クラウドファンディング終了報告
2023年7月30日から9月15日までに実施したクラウドファンディング「イヌワシの生息地が失われないように。ライブ配信で届けたい!」は、開始から3時間で第一目標の200万円に達し、最終的には第二目標の600万円を大きく上回り、538人の皆さまから、総額7,109,000円のご支援をいただきました。得られた資金は、ライブカメラの設置、巣の補修、雛ニーナの救護、普及啓発活動に使用させていただきました。本当にありがとうございました。
また、リターンの商品は2024年5月末までにお手元に届けられるよう準備中です。
伊吹山のイヌワシの子育てをライブカメラによって詳細に観察できたことから、ハンティングをするのに適した環境を創出するための森林整備など、早急な環境改善が必要であることがわかりました。残りの資金は、ニーナファミリーの生息環境改善のために使用する予定です。
また、今回のライブ配信について、日本鳥学会2023年度大会(金沢大学)、野生生物と社会」学会2023年度大会(筑波大学)、ならびに京都大学主催(環境省協力)の「イヌワシ保全に関する関係者意見交換会」において発表しました。学術的にも貴重な情報が得られており、引き続き解析を続けたいと考えています。
伊吹山のイヌワシ子育てライブ配信には、大きな二つの目的がありました。
目的1▶︎ イヌワシの生態や現状について多くの人に知ってもらいたい
ライブで観察することで、イヌワシの魅力と置かれた状況を身近なこととして受け止めてもらい、その大切さを実感してもらえたと思っています。
雛ニーナは、限界ギリギリの飢餓状態で親ワシが獲物を持ち帰るのを待ち続け、何度も訪れる危機を乗り切って力強く生きました。しかし親鳥は育雛を断念、ニーナは巣から落下したため、飼育下繁殖に資する目的で救護しましたが、命を繋ぎ止めることは叶いませんでした。野生で生きることの厳しさを教えられました。ニーナの成長を見守ったことにより、可愛い・可哀想という単純な発想から、豊かな自然環境を取り戻すことが急務と考える視聴者が増えました。伊吹山に登る、観察のため双眼鏡を買う、寄付をする、絵や小説を書くといった、保全のために行動する視聴者も現れました。一方、ニーナの救護については、「すべき」と「すべきでない」の両方の意見があり、今後の課題となりました。
目的2▶︎ 撮影マナーと伊吹山利用のルールが守られるように働きかけたい
営巣地では、今シーズンの抱卵・育雛期には接近するカメラマンがいませんでした。伊吹山ドライブウェイでは、自らの行動を改めて立入禁止区域での撮影をやめるカメラマンが現れました。ニーナの頑張りを視聴したことに加えて、視聴者間のチャットでの意見交換が少なからず影響したと考えています。
また、伊吹山ドライブウェイ(日本自動車株式会社)の協力を得て、伊吹山イヌワシ観察会を実施することができました。イヌワシの生態と保全、ならびに観察マナーについての学習を伴う観察会を実施することで、立入禁止区域で不適切な撮影をしているカメラマンの行動が少しでも改善されればと思います。
<費用の内訳>
総額 |
7,109,000 |
|
1 |
REDYFOR手数料 |
1,329,383 |
2 |
カメラ設置費用 |
3,058,308 |
3 |
巣補修費用 |
141,485 |
4 |
ニーナ救護(治療・検査) |
19,554 |
5 |
普及啓発活動費 |
407,224 |
6 |
未支出(生息環境改善に使用予定) |
2,153,046 |
いただいた支援により、これまでできなかった様々な取り組みを実現することができました。巣内のライブ配信に加えて、巣の外でのイヌワシの生活と動物達のライブ配信「野生のいぶき」、観察会の実施など、多くの方にイヌワシの生活や生息環境についてより深く知ってもらうことができました。現在イヌワシが生息している場所は、自然環境が最後に残された地域です。これまで38年間にわたって伊吹山のイヌワシの暮らしを見守ってきました。これからは、支援してくださる皆様と共に見守っていきたいと思います。引き続き、どうかよろしくお願いします。
2023年1月7日 須藤一成