このプロジェクトを開始する前は「シャチ好きの人が気にかけてくれるといいな」と思っていたのですが、ふたをあけてみたら支援して下さったのはシャチ関係の方々だけでなく、ありがたいことに音楽関係や通りがかりの方までさまざまな方が支援・応援してくださったんです。感謝!!

 

つまり、支援・応援してくださった方のなかにも、あんまりシャチのことをご存じない皆様がけっこういらっしゃると思うのです。
シャチっていったいどんな動物なんでしょう?

 

●ちっさいクジラであり、でっかいイルカであるシャチ

たくさんの種類があるイルカクジラ類ですが、実はだいたい身体の小さい種類をイルカ、大きい種類をクジラと呼んでいます。
シャチは英語でkiller whaleですからいちおうクジラと呼ばれているのですが、かたち的にはでっかいイルカですね。



シャチの体長は5〜7m、オスの背びれは高いもので2m近くになります。この背びれに骨はなく、野生ではピシッ!と立っていてとてもかっこいいですが、水族館で飼われているシャチの背びれはさまざまな要因によりぐにゃりと倒れています。
メスの体長はひとまわり小さく、背びれもオスの半分くらいの高さしかないです。

 


●レジデントとトランジェント

シャチにも住む地域と食べ物によっていろいろな種類があります。
魚を食べるレジデント、他のほ乳類も食べるトランジェント、よくわかっていないオフショア、クローゼ諸島沖などにいる雑食性のシャチ、さらに南極のシャチに至ってはその場所だけでタイプA〜Dがあるのです!ややこしいですね…。もちろんまだ判明していないことも多いです。

ここでは私が調査しているカナダの海域でよく見られる、メジャーな種類のレジデントとトランジェントについて書いていきます。同じシャチなのに生活様式がまったく違うんです!

 


「トランジェント(回遊する者)」



みなさまがシャチという名前を聞いたとき真っ先に思い浮かべるのは、ほ乳類を襲うコワイ姿ではないでしょうか?そうなんです、トランジェントは自分より大きなクジラも襲って食べます。
でもそう簡単に食べ物には巡り会えないんです。獲物を探して広い海域を旅します。
食べ物のほ乳類に自分の存在がバレると困るのであんまり鳴きません。
潮吹き(息継ぎ)も静かです。
身をひそめるため長い時間潜っていられます。
狩りをする姿はとても豪快で残虐で、テレビや映画的によい絵づらだったのでしょう。
このトランジェントが「シャチは怖い」というイメージを一般に広めてしまったと思うのですが…

 

「レジデント(滞在する者)」

わたしたちがオルカラボで調査対象としているのはカナダに住むレジデントのシャチです。
このシャチたちの食べ物は河口付近に集まって来るサーモンです。人間は紅鮭が好きですが、シャチは人間の好みとは違ってキングサーモン(マスノスケ)が好きみたいです。

餌が魚なので、レジデントはくらしに余裕があります!
魚が集まる場所さえ把握しておけばそんなに広い範囲を泳ぎ回る必要もありません。なので、レジデント(滞在する者)です。


レジデントはびっくりするくらいおしゃべりで海の中で何時間でも鳴いています。
鳴き声は数十キロ先まで届き、その声を聞いた仲間が会いに来ます。というのもレジデントは家族ごとに方言があって、鳴き声でどこの誰か瞬時にわかるんです。慣れれば人間でもこの方言を聞き分けることができます。

そうやって仲間と遊んで、バイバイして、また別の仲間の声を聞いて会いに行って遊んで…とっても社交的な動物なんです!

しかし精神的に脆いところもあり、お母さんが死ぬと息子(大人)が強いストレスで死んでしまったり、妹がボートにほんのちょっと接触しただけでお兄ちゃんがパニックに陥って座礁しかけたり…といった事例もあります。よくいえば家族想いなんですね。


この家族や仲間とのやりとりが、私が15年もカナダに行って彼らの行動を調べる大きな理由のひとつとなっています。あんまり動物を擬人化したり、人間の立場と同じように考えたりはしたくないけど、長く調査を続けていると彼らに感情や強い家族愛、仲間愛があることは否定できなくなってきます。
なんとも不思議で魅力的な動物なんです、シャチって。


レジデントとトランジェントは一説には1万年以上前に別の種類にわかれたと言われており、自然界で交配することはありません。

海のなかで出会った場合、肉食のトランジェントがそっと身をひそめて、にぎやかなレジデントに道をゆずることがほとんどです。

 

●エコロケーション

シャチの出す音のなかで、鳴き声のほかにもうひとつ重要なものがあります。
それが、エコロケーション。

こうもりが暗闇のなかで音波を出し、洞窟のなかのでこぼこを調べるのと似たようなしくみです。
私たち人間は声帯を震わせて声を出しますが、シャチには声帯がなく、かわりにおでこの中にあるメロンというぶよぶよした脂肪の固まりのようなものを震わせて音を出します。

エコロケーションはこのメロンから「カツカツカツカツ」いうクリック音を出し、跳ね返って来た音で対象物の形を調べるしくみです。

シャチには外耳もありませんので、跳ね返ってきた音をあごで受け取って、あごの骨から耳骨に送ります。

こんなシステムだけど好きなサーモンの種類までわかるくらい正確なんだそうです。シャチに生まれ変わったら使ってみたいな!

 

(写真/イラストもbyわたくし)

Tomoko

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