン）から実像に迫る』（中公新書、2023年3月刊）