2022-2023 年度 活動報告書-タイ支援活動
2022-2023 年度 活動報告書-タイ支援活動
中央大学ローターアクトクラブ国際奉仕委員会
目次
はじめに
I 概要・活動目的 II 活動内容
A. 資金調達クラウドファンディング
B. 支援活動
1. 支援金内訳
2. 渡航先での活動内容
III 今後の活動 IV おわりに
はじめに
私たち中央大学ローターアクトクラブは幅広い分野の奉仕活動を通し、社会に存在するあらゆる問題の解決を目指しております。
国際奉仕委員会は 2020 年度より タイの子供達に支援活動を行ってまいりました。今年で4度目となるこの奉仕活動ですが、新型コロナウイルス感染症の規制緩和に際して初めて現地に赴き支援活動を行うことができました。
この活動を完遂することができたのは、本報告書をご覧になっている皆様のおかげです。
心から感謝申し上げます。
数えられないほどの方々の応援と支え、またメンバー同士の助けあいがあったからこそ
私たちはかけがえのない経験を得ることができました。
本報告書には、この支援を行うための準備内容や現地での活動の様子、そしてタイの子供達の日常を掲載しております。私たちの一年間の集大成をご覧いただければ幸いです。
国際奉仕副委員代表
梯亜紗美 大平萌々葉
I 概要・活動目的
中央大学ローターアクトクラブ国際奉仕委員会による、2019 年に始まったタイへの支援活動は、今年で 4 年目を迎える。もっとも、一昨年、昨年 は新型コロナウイルス感染症流行により渡航はついぞ叶わなかった。そのため、今年度のプロジェクトに対するメンバーの意欲は、相当に高まっていたのである。
このプロジェクトを始めたきっかけは、タイの子供達の抱える「教育格 差」を改善するためである。この教育格差の原因は主に、「所得格差」と 「地域格差」であり、北部チェンライには、片道 9 時間以上かけて通学せざる負えない農村部の子供達が大勢いる。そのため、学校の近くに寮が存 在するのだが、寮の設備や教育機材は、貧困世帯の多い農村部には十分な経費がなく、老朽化や資材の不足が進んでいる。我々は、教育の機会を奪われている現地の子供たちを助けたいと思い、継続的な支援を行うことを決意した。
これまでの支援内容は、主に 2020 年度はバンパトゥーン学校に、2021年度はサンクラブリー学校に寮の環境整備支援、また現地の子供たちとの国際交流である。これらの活動を受け、今年度は環境整備についで生徒の自立を目指し、バンパトゥーン小学校への教育支援を決定した。またタイ農村部チェンライにあるドゥイウェンパ学校に対して寮の改築をする決断に至った。 この学校には男子寮、女子寮合わせて 3 つの寮があり、そこには家から学校まで片道 20 キロから 80 キロほど離れている生徒が生活している。女子寮の寮改築はすでに他団体によって行われていたため、今回我々は男子寮の改築を行った。
本支援プロジェクトは主に、支援内容の充実、資金調達とその運用、及び渡航支援(3 月 13 日から 16 日までの 4 日間)を主軸に、一年を通して遂行 されたものである。支援内容は、バンパトゥーン学校に対する教育支援としてのパソコン寄贈と、ドゥイウェンパ学校の男子寮改築・食事提供から成り、 これらの他に、渡航メンバー8名が、現地の生徒の家々へ赴いての物資の寄贈や子供たちとの国際交流をしている。
なお、当活動は、上述した iCare Thailand Foundation との共同活動である。また、調達資金は、READYFOR におけるクラ ウドファンディングで支援していただいた皆様、並びに東京中央 RC,東京中 央新 RC の皆様からの支援金による。
↑子供達の通学路
II 活動内容
A. 資金調達 クラウドファンディング
11月21日から12月23日にかけて、READYFORサイトを利用し、クラウ ドファンディングを実施した。
開始当初から中期は、支援額に伸び悩んでいたということが確認で き(図1)、メンバー全員が行方を案ずるところであった。しかし、 最後の一週間に支援者数は大きな上昇を見せ、ついに、目標金額であ る750,000円を達成した。最終的な支援金額は、801,000円である。 (表1)
他方、クラウドファンディング開始以降は先述したチラシの配布以 外に、インスタグラムを利用した、1日1回という積極的な宣伝活動 を並行して行った。加えて、READYFOR公式サイトに毎日、アピール記 事を作成し投稿した。
(図1)
(表1)
目標金額 |
750,000円 |
達成金額 |
801,000円 |
支援者数、支援人数、及びリターン内容は、以下の通りである。
支援金額 |
支援人数 |
リターン内容 |
1,000円 |
8人 |
サンクスメール(活動報告書付き) |
3,000円 |
8人 |
サンクスメール(活動報告書付き) |
5,000円 |
2人 |
・サンクスメール(活動報告書付き) ・子供たちの手書きによる宛名+一言メッセージ付きの笑顔が詰まった写真1枚(紙媒体) |
5,000円 |
11人 |
サンクスメール(活動報告書付き) |
10,000円 |
9人 |
・サンクスメール(活動報告書付き) ・子供たちの手書きによる宛名+一言メッセージ付きの笑顔が詰まった写真3枚(紙媒体) |
10,000円 |
22人 |
サンクスメール(活動報告書付き) |
50,000円 |
2人 |
・サンクスメール(活動報告書付き) ・子供たちの手書きによる宛名+一言メッセージ付きの笑顔が詰まった写真3枚(紙媒体) ・数量限定の子供たちによる伝統的なハンドメイド作品 (タイの伝統として、子供たちが学校卒業時に親やお世話になった方へポーチや手提げかばんなどを送る風習があります!) |
50,000円 |
1人 |
・サンクスメール(活動報告書付き) ・子供たちの手書きによる宛名+一言メッセージ付きの笑顔が詰まった写真3枚(紙媒体) ・数量限定の子供たちによる伝統的なハンドメイド作品 (タイの伝統として、子供たちが学校卒業時に親やお世話になった方へポーチや手提げかばんなどを送る風習があります!) |
70,000円 |
3人 |
・サンクスメール(活動報告書付き) |
B. 支援活動
今回は2つの支援活動を行った。1つは、クラウド ファンディングによって集めた支援金からの様々な物品の寄贈であ る。もう1つは、支援金から支出した道具を利用した、ドゥイウェンパ 学校の男子寮改築、具体的にはベッド、寮の外壁・内壁のペンキ塗り である。そして、折り紙やダンスを通じた子供たちとの交流である。
1. 支出金内訳
*バンパトゥーン小学校へのパソコン等の寄贈費用は、2022年度ロータリー財団の地区補助金を利用している。
ドゥイウェンパ学校支援の支出金は以下の通りである。
項目 |
金額 |
寮改築のためのほうき・ラグ |
415バーツ(約1600円) |
寮改築のためのモップ・ |
400バーツ(約1550円) |
ペンキ塗り用品(ペンキ・ブラシ) |
18,656,77バーツ(約72000円) |
ペンキ塗りのテープ |
229バーツ(約900円) |
個人ロッカー |
114,150バーツ(約440,000円) |
ベッドマットレス |
26,250バーツ(約100,000円) |
寝具用品 |
2,850バーツ (約11,000円) |
枕 |
1,800バーツ(約7000円) |
3月16日のスペシャルランチ |
12,000バーツ(約46,000円) |
子供たちへのお菓子 |
1142バーツ (約5000円) |
学校間の移動車(ホームヴィジティング) |
5,600バーツ (約22,000円) |
学校滞在費 |
14,340バーツ(約50,000円) |
ガソリン代 (3日間) |
3,578バーツ (約14,000円) |
|
200,268.77バーツ (約78万円) |
※換金手数料は差し引いている。
(ほうき・ラグ等) (モップ)
(ペンキ塗り用品〈ペンキ・ブラシ〉)
(ペンキ塗りのテープ) (学校滞在費)
(学校間の移動車) (ベッドマットレス・寝具用品・枕)
(お菓子代) (スペシャルランチ)
2. 渡航先での活動内容
今回の支援対象である2校(バンパトゥーン小学校・ドゥイウェンパ学校) における、実際の活動内容を時系列に沿って示す。
3月13日 ボランティア活動初日は、バンパトゥーン学校へ赴き、児童たちへ昼食
を配膳するところから始まった。
彼らの内、家から学校までの距離が離れている者(片道8キロ以上の子の 希望者が対象だが、中には約80km離れている者もいる)は、2年前に建設さ れた寮に住んでいる。その寮を実際に見学すると、当時寄贈した2段ベッド が今でも使用されていることを確認できた。もっとも寮の裏口は崖に面し ており通行には危険な状況であった上、屋根には穴が空いておりカビの臭 いが充満し、必ずしも良い環境であるとは言えなかった。また彼らは頻繁 に親に会うことはできないという。
次にメンバー8人は簡単なゲームを用意して子供たちとの交流をはじめた。ボール投げや輪投げなど簡単な道具を使ったゲームだったが、教室中 が彼らの笑顔に溢れた時間であった。さらにメンバーがステージ上でダン スの手本を見せると、皆楽しそうに踊りはじめた。その後、日本文化として折り紙を紹介した。実際に教わりながら折る子供たちの眼は、真剣そのものであった。
最後に、パソコンとその周辺機材を学校へ寄贈し、予めインストールし ていたアプリ・ソフトの使い方を説明した。 ペンタブを用いたペイント・ ソフトやキーボードで音を鳴らせるピアノアプリなどを紹介し、教員の方に実際に使用していただいた。今後、教員の方から子供達に使用方法を指導していただく予定である。
3月14日 「ホーム・ヴィジティング」と題し、バンパトゥーン小学校・ドゥイウェ ンパ学校の生徒の家を訪問し、物資(ブランケットや石けん、食料)の支援 を行うと同時に彼らの日常生活を伺う機会を得た。この訪問は家庭を通し て、学校へ通う子供を増やすという目的もあった。村の世帯の中には一年 で日本円にして57000円ほどしか稼ぎのないところがあった。実際に村では 若い男性にも出会うことがあった。現地ではタピオカの原料であるキャッ サバや豚の飼料に使うトウモロコシを栽培しており、広大な農園に反して 収入は良くないという。そのためこの支援物資を心待ちにする人も多く、 期待の眼差しを向けられることも多かった。
家屋は、竹や他の木材を利用した機密性の低いつくりであり、冬には隙
間風が入る。そのためブランケットを支給した。
彼らの多くは、バンコクへ出稼ぎに出るが、文字を読めない者は、農業
を行い、生計を立てるようである。実際、道中には、トウモロコシやキャ
ッサバの畑がいくつも見られた。彼らの生活と薬物に結びつきがあるのも
また事実であり、それは、日々の苦しみからの解放と、生計を立てる手段
としてであるが、依存して働けなくなる者もいるようだ。この地域には、
ヘビが生息しており、噛まれると医療機関が整備されていないため、助か
る可能性は低いらしい。
午後は、ドゥイウェンパ学校の生徒とバンパトゥーン学校で行ったもの
と同様のゲームを用意して仲を深めた。
【ホーム・ヴィジティングの感想 2年 梯】 子供達の家がある村までは道路というにはほど遠い沼の道が続いていた。片道3時間はかかる通学は大変ではないのかと私が問えば、「友達と話していたらあっという間に着くわよ。」と彼女たちは答えた。久しぶりに家族に会えた彼らはとても嬉しそうだった。ある児童の母はある時片目が見えなくなったが、病院に行くお金もないため治療ができないらしい...
彼らの生活は私たちのそれと比べれば、不衛生で過酷な環境であった。しかし彼らの笑顔や目の輝き、そして優しさに触れたとき、彼らが単に「かわいそう」な子供たちなのか私は分らなくなった。
3月15日 前日の内に新たな男子寮の清掃は済ませていたため、この日は一日中、
寮の内壁・外壁塗装と、2段ベッドの塗装を行った。塗装を行う前は内壁、 外壁ともに薄汚く、2段ベッドも埃をかぶっていた。メンバーは、全員塗装 経験がないため、iCare Thailand Foundationの方々からご指導いただい た。まず、下地を塗装してから、壁の上部は白、最下部は青く塗る。ムラ がある箇所は、何度も、重ね塗りをした。数時間もすると要領を得て、そ れぞれが役割を分担、協力し効率よく作業を進めていった。
↑塗装以前の壁紙
強い日差しゆえに体力の消耗は早く、それだけに、寮生たちの献身的な手伝い、例えば水の配給やペンキ塗りの手伝いに対して、メンバーともども感謝したのであった。
【ペンキ塗りの感想 1年 高野】 ペンキ塗りの様子を興味津々と見つめる子供たちが、時々、私の名前を呼び、注意を引こうとする。疲れている時の励みになったし、そんな可愛らしい子供たちが実際に寮を使う様子を想像すると、より一層作業に熱が入った。
ペンキ塗りという共通の目標があったことで、言葉は通じずとも、現地の人々と団結できた。そうして、彼らの存在をより身近に感じられるようになったことに、現地へ赴いた意義を感じる。
3月16日 寮の塗装を仕上げ、床の清掃を終えると、次は、ベッドや個人ロッカーの設置、そして、枕や布団、シーツの取り付けである。これにより、男子寮は完成した。二段ベッドを上がる子供たちは、実に嬉しそうな表情を見せた。
【子供たちとの交流の感想 2年 瓦木】 恵まれている我々が恵まれていない子供達を助けるつもりでタイに行ったけれど、子供達の屈託のない笑顔を見て逆に我々が助けられた。恵まれていない環境で育つ子どもたちは不幸なのかと思っていたが、彼らはとても幸せそうで、我々が気付かされることが多かった。
↑塗装完成後の寮
昼食には、支援金を用いて、普段よりも量が多く栄養豊富な食事を提供した。牛肉のす身や野菜の入ったバクソと呼ばれる料理、またカップケーキとアイスを用意した。特に、アイスが人気を集め、ケースの前は大行列であった。
午後は、メンバーそれぞれが、バレーボールやサッカーを通して、子供たちとの交流を深めていた。最後にこちらでも折り紙を紹介し、タイで購入したお菓子(あめ、チョコ、ゼリー等)もプレゼントして、子供たちに別れを告げたのであった。
III 今後の活動
我々は、今回 2020 年度に寮の環境整備を行ったバンパトゥーン小学校 に、パソコン、また周辺機器を寄贈することができた。これは我々が目指 す現地の「自立」にむけた教育支援を達成できたといえる。しかし、パソコン寄贈は少し早すぎたように感じた。寮内の環境や、子供たちの穴の空 いた靴下などを見るとパソコンを与えるよりも先に、衛生面の支援をより 充実させるべきだと考える。そのため、来年度以降は、最低限度の生活を 送るための物資支援を目指したうえで、教育支援を行うという優先順位に 基づき、活動を行っていきたい。
またこれまで我々が支援してきた学校の子供たちとは、今後も継続的に国際交流などを行っていきたいと考える。
来年度の支援先、支援活動、またそのための資金調達方法に関しては、今回の反省を含め検討していく。今後もあらゆる支援活動を計画、実行していく。
IV おわりに
私たちはタイで奉仕活動を行うとともに、自らの目でタイの農村部の子供達の生活の実情を見て、現地の温度感を感じてきました。そこで感じた「ボランティアとは何か」という私たちの考えについてこの場を借りて、少しお話しさせていただければと思います。
まず、このタイのプロジェクトを行うにあたって勿論、様々な方の支え もありますが、計画、運営、資金管理まで大部分を私たち自身で行ってま いりました。会ったことのない子供たちを想い、時間と労力をかけて準備 を進めてきました。しかし時に「私たちの活動は本当に彼らのためになっ ているのか。」「ボランティアを行おうとするのも私たちの自己満足で、あ る意味親切の押し付けではないか。」という問いに悩まされ、私たちの活動 に自信が持てないこともありました。
渡航し、直接彼らとかかわり、支援をして、最も大切なのは、今目の前の助けを必要としている人に、自分たちができることをしていく、とにかく行動に移す事だと実感しました。たとえその活動が自己満足だとしても、その活動で彼らが笑顔になったのであれば、その活動には価値があるのではないでしょうか。今では本プロジェクトを実現した自分たちに自信を持てるようになりました。さらに自らを「与える側」だと認識し企画した活動でしたが、子どもたちの笑顔や明るさ、自分の置かれた環境下で精一杯生きる姿から、逆に私たちがパワーを与えられました。
本プロジェクトを終え、「ボランティア活動とは、他者を想い行動するこ と、そしてかかわる誰もが与え、与えられる存在となり、幸せの循環を生 み出す活動」であるのではないかと私たちは考えました。
私たちがここまで支援活動を行えたのは、私たちを支援していただいた皆様へのおかげです。改めてタイの子供達の為に、多大なるご支援をいただいた皆様、誠にありがとうございました。今後の展望といたしましては、今回のプロジェクト完遂の経験をもとに、よりよい支援活動が行えるよう、計画を進めていき、各中央大学ローターアクトクラブメディアにてご報告させていただきます。今後とも誠心誠意活動してまいりますので、応援のほどよろしくお願いいたします。
国際奉仕委員代表
大平萌々葉 梯亜紗美