ご報告:クラウドファンディング終了から間もなく1年を迎えます
クラウドファンディング
『発達障がいの子どもたちに、コロナ禍のサポートと未来に繋がる研究を』
大阪大学子どものこころの分子統御機構研究センター長 谷池雅子
を応援していただいた皆さまへ
「コロナ禍での発達障がい児や家族のストレスを少しでも軽減したい!」そんなスタッフの想いから、コロナ禍や災害といった非日常の中で役立つ発達障がいの子どもと親のためのサポートブックを作成してお手元に届けること、発達障がいや神経難病の原因解明や治療法に繋がるデータシステムを作ることを目指して、昨年の8月から10月20日まで行った私たちのクラウドファンディングが終了してから、間もなく1年となります。おかげさまで、目標金額を大きく上回るご支援をいただき、プロジェクトを遂行することができました。皆さまの温かいご支援に改めて厚く御礼申し上げます。ありがとうございました!
皆さまからのご支援により、発達が気になる子どものためのサポートブック「こころとからだ げんきのヒント」、養育者向けサポートブック「発達の気になる子どものこころとからだのまもり方」を作成し、医療機関や学校、支援機関等で無料で配布して、子どもたちやご家族のお手元に届けることができました。
サポートブックはこれまでに、子ども用、養育者用それぞれ2000部を配布しました。その中で、「市内の全小中学校に配りたいので、送って欲しい」「児童発達支援センターでの養育者支援として、家族ワークを行う資料として活用したい」「支援団体のイベントで配布したい」など、のご要望もお寄せいただき、私たちが予想していなかった形でもご活用いただきました。
もう一つのプロジェクトの目的である、発達障がいや神経難病の原因解明や治療法に繋がるデータシステムを構築についても、いただいたご支援を活用して進めてきております。まず、神経組織を観察し記録として残していくための顕微鏡を購入させていただきました。これにより、病気の病態や原因を明らかにするための質の高い神経病理データを蓄積していくことが可能になりました。
また、発達障がいに関するデータベース構築プロジェクトにおいては、画像データを共有して保存するためのメモリ増設を行い、画像共有システムの構築を行っております。
皆様からお寄せいただいた総額 11,083,000円の寄付は、管理費当経費(5%)554,150円、CF手数料(16.5%)1,828,695円の必要経費、サポートブック作成費に1,166,000円、返礼品作成費に70,000円、ブレインバンク備品費に2,805,000円、送料等に99,831円を使用させていただきました。また、データベースのシステム作成に今年度中に 4,500,000円を使用させていただきます。
また、リターンのうち、スタッフによる出前講演が、新型コロナ感染症流行遷延のためまだ一部実現できておりませんが、該当される支援者の方には近日中に連絡をさせていただく予定にしております。直接お会いして、お礼を申し上げる機会とさせていただければと考えております。大変遅くなってしまい誠に申し訳ございません。
これから、そして未来へ
新型コロナウイルス感染症の流行は、いくつもの大きな波を越えてなお終息にはいたらず、世界的にこのウイルスとうまく付き合っていく方法を考えていく、withコロナの時代に入ってきています。新型コロナウイルス感染症のまん延が長期化することにより、発達に凸凹のある子どもたちにとっても、感染症対策をしながら過ごす日々が、もはや非日常ではなく、日常となっています。
しかしながら、「いつもと違う」ことが苦手な子どもたちが、穏やかに過ごせるようになったかというと、決してそうではありません。例えば、感覚が過敏でマスクの装着が難しい子どもたちの中には、マスクを着けられないために教室に入ることが出来ないお子さんがいらっしゃいます。また、withコロナ時代に必要とされる感染症対策が困難で、お友だちと過ごすことが難しくなってしまったお子さんもいらっしゃいます。私たちの研究でも、ソーシャル・ディスタンスの維持が困難であることが、発達障がいのお子さんでコロナ禍前に比べて友達関係が悪化した場合の要因の一つであることが分かっています(Yamamoto et al., Child and Adolescent Psychiatry and Mental Health, 2022)。
私たちの作成したサポートブックは、いまのwithコロナの状況においても活用できる情報を満載しています。皆さまの子どもたちとご家族に、日々の過ごし方のコツをお伝えできるものです。これからも皆さまのご支援で作成したサポートブックが、子どもたちとご家族の支えとして活用していただけることを願っています。
また、皆様のご支援のおかげで大きく前進した「発達障がいと神経難病の原因解明と治療につながるバイオリソース・データベース構築」についても、道はまだ半ばではありますが、広く日本中の研究者が活用できるものとなるよう、整備を続けて参ります。
私たちが今後取り組んでいきたいテーマとして、発達の凸凹を抱える子どもたちと家族の支援における、「地域と大学の連携」の在り方があります。自治体等と連携して、地域での問題・課題を共有し、その問題の原因や解決方略、対応法などを科学的に検証し、成果を地域で活かすという循環システムを構築していきたいと考えています。来る10月30日(日)には、市民公開シンポジウム『地域に根差した発達支援を目指して ~地域と大学との連携を考える~』を開催します。もしご興味がありましたら、後日のweb視聴もありますので、ご参加のお申込みをお願いいたします。
これからも、プロジェクトの発展や私たちの活動・研究について、報告・発信させていただきたいと思います。引き続きの応援を何卒よろしくお願い申し上げます。
最後に、ご支援いただいた皆さまのご健康とご多幸をスタッフ一同、こころよりお祈りしております。
クラウドファンディング
『発達障がいの子どもたちに、コロナ禍のサポートと未来に繋がる研究を』
事務局担当 橘 雅弥