ご報告
この度は、低ホスファターゼ症の歯科治療法開発への挑戦プロジェクト『低ホスファターゼ症の子どもたちへの先進的な歯科治療法の開発を』のためのクラウドファンディングにご支援を頂き、誠にありがとうございました。2020年1月20日から4月17日までの3か月間にて、443名の皆様により、当初目標額を大幅に上回る17,010,000円のご支援を頂きました。
【実施内容報告】
・細胞実験:低ホスファターゼ症の歯周細胞の樹立
低ホスファターゼ症のお子さんからご提供いただいた乳歯から歯周細胞を採取しています。実験開始当初は、なかなか歯から細胞を分離することができず、試行錯誤を繰り返しました。現在は、歯周ポケットの細菌を除去した上で、抜歯を行い、直ちに歯を特製の溶液に浸漬することによって、細胞を分離できる新規実験方法を確立しました。
現在、歯周細胞(歯限局型・周産期良性型・周産期重症型)のストックができました。また、比較対象として低ホスファターゼ症ではないお子さんからもたくさんの歯のご提供がありました。
・動物実験:低ホスファターゼ症のモデルマウス作製
低ホスファターゼ症の遺伝子解析でご高名な金沢大学附属病院 遺伝診療部の渡邉 淳先生に下記の3種類のモデルマウス作製のための遺伝子の配列を設計いただき、
・日本人に最も多い遺伝子変異を有する重症型モデルマウス
・日本人に2番目に多い遺伝子変異を有する軽症型モデルマウス
・歯にのみ症状が現れる遺伝子変異を有するモデルマウス
金沢大学学際科学実験センター 遺伝子改変動物分野の大黒多希子先生にゲノム編集を用いてモデルマウスの作製をして頂きました。
当初は、C57BL/6Jという黒いマウスでモデルマウスを作製しましたが、繁殖がうまくいかず、系統の維持が困難だったことから、ICRという白いマウスで作り直していただきました。
2021年12月2日に若い10匹のマウスが大阪大学大学院歯学研究科に到着しました。金沢大学を出発し、富山で1泊し、富山空港を飛び立ち、羽田空港を経由して、大阪空港に夕刻に到着し、翌日、大阪大学にやってきました。初めての長旅でしたが、とても元気な様子でした。
【収支報告】(2020年6月~2021年12月)
ご支援いただいた総額 17,010,000円
《用途》
・READYFOR手数料 2,806,650円
・マウス作製費用等 4,648,699円
・大阪大学の研究費管理経費(間接経費) 1,530,900円
合計 4,648,699円
残金8,022,827円は、2022年1月以降、当初予定の2026年3月までの研究活動に使用させていただきます。
【リターンの状況】
・研究報告書(ご支援者様全員)【送付済み】
・プロジェクトHPに支援者名掲載(ご希望の方のみ)【掲載済み】
・大阪大学歯学部附属病院広報誌「おおきに健康 歯とお口から」1号〜最新号までのセット【発送済み】
・ご芳名を顕彰プレートに記し、大阪大学会館に掲示【掲示済み】
大阪大学中之島センターは、2023年4月リニューアルオープン時に掲示予定。
【今後について】
・細胞実験
なかなか、細胞を採取するのに適した歯根が十分に残っている歯に遭遇することが少なく、解析を行うには、もう少し細胞の種類が必要です。引き続き、歯の細胞の分離を続け、ある程度の細胞が集まった時点で、病型ごとの細胞の性質や薬剤への反応を解析する計画です。
・動物実験
マウスは必要な交配を行いモデルマウスがヒトの病態を正確に再現できているかの確認を行います。その後、動物用のCT撮影、歯の抜けやすさを調べる試験などの顎骨と歯の分析を計画しています。
末筆ではございますが、今後とも本研究活動への応援・ご支援をお願い申し上げ、クラウドファンディングメンバー一同よりの御礼とさせて頂きます。
2021年12月
プロジェクトを代表して
大阪大学大学院歯学研究科顎顔面口腔矯正学教室
山城 隆
大阪大学大学院歯学研究科小児歯科学教室
仲野和彦