炎を翔ける住職。仲間と共に、向津具半島の再興へ。

ノリィ
田立イインチョ、向津具に語り継がれる「楊貴妃伝説。」中身をわかりやすく教えてください！

 

イインチョ

うん、楊貴妃は唐(昔の中国)の時代の玄宗皇帝のお妃なんだ。世界三大美女の一人として知っている人もいるんじゃないかな。

 

この玄宗皇帝、楊貴妃を愛するあまり、皇帝としての仕事をおろそかにしてしまった。その結果、世にいう安史の乱を引き起こす。近衛隊長の陳元礼は、災いの根源は楊貴妃であるとして、楊貴妃は処刑され、生涯を閉じたとされているんだ。

 

ノリィ
楊貴妃自身は何も悪くないじゃないですか！きれいで、皇帝から愛されただけでしょう？

 

イインチョ
楊貴妃にとっては災難だよね。背景には当時の政治情勢とか絡んでくるから、興味があれば調べてごらん。それでね、この話には続きがあるんだ。

 

ノリィ
もしかして、それが向津具の楊貴妃伝説？

 

イインチョ

そう。江戸時代の僧であり二尊院の第55代住職の惠學が、周辺の古老から聞き取りをして『楊貴妃伝』と『二尊院由来書』を書き残していてね。

 

その寺伝によると、時は、天平勝宝八年(西暦７５６年)７月、小舟に乗って向津具半島の唐渡口（とうどぐち）という入り江に空艫舟が漂着し、中に高貴な女性と侍女が乗っていたと。たいそう弱っていたんだけれど、事情を聞くと、陳玄礼近衛隊長が、玄宗皇帝があまりに悲しむ姿を見て胸を打たれ、楊貴妃を処刑したと見せかけ、部下に命じて空艫舟（うつろぶね）を作り、数日分の食料と一緒に海に逃がしてくれたという。

 

ノリィ
楊貴妃、処刑されなくてよかった。でも心細かっただろうし、怖かっただろうし、辛かっただろうな・・・。言葉は通じたのかなぁ。

 

イインチョ
当時は大陸との交流がかなりあったみたいだからね。言葉のわかる人もいたんだろうね。

 

向津具の里人たちは介抱してあげたんだけれども、まもなく亡くなったので、寄り合って天請寺（後の二尊院）の境内に埋葬したんだと。一方、玄宗皇帝は楊貴妃への恋慕が断ち切れないでいてね。

 

すると、楊貴妃の霊魂が海を渡って長安まで往来し、幾夜も続けて夢に現れ「日本に流れ着いて生涯を終えました」と告げるのだと。玄宗皇帝は楊貴妃への愛情があふれだし、追善供養のために、唐朝でも秘蔵の霊仏、阿弥陀如来・釈迦如来の二尊仏と十三重の大宝塔を届けるように部下に命じたんだ。

 

使者として白馬将軍陳安が日本に海を渡って来たんだけど、いずれの地に漂着したかも分からないので、京都のお寺にしばらく二尊仏を預けることにした。本朝無二の霊仏であることから、身分に関係なくこの尊像を拝もうと人々が集まり、霊験あらたかなことから参拝者が日増しとなるうちに、楊貴妃のお墓が、長門国の天請寺にあることが明らかになった。

 

朝廷より二尊仏を天請寺に移すよう勅命が出たんだけど、京都のお寺も霊仏を長門国に送るのがあまりに心残りで、朝廷に嘆願し、名仏師に命じて同じ二尊仏を彫刻し、阿弥陀如来・釈迦如来の一躰ずつを分け合い、それぞれの寺院で安置することになったんだよ。

 

この時、天請寺は、朝廷から新たに二尊院と申す院号が勅賜され、朝暮において皇城鎮護・天下泰平・国家安全・五穀豊穣の祈願怠慢なく修行すべしとの勅命を賜った。楊貴妃と侍女のお墓も建て直し、中央にある大きな五輪塔が楊貴妃、その両脇にあるのが侍女のお墓と伝えられているよ。

 

 

 

いつともなく二尊院にお参りすると、女人を守護し、安産・子宝・縁結びのご利益があり美人になると信仰を集めるようになった。里人に親切にしてもらった楊貴妃が天女となって、ご加護をくださっているんだよ。

 

ノリィ
それで、楊貴妃炎の祭典では、「願い札」にお願いごとを書いて、楊貴妃に届くよう、大護摩を焚くんですね。

 

イインチョ
うん、最高峰の修法が柴燈護摩祈祷、すなわち火渡りの儀なんだよ。

 

ノリィ
修法についても、また詳しく聞きたいなあ。それはまたの機会として。イインチョ、楊貴妃伝説について教えていただき、ありがとうございました！

 

イインチョ
どういたしまして。

 

阿弥陀如来と釈迦如来の二尊仏や楊貴妃の墓の五輪塔は文化財としての評価も高くてね。二尊仏は国指定重要文化財、周囲を囲む四天王立像や、五輪塔は県指定有形文化財でもあるんだよ。通常は維持・保存のために、拝観料をいただいているんだけど、楊貴妃炎の祭典当日は、無料で拝観できるようにさせていただきます。

 

2019年10月19日(土)、たくさんの皆様のお越しをお待ちしております。レディフォーでのご支援も賜りますと幸甚です。支援者の皆様の願いが楊貴妃さんに届くよう、心を込めて、気合いを込めて、火渡りの儀を行います。

 

向津具半島に、関わる全ての方々に、元気をもたらしますように。

応援、よろしくお願いいたします！！