IVYウクライナ医療支援 最終報告
越境前にCIPで休息を取る避難者
IVYウクライナ医療支援を応援してくださった皆さまへ
昨年3月から6月まで実施された「ウクライナ緊急支援」には、254人もの方々から、2,231千円のご寄付をいただきました。あらためて御礼申し上げます。今回、現地の情勢の悪化により通信状況が安定せず、現地からの報告がなかなか届かなかったことから、皆さまへの最終のご報告が遅れてしまい誠に申し訳ございませんでした。
■ ウクライナの状況(国連人道問題調整事務所(OCHA)UKRAINE HUMANITARIAN RESPONSE Situation Report 2023/2/10)
ウクライナのロシアによる侵攻が始まったのは、2022年2月24日、それから1年以上過ぎましたが、現在も戦闘が止む状況にはなく、多くの人たちが未だに困難な避難生活を送っています。民間人の犠牲も大きく、2022年末時点で人権高等弁務官事務所(OHCHR)によって17,994人の犠牲者が確認され、そのうち429人が子どもでした。ロシア連邦の軍事支配下にある地域については状況が把握出来ておらず、実際の犠牲者はもっと多いと予測されています。
医療施設に対する攻撃も763件に上り、戦闘の激しい東部と南部の一部では、最大で50%の医療施設が機能しない状態となっており、加えて医療従事者の避難により、医療へのアクセスはさらに制限され、人々が医療を最も必要とするときに対応できない地域が発生しています。さらにエネルギー危機が追い打ちをかけ、ウクライナ全土の病院がサービスを縮小し、緊急のケースにのみ対応するという難しい選択を迫られました。
また、戦争は、特に子どもたちに多大な精神的外傷を与えています。WHOは、戦闘や敵対行為の恐怖にさらされた後、少なくとも960万人が精神的なケアが必要な状態にあると述べており、戦争トラウマの克服、社会的孤立、電気や暖房のない日常生活、移住に関連する課題など、戦争終結しても少なくとも5年間は精神衛生上の問題が残ると予想されます。
そんな中、IVYは、皆様からのご寄付とジャパンプラットフォーム(JPF)の資金を元に、ウクライナ国内では、提携団体と共に医療支援を中心に活動を行ってまいりました。
■ IVYの事業の内容と成果
皆さまのご支援のおかげで、下記の活動を通じてウクライナ国内の避難民・地域住民の心身の健康の改善に貢献することができました。
■ ウクライナ国内14病院(西部9病院、南部5病院)への医薬品・医療資機材の補給支援
避難民と地域住民の医療体制支援に取り組み、約18,600人の医療へのアクセスを改善することができました。
イバノフランコフスク・コシブ病院へ保育器の支援
<補給を行った医薬品・医療資機材> 医療資機材:27 資機材(12 病院) 医薬品:2病院
6 月:3 病院
1. リヴィウ救急病院: 超音波検査機
2. イバノフランコフスクの周産期病院:心電計 3. リヴィウ小児病院:医療用エアコンプレッサー
8 月:5 病院
1. オデッサレズニック病院:生化学分析装置
2. ドニプロ臨床病院:薬
3. ラヒブ地区病院:7 アイテム
4. トランスカルパティア地域ノバク病院:眼圧計と眼科テーブル 5. オデッサ大学病院:マットレス付きの子供用機能ベッド 6 台
9 月:3 病院
1.ザカルパッチャ地域小児病院ムカチェヴォ:未熟児部門のための生化学分析装置 2.コシブ地区病院:乳児保育器
3.カルーシュ中央地区病院:薬
10 月:3 病院
1.ドニプロペトロウシクの地域家族健康医療センター:内視鏡洗浄消毒器 2.ザカルパッチャ地域小児病院ムカチェヴォ:コブレーションシステム 3.ラヒブ地区 病院:バーティカルライザー
11 月:2 病院
1.リヴィウ聖路加病院:外科用ランプ
2.クルィヴィーイリーフ病院 No.3:膀胱鏡
2023 年 2 月:1 病院
1.イバノフランコフスクの周産期病院: 幼児用人工呼吸器
■ Crisis Intervention Point (CIP)における支援
スロバキア国境沿いに設置されたCIP
ザカルパッチャ州Malyi Bereznyスロバキア国境のウクライナ側においてCrisis Intervention Point(CIP)を設置し、出入国手続きの順番を待つ避難民8,156人へ、休憩所・食糧・NFIの支援、そしてスロバキア入国後に必要となる難民支援制度情報を提供いたしました。そして、それら避難民はストレスを抱えておりましたので、CIPで心理療法士によるPsychological First Aid(PFA:心理的応急処置)も提供し、ストレスの軽減に貢献しました。
■ ウクライナ西部避難民の精神保健・心理社会的支援
2022年5月頃から越境者が減り、一方でウクライナ西部避難民の心のケアのニーズギャップが深刻化した為、2022年5月末でCIP活動は終了し、ウクライナ西部避難民の精神保健・心理社会的支援(Mental Health and Psychosocial Support: MHPSS)を開始しました。その結果、西部のザカルパッチャ州およびリヴィウ州の避難民867人がMHPSSを受けることができました。
西部のIDP居住区における子どもたちへのアートセラピーの様子
■ 受益者の方たちから・・・
CIPを利用した女性から
日本の皆さんからのご支援に本当に感謝しております。CIPに来る前は不安が多かったのですが、CIPで暖かいお茶をいただき、少し休むことができて、気持ちが楽になりました。
病院の医師から
・超音波機器がないため、他の病院の専門医に患者さんの症状を照会するなど、治療に時間がかかっていたことがありましたが、今回の支援のおかげで必要な検査がすぐにできるようになり、本当に助かりました。
・医療用エアコンプレッサーは、自力での呼吸が困難な患者さんに、清浄な空気を供給するために使用されます。そのほか、血液分析、マンモグラフィー、レントゲン撮影、酸素発生などを行う機器の動力源として使用しますので、この機器を支援いただいたことで、多くの患者さんの命を救うことが出来ます。心からご支援に感謝しています。
・電子胎児モニターによって、胎児の心拍数を記録し、胎児の状態をモニタリングできるので、胎児に害が及ぶ前に医療的な介入ができるようになりました。今、ウクライナでは出産する女性の数がとても多く、電子胎児モニターを利用できることで、安全な出産につなげることができ、とてもありがたく思っています。
心理療法士から
・ア―ト・セラピーを受けた子どもたちの変化が、良くわかりました。最初は、参加者は暗い色(黒、グレー)や攻撃的な色(赤)を使って絵を描いていましたし、とても小さい絵を描いていました。しかし、何度かアートセラピーセッションに参加するうちに、参加者は明るい色を選び、虹や晴れた空、ウクライナの国旗を書くなど、前向きな絵を描くようになりました。
・PSS支援に参加した子どもが、よく眠れるようになり、落ち着いたといった声が保護者からありました。子供がドアを叩いても怖がらなくなりましたという声も・・・。(以前は、大きな音に怖い思い出が残っていましたが、もう大丈夫になったとのことです。)
・戦争が始まって、知的障害を持つ男の子の気持ちが落ち着かなくなりました。でも家族療法を受けてから、少年は穏やかになり、治療によって子どもの状況が改善できることを、ご両親は理解してくださいました。その後、この少年は自転車の乗り方を習い、自転車で走り回ることができるようにまでなりました。
■ 皆さまからご支援頂いた資金は、下記のように使用させて頂きました。
最後に・・・
READYFORのご寄付をもとに、27,623人の方々の救命等に貢献することができました。そしてさらに、皆さまのご支援による活動がきっかけとなり、丁寧に調査する機会を得て、その結果現在も支援を継続することが出来ています。
皆さまのご支援に心から感謝申し上げますとともに、今後も、ウクライナの人々、IVYの支援活動に、お心をお寄せいただきますようお願い申し上げます。
追記:最新のウクライナ支援の状況につきましては、IVYのHPやFacebookからご覧いただけます。