一般公開なくして大原美術館ではない プロジェクト終了の御礼
【2021年12月31日。本日も、多くのお客様をお迎えすることができました。】
それは、本日も無事開館できたということでもあります。
COVID-19感染拡大をうけ、長期臨時開館、そして感染防止を最優先しての入館時間や人数を制限しての開館によって、当館は、収入面での大きな痛手を負いました。
そうした中で2021年10月26日(月)から開始したクラウドファンディングでは、1700名を超す皆様から、12月25日(金)の募集終了時で23,480,000円のご支援を賜ることができました。
その金額は、当館の開館維持に大きく役立ちましたが、それ以上に、ほんとうにたくさんのみなさまかからお寄せいただきました励ましのメッセージは、全てのスタッフに、何とか大原美術館の運営を維持しようという強い希望を与えてくださいました。
ほんとうに、皆様ありがとうございました。
【重ねて。ほんとうにありがとうございました!】
クラウドファンディングを開始して、最初の1週間ほどは、毎朝、インターネットの画面を見ては、寄付された金額に驚きと喜びを感じていたスタッフ達も、次第に、たくさんの温かい励ましのメッセージを通じて、こんなにも多くの方が大原美術館を大事に想ってくださっているという事に、心動かされるようになりました。
いわば、このクラウドファンディングによって、普段は気づきづらい、遠方にいらっしゃったり、日ごろは匿名の個人として支えてくださったりしている方々との、「つながり」や「関係性」が可視化されたわけです。
今回のプロジェクトには様々な展開や後日談があるのですが、ひとつだけご紹介させてください。
私たちの美術館は、近在にある倉敷東小学校、倉敷西小学校の2校と、休館日に全校児童が来館し、教員のみなさまが美術館で授業を行うという「学校まるごと美術館」事業を長年実施しています。
この小学校で、ある一人の児童が、クラウドファンディング終了後に、その出来事を知り、そこから仲間に声をかけ、寄付募集のチラシを作って、募金を始めてくれました。その輪は、全校に広がり、そして各家庭へと広がっていったそうです。
そして、昨年の「学校まるごと美術館」での来館時に、その寄付金を贈呈してくださいました。教員の方々も、コロナ禍で学年を超えた交流ができず残念に思っていたところ、奇しくも、「生徒が自発的に動いて、全校に支援の輪が広がった」と喜んでくださいました。
クラウドファンディングは、多くの面識のない方々や、遠くに暮らす方々とのつながりを確認するだけではなく、こうやって身近なところで新しい関係を生みだしたことに、私たちも、大きな喜びを得ました。
まだまだ当館の経済的な苦境に変わりはありませんが。ただ、こんな時だからこそ、こうした人のつながりは大切な財産と受け止め直し、その財産を次なるステップへとつなげてゆきたいと頑張り続けたいと思います。
【この1年間の大原美術館】
2020年は、大原美術館にとって開館90周年の記念すべき年でした。そのために、大型の特別展やシンポジウムなど様々な事業を準備していましたが、そのほぼ全てを中止・延期せざるを得ませんでした。そうした大量集客につながる事業の先送りは、本2021年、そして来る2022年前半まで継続することも決定しております。
さらに、今回のクラウドファンディングを実施する大きな要因ともなった2020年の春から夏にかけての136日にわたる長期臨時休館に引き続き、本2021年の5月~6月にかけての28日間、岡山県域への緊急事態宣言発出に伴い、やむなく再びの臨時休館を行いました。
これは、当館が広域からの集客をなしてしまう施設であることから、岡山県や倉敷市など関係各方面との協議のうえに、踏み切ったことですので、ぜひご理解を賜りたいと願っております。
また入館者数制限をかけることによって、年間2万人ほどを引き受けていた学生団体の受け入れにも大きな制限をかけざるを得ませんでした。特に、倉敷市内の小学生や、年間のべ3,000人を超す未就学児童の受け入れは、極めて難しい状況となりました。
しかしながら、そうした状況下でも、月曜日の休館日などに、市内小学校や未就学児童の受け入れ、年間で1,000名を超える子どもたちを受け入れることができました。
また10月には、新児島館(仮称)を暫定ながら開館することとなりました。
これは、すでにCOVID-19感染拡大前に、躯体工事の手配を済ませていたために、財政難ゆえの着工中止をすると、施工業者をはじめ、さまざまな方々に多大なご負担を回してしまうこと、この建設資金については、通常の運営経費とは別途に使途目的を限定した資金を蓄えていたこともあっての判断です。なにより100年愛されてきた優れた建築を、一日でも早くまた倉敷の優れた地域資源として、皆様に提供したいという強い思いもあってのことです。
もっとも、当初予定していた姿には遠く及ばず、まずは躯体のみの工事にとどめ、そして暫定的な公開とならざるを得ませんでした。
そうした状況下ながら、2010年に秋の有隣荘特別公開をお願いし、また2013年の特別企画展OHARA CONTEMPRARYに、《サン・チャイルド》を特別出品してくださったヤノベケンジさんが、特別な協力をしてくださり、《サン・シスター(リバース)》という、素晴らしい作品を展示してくださいました。この作品について、ヤノベさんは次のようなコメントを寄せてくださっています。
《サン・シスター》は、《サン・チャイルド》の姉のような存在として、東日本大震災による被害や苦難の日々を乗り越えることを願い、希望ある未来の姿として、2014年に制作しました。
《サン・シスター》は、座りながら目を閉じて深く瞑想し、立ち上がりながら手を広げて目を開く動作を繰り返し、再生の夢と希望の訪れを象徴的に表しています。
今回、大原美術館のご依頼を受け、100年近くの長い時の中で人々に愛されてきた銀行建築を、完成途上の段階ながら新たな美術館施設として再公開するにあたり、「転生」と「再生」をテーマにしました。建物の「転生」と、コロナ禍において大打撃を受けている、倉敷や大原美術館の「再生」を願い、何度でも蘇る火の鳥・不死鳥をモチーフに、《サン・シスター(リバース)》として装いを新たにすることにしました。
開館からまだ3ケ月しか経っていませんが、いまや新児島館(仮称)、そして《サン・シスター(リバース)》は、倉敷美観地区の新たな名所として、数多くの人々が訪れ、大原美術館のみならず、倉敷の町の賑わい創出に大きな存在となっています。
【お約束のとおり、ご支援賜りましたお金を使わせていただきました】
多くのクラウドファンディングでは、新たに何かを成したい、新たに何かを作り上げたいという目的のために、ご支援をお願いいたしますが、私どもは、当初にお願いしたとおり、皆様からご支援いただきました資金を、本2021年の開館継続のために使用させていただきました。
通常、年間30万人の方にご入館いただき、その入館料収入で、運営資金3億円弱の約8割を賄っている当館ですが、昨年度は約7万人、本年も4月から12月までで、やはり約7万人に入館者数は留まっております。
しかし、そのお客様をお迎えするためにも、照明や空調などの光熱費、パートタイム出勤も含めて職員80名の人件費は必要となります。
皆様からのご支援を、こうした通常の運営経費にあてさせていただけたことは、まさに大原美術館開館継続に大きな力となりました。スタッフ一同心より感謝申し上げます。
【リターンの発送状況】
2021年1月に当館へご支援を賜りました資金の振り込み直後より、皆様へと領収書と返礼のお便りをさしあげております。
不着等の確認、照合につきましては、改めてのご連絡を頂戴できればありがたいのですが、なにぶんにも1700名を超える皆様よりご支援を賜っておりますゆえ、ご返信が遅くなりますこと、お許しください。
【今後について】
通常開館の維持を第一の目標に、そして「新児島館(仮称)」のグランドオープンをなによりの目標としております。
この通常開館の維持につきましては、後援会法人会員組織を改めオフィシャルパートナー制度を導入したことから、地元をはじめ、たくさんの企業、法人からのご支援を賜り、当面の見通しを立てることができました。
https://www.ohara.or.jp/official/
またそれに連動するように、後援会個人会員向けの活動も再開しております。
https://www.ohara.or.jp/supporters/
しかしながら、さらに多くの経費が必要となる、「新児島館(仮称)」グランドオープンに関しては、まだまだ着工の見通しは立っておりません。
また着工の折には、クラウドファンディングでの支援を賜ることも検討しておりますので、その際には、重ねてのご支援をお願いいたします。