重要文化財日下部民藝館・吉島家住宅|運営費にご支援を終了報告
重要文化財 日下部民藝館/吉島家住宅 歴史を護り繋ぐ運営費にご支援を
活動終了報告
【はじめに】
新しき年を迎え、皆様ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
昨年、2月22日から4月23日、日下部民藝館/吉島家住宅両家で行わせていただきました、コロナ禍での文化財公開、活用の継続に対するご支援をお願いさせていただきましたクラウドファンディング。12月31日を持ちまして、プロジェクトの期間終了となりましたので、ここに活動のご報告をさせていただきます。
まずは、改めまして、私どものクラウドファンディングにご寄付いただきました皆様に心より御礼申し上げます。
一昨年の1月から世界中で流行、蔓延しております、新型コロナウィルスは昨年もその力を衰えさせることなく現在も自由な生活には戻っていない状況です。そのような中でも今日までなんとか公開、活用を継続し、次のヴィジョンを描くことができますのも一重に皆様からのご寄付と励ましのお言葉があってこそでした。多くのご支援を受け、改めて、両文化財を護ってゆくことへの責任とやりがいを深く感じる日々でございます。
【4月23日から12月31日までの両文化財の活動報告】
日下部民藝館
日下部民藝館ではクラウドファンディング募集期間中も新型コロナウィルスの感染拡大の情勢を見ながら開館を続けさせていただきましたが、岐阜県が蔓延防止措置、及び緊急事態宣言を発令していた6/1から6/20、及び8/26から9/30の期間は週末のみの開館に切り替えるなどの対応をさせていただいたことをご了承いただきたく存じます。
しかしながら、8月26日から、オンライン会議システムzoomを使った、日下部民藝館オンラインバーチャルガイドツアーを日本語、英語二か国語での開催を開始し、来館がかなわない状況でも日下部民藝館に興味のある方々と繋がり、日下部民藝館のことを知っていただく機会を設けさせていただいております。(現在も開催中)、また、ご来館いただいたお客様により丁寧な文化財や日下部家の歴史や高山の文化、民藝のことなどの解説をご提供できるように、オンライン(スマートフォン)を利用したオーディオガイドを作成いたしました。これによって、日下部民藝館の見学をより充実したものとしてご提供できればと思います
また、本年は日下部民藝館、吉島家住宅共に重要文化財指定、また一般公開55年の節目の年でした。本来でしたら記念の企画をさせていただくべきところでしたが、それらは全て中止とさせていただきました。けれどもなんとか日程を延期して行うことができないかと検討して、来春開催予定(コロナ禍の状況により時期は変更するかもしれません)で特別企画展「落合陽一 メディアと民藝―ポストコロナで見えた結節点―」を企画し、そのキックオフイベントとして、12月12日に「落合陽一ワークショップ&トーク」を来場参加とオンライン配信参加によって開催いたしました。感染防止対策として、来場人数を制限しての開催でしたが、一堂に会して集まり場を共にして繋がることがとても大切であることを実感いたしました。
新しい取り組み以外にも、日下部家の歴史を紐解き、高山の商家の営みを知る上での重要な事業である「古文書研究会」も今年3年目の取り組みを継続させていただくことができました。
1879年に建築された日下部家住宅は2029年に築150年になります。建物の状態などを認識して、今後の将来に向けて日下部家住宅をいかに保存活用していくかを検討する節目が近づいています。その指針となる「日下部家住宅保存活用計画」の作成も高山市文化財課、文化庁のご指導を受けて昨年1年をかけて作成にあたりました。本年完成しこれを元に向こう10年間の日下部家住宅の活動指針が示されることになります。
このような数々の取り組みができましたのも、クラウドファンディングを通した皆様のご支援のおかげと心より感謝申し上げます。
吉島家住宅
吉島家住宅は2020年の岐阜県の緊急事態宣言発令時以来休業を余儀なくされておりましたが、クラウドファンディングが成立したことを受けて、再開館の準備に入っておりましたところ、再び5/9から岐阜県が蔓延防止等重点措置区域に指定され、開館がペンディングになりました。これは、当主である吉島忠男が高齢かつ持病を持っておりますことから、開館し、外部からの訪問者と接触することにより感染のリスクが懸念されることから、吉島忠男がワクチン接種を終えて開館するという判断によるものでした。
岐阜県の今年2回目の緊急事態宣言が10月1日に解除され、吉島家住宅も金曜日から日曜日の週末に開館することになりました。
吉島家住宅は、「文化財の保存」に重きを置き運営をしております、飛騨高山の名建築を建築当時の姿で伝え、またそれをどのようにして次世代に伝えていくかということに取り組んでおります。吉島忠男が知りうる「日本の民家」についての知識(歴史や技術)、経験(住み手としての経験)を文章と実践との両面で記録して残していきたいと考えています。その一環として本年は11月に「吉島家住宅、天窓張り替えワークショップ」を行いました。
その様子をYouTubeで公開しておりますので是非ご覧ください。
吉島家では、今後建具、屋根(雨漏り)の修理など保存修繕に際して、その様子を記録して残してまいります。皆様のご支援により一層、維持管理に日々努力しております。
ただ新型コロナウイルスの影響が収まらず
修繕等進めるのに企画準備が難しく、
より良く残していくためにも時間が必要です。
2021年中に出来なかったことは今後も続けていきます。
(新年早々水道管破裂し、修繕から今年も始まりました。)
吉島家住宅は吉島忠男による修繕、管理等、図面、記録に
残す作業にも取り組んでおります。
吉島家住宅の空間から感動していただけることが
何よりも嬉しく
今後共保存維持への努力を通してよろしくお願い致します。
2021年事業報告
吉島家住宅セミナー1/天窓修理見学会 /11月6日
「残そうと思わなければ残らない」
吹き抜けの採光計画について
1. 日本の民家に於ける天窓の特殊性
2. 上下移動/大型障子窓の仕組み
3. 外部の引き上げ雨戸
4. 取りはずし可能の枠
5. 青海波の紋様/蠟描法
6. これらの修理の実践見学
南北の方向に走る二つの大梁が、大黒柱で接合される。
南側に位置する大梁に、東西に十字に交叉するもう一つの通し牛(梁)は、東側(左方)を元口にして、壁面に鬢止めとなる。
北側にある通し牛(梁)よりスマートな断面を見せ、根曲りが直線的である。
大屋根の落ち棟を利用して設けられた上方の天窓は、上げ下げの出来る
縦繁障子で、煙出しを兼ねている。1間×1間が2対、障子の外側は暴風雨に備えて和蠟を溶かして青海波の文様を描き防水用とする。こんな大がかりな天窓は、高山の町屋では極めて珍しい。
【収支報告】
クラウドファンディングご寄付総額 10,237,000円
Readyfor手数料 1,914,319円
クラウドファンディング返礼品等経費 707,080円
差し引き. 7,615,601円
吉島家 3,807,800円
日下部家 3,807,801円それぞれ運営費に使わせていただきました。
内訳
日下部民藝館
運営費 7,918,143円
クラウドファンディングご寄付 3,807,801円
入館料、国等からの助成金 3,582,570円
収入合計 7,390,371円
収支 🔺527,772円
吉島家住宅
運営費 6,737,179円
クラウドファンディングご寄付 3,807,800円
入館料、国等からの助成金 2,896,670円
収入合計 6,704,470円
収支 🔺32,709円
両文化財ともに大変厳しい運営状況が続きますが皆様のご支援のおかげでこの期間運営を継続させていただけました。
【今後の活動】
現在、コロナウィルスはオミクロンの感染流行など、まだまだ収束の予想がつきません。相変わらず地方の観光や文化や芸術を主とした人々や施設の活動はとても厳しく、不安定な状況のままです。けれど流行初期からは随分と変化してきたように思います。ウィルスに対する知識や情報の蓄積やワクチンの接種、治療薬etcといったコロナに関する直接的なことももちろんですが、何かクリエイティブな発想や行動や心の変化によって、ただ恐れるばかりではなく、何ができるか、多くの人々がそれぞれに考え取り組んでいるように思います。
日下部民藝館と吉島家住宅も知恵を出し合い、両者一対で飛騨高山の建築文化の豊かさを護り、伝えていくために共に繋がりながら、それぞれ活動してまいります。
日下部民藝館は、本年、自主企画である落合陽一展をはじめとするイベントや日々の文化財公開を通して、多様な人々に日下部民藝館を訪れていただきたいと思います。吉島家住宅は「民家の保存継承」を主に「吉島家住宅アーカイブ化事業」に取り組みます。また、周辺の施設も活用して日下部民藝館、吉島家住宅を核とした地域の文化クラスターを形成したいと思います。
飛騨の名建築の歴史を繋ぎ、文化を発信する場所として精一杯運営してまいります。
これからも引き続き、当サイトの新着情報で両家の活動をご報告させていただきますので、皆様には何卒ご指導、ご鞭撻賜りますようよろしくお願い申し上げます。
【両文化財の活動動画】
本年の両文化財の活動の様子を動画でご覧ください
https://youtu.be/sDRlsBnvkpk (吉島家住宅天窓セミナー)
https://youtu.be/7Mq9ybLf60Q (日下部民藝館 落合陽一ワークショップ&トーク)