プロジェクト概要

読み書きに困難を抱える子どもたちが、ひとつの配慮事例から新しい解決事例を生み、学び、夢を実現していくために。「配慮事例バンク」を応援してください!

 

 

知ってください 読み書きに困難を抱える子どもたちのこと

 

こんにちは。菊田史子と申します。私には、読み書きに困難を抱える息子がいます。息子の子育てを通して、発達障害児の親のセーフティーネットの必要性を感じ、親の会の立ち上げや制度の勉強会を開催してきました。新宿区教育委員として、学校現場を訪問しながら、新宿区の教育施策にも関わっています。

 

息子の高校受験をきっかけに、読み書きに困難を抱える子供たちが、学び、進学し、自分の夢を実現していくために必要なのは「情報」だと気が付きました。一人でも多くの子どもたち、そしてそれを支援する先生や保護者と情報を共有したい。その思いから、事例バンク事業を始めることにしました。

 

 

本当は学びたいのに、教室の中での学びに困難を抱える子どもたち

 

教科書を音読すること。黒板の文字をノートに書き写すこと。テストの答案用紙に答えを書くこと。そんな当たり前の読み書きに、困難を抱える学習障害(がくしゅうしょうがい、Learning Disability 、LD)の子供たちは、日本ではクラスに4.5%程度いるとわかっています。

 

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書くほど自己肯定感が下がる

 

文部科学省によれば「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである」と定義されています。

 

ただ困難が特定分野に限定され、発達に遅れがないため、障害ではなく「努力不足」「勉強不足」と見過ごされてしまうことも多いのです。

 

 

鉛筆の代わりにICTを利用する
それだけで読み書きの困難から解放されます

 

私の息子も、そんな子どもの一人でした。

 

小学校に入学する頃、息子の「読み書き」に違和感を感じ始めました。国連本部の仕組みについて説明して大人を驚かせる一方で、私が隣に座って何度書き直しても、自分の名前を文字で書くことができない。

 

癇癪を起こし、床に伏して泣きじゃくる息子の隣で、「あなたのためだから」と、必死に文字の練習をさせました。毎日が戦いでした。

 

小学校4年生 筆算で枠無しの場合は計算ミスが多い
小学校4年生 筆算 枠有りのノートで正答率が上がる

 

ある夜、いつものように疲れ果てた息子の寝顔を見ながら、「この努力は息子のためになるのだろうか」「字を書かせたいのは私で、それは私が良い母親でありたいからなのではないか」と、はっとしました。私は本当の意味で息子に寄り添っていなかったと気が付いたのです。

 

「書くのは、もうやめようね」と息子に話すと、息子はほっとした顔で笑いました。その日から、私たち親子は、書かなくても学びを続ける手段を探し、東京大学先端研センターが主催する「DO-IT(Diversity, Opportunities, Internetworking and Technology) Japan」と出会いました。

 

このプログラムは、障害や病気のある小中高校生・大学生の高等教育への進学とその後の就労への移行支援を通じ、将来の社会のリーダーとなる人材を育成するため、「テクノロジーの活用」を中心的なテーマに据え、「セルフ・アドボカシー」「障害の理解」「自立と自己決定」などのテーマに関わる活動を行っています。(DO-IT Japanホームページより抜粋)

 

このプログラムの中で、息子は、鉛筆とノートの代わりにタブレットを使うことを知りました。「この方法なら僕も勉強することができる!」と目を輝かせました。

 

教室内でのiPad使用の様子
小学校でiPad利用の様子
5年生感想文 PCを利用すればたくさん書ける

 

当時、その地域で知る限り、教室にタブレットを持ち込み、学習する前例はありませんでした。たくさんの方の支援があり、様々な壁をのりこえ、6年生の春、公立小学校の教室でタブレットの使用が始まりました。

 

「ママ!80倍くらいノートテイクが楽になった!」と息子は笑顔を見せました。それ以後、息子は教室から脱走する理由がなくなり、級友との間に、居場所と活躍の場ができていきました。

 

 

DO-IT Japanでつながる人との出会い

 

DO-IT Japanで、息子は新しい学びの手段を知りました。そして私は、孤独な子育ての中で、「読めなくても書けなくても学ぶ方法はきっとある」という信念で、DO-ITにたどり着いた保護者との出会いがありました。

 

 

高校2年生の山口幸強君

 

岩手県に住む山口幸強くん(17歳)のお母様の美香さんは、小学校時代についてこのように語ります。

 

”息子の困難が障害であることに最初は気が付きませんでした。そんな息子をイジったり、馬鹿にする子が現れました。息子は教科書をビリビリに破いたり、ランドセルを丸ごと、びしょ濡れにして帰って来ることもありました。時には、突然、教室を飛び出し学校から脱走し行方不明になった日もありました。

 

息子が、感情を抑えられず、騒いでいる姿を見た人の中には、「こういうキレる子が、将来 殺人をおこすんですよ。」とか、「親の育て方が悪いから言う事を聞かないのだ。」と心ない言葉を言われた事もありました。

 

また「男の子なのだから大きな音くらいで怯えるな。」と聴覚過敏を理解して貰えないことがありました。”

 

 私の息子と幸強君に共通していること。

 それは、読み書きに困難があっても学びたい、という強い気持ちでした。

 

 

読み書きへの配慮が叶えるものは、学力なんかにとどまらない

 

中学入学後、先生と話し合いの場をもち、PCを導入すると、息子は勉強に夢中になりました。書きの困難をICTによって代替することで、順調に学力を伸ばした彼は、進学校への進学を志望しました。

 

息子が試験を受けるためには、答案をPCで作成することが必要です。もちろん前例はありません。勇気を振り絞って配慮の申請を提出した息子を、それぞれの立場からたくさんの人が応援してくださり、高校入試の配慮を受けることができました。

 

小学校でiPadを持ち歩く様子

 

鉛筆の代わりにICTを利用すること。それだけで息子の学びは変わったのです。

 

いま、息子はPCでノートテイクをし、友達とYoutubeやゲームを楽しみ、バイトをしたり、同級生が泊まりに来たり。「読み書き」に困難を抱えていても、ごく普通の高校生として毎日を過ごしています。

 

読み書きの配慮を得たことによって、息子は学ぶことだけではなく、生きる喜びをも知ったのです。

 

しかし、彼らのように読み書きに困難を抱える子どもたちの多くは「努力不足」

「もっと頑張れ」と、周囲の無理解が原因で、十分な学びを得られていません。

 

そして義務教育修了を前に、受験という試練と向き合うことになります。

 

 

僕はタブレットを使うことで、僕の学びを手に入れた

 

そんな中「学びたい」という情熱で、自らが必要な配慮を求め、それを実現する子どもたちがいます。

 

松谷知直君は、奈良県立工業高校 機械工学科の2年生です。

 

 

奈良県立の高校に入学した松谷知直君

 

松谷くんの漢字練習ノート

 

”僕は自力での読み書きがとても苦手です。自分の名前も書き間違えることがあります。低学年の頃は、母が問題を拡大コピーをしたり、見やすく加工したりしてくれましたが、学校はとても大変でした。

 

そんな僕でも、助けてくれるモノがあれば、読み書きができるとわかったのは、小学校5年生でタブレットに出会った時でした。それから担任の先生や校長先生に自分の困難を説明し、学校でタブレットを使えるようになりました。

 

中学校ではテストの対応の交渉もしました。高校入試では、中学校での支援や配慮が引き継がれ、PCを利用して受験し、実力を発揮することができました。高校でも、PCを使って学習し、定期考査はPCで受けています。新しいことを知ることは、とてもエキサイティングです。

 

そして、学ぶこと以外にも、良いことがたくさんあります。読み書きに費やしていたエネルギーを他のことに使えるようになり、電子工作したり、ロボットを作ったり、趣味の時間をもてるようになったほか、高校では無線部にも所属し高校生活を満喫しています。これまでは疲れてできなかったゲームもできるようになり、楽しみが増えました。”

 

松谷くんは、自らの困難に真摯に向き合い、前例のない場所で、ゼロから解決方法を生み出しました。障害を理解してもらうために様々な工夫をし、辛抱強く交渉を続け、支援と配慮を得て、未来を切り拓く子どもたち。実は全国にたくさんいるのです。ただその事例を、多くの人は知ることができません。

 

 

前例があるはずなのに、配慮が受けられない

 

タブレットを使用することで、学びを取り戻した知直くん。

 

でも母の真由美さんには心配なことがありました。

 

”知直は先生や校長先生の理解を得て、配慮を受けることができました。

 

でも「高校では支援も配慮もないのだから、中学校で支援や配慮をしても仕方ない。」「前例がないから配慮を受けられない。」という相談を度々受けるのです。

 

息子の前例があるはずなのに、同じ地域の中でもそれが周知されないことに、もどかしさを覚えました。

 

同じような困難を抱える子供たちは、配慮を受けられるよう学校と交渉していますが、個々に行われている交渉が、繋がることはありません。でもそれでは困難を抱えながらも学びたいと願う子供達の助けにならない。

 

情報を必要としている人に、必要な情報が届くシステムがあれば、と強く思いました。”

 

 

全国の配慮事例を子どもたちに伝えたい

 

私たちが高校受験でたくさんの学校を回って感じたのは、先生も保護者も「前例」がわからないということ。先輩たちが大変な苦労をして1校、2校と拓いてきた事例が共有されないから、毎年毎年、「前例を見せてくれたらやってあげる」と言われてしまう。

 

私たち当事者にできることは、この前例を次につなげることではないか。その思いが日に日に募りました。そして、同じようにLDの子供をもつ保護者、そして私の考えに賛同してくれた友人とともに、事業を始めることを決め、一般社団法人読み書き配慮を設立しました。

 

 

あるよストーリーバンクにできること

 

私たちの願いは、ひとりでも多くの子供達に、解決のストーリーを届けることです。ひとつでもロールモデルに出会うことができれば、彼らは自分の未来を想像することができます。

 

 

 

読み書きに困難があっても 誰もが学べる社会へ

 

私たちは、全国のパイオニアたちが開拓した事例を集めて共有するストーリーデーターベースによって、読み書きの困難そのものへの理解と支援への理解を広げていきたいと考えています。

 

どの地域の学校で学んでいても、そのお子さんの苦しさが、読み書きの困難によるものだと誰かが気づいて、適切な支援が速やかに提供される社会を目指しています。

 

彼らの配慮事例がひとつの解決ストーリーがヒントになって、次の解決ストーリーを生む。その循環をつくっていくために、私たちの活動を応援してください。

 

 

***私たちも応援します***

皆様からいただきました応援メッセージは、新着情報で更新いたします!

写真をクリックして、是非ご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

***当事者の声も続々掲載予定です***

 

全国どこからでもアクセスできる、信頼性のあるストーリーバンクにしていくために、システム構築にはまとまった資金が必要です。読み書き困難があっても学べる社会をつくるために、社会を変える一翼を一緒に担っていただきたいのです。この事業にご賛同いただき、どうか支援をお願いいたします。


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