彼は見てゐた。晴れ上がつた空に眩しいほど葉末をきらめかせながら聳えてゐる樹を。その彼方の空にある白い雲を。梢に近い枝々では小鳥たちが安らかに飛びまはつてゐた。小鳥たちは喜々として歌つてゐた。(福永武彦「告別」)