バングラデシュ支援 終了報告書
皆様のご寄付で、ロヒンギャ難民と受け入れ地域の女性たちへ
支援を届けることができました!
IVYは現地NGOのMukti Cox’s Bazar(以下、ムクティ)と協働し、ロヒンギャ難民キャンプとキャンプ受け入れ地域の女性たちに対して、農業技術指導を通じた生計向上プロジェクトを実施しています。
今回のクラウドファンディングでは、以下2つのプロジェクトに対してご寄付をお願いしました。
・ロヒンギャ難民キャンプでの家庭菜園プロジェクト
・難民キャンプ受け入れ地域において「女性が利用しやすい」公設市場の建設プロジェクト
以下では、皆様からのご寄付によって実現した支援内容を詳しくご紹介します。
リターン発送につきましては、発送時期を下記でご案内しておりますので、ご確認ください。
あらためて皆さまのあたたかいご寄付に感謝申し上げます。
ありがとうございました。
① ロヒンギャ難民キャンプでの家庭菜園プロジェクト
2021年より実施された「ロヒンギャ難民キャンプにおける家庭菜園プロジェクト」では、900世帯の女性へ農業技術指導と資材提供を行ってきました。また、ロヒンギャ難民ボランティア17人を雇用し、実践を通して養分欠乏・病虫害への対応などを学んでもらい、日々の細やかなサポートを実施しました。
現在までの活動を通じて、場所、農業に適した環境、資機材のどれも充分ではない難民キャンプにおいて、女性たちは工夫をして年間を通じた野菜栽培に挑戦し、家族の食べる野菜が栽培できるようになりました。
栽培できる場所も日当たりのよい場所も限られている。
女性は、仮設住宅の壁沿いで野菜の袋栽培を行っている。
日当たりのよい屋根の上は、絶好の菜園スペース。
つる性の野菜をはわせて栽培する。
屋根の上に設置した栽培用の竹棚。
ペットボトルで作った栽培用ポットでハンギングガーデン(吊るして栽培する方法)も行っている。
住宅が緑で覆われることは、暑さの軽減にもつながる。
日当たりが悪い世帯は、屋根の上にバケツを置いて苗を育てていた。
こうした独自の工夫がうまれ、共有されている。
おっきいのができたよ!
屋根の上の収穫は、身軽な子どもたちにお任せ。
収穫を喜ぶ女性。
この野菜はひょうたんの一種で、スパイスを使った炒め物やカレーにして食べる。
家族が食べる野菜を少しでも栽培できるようになることは、家族の栄養状態を改善し、家計支出を減らすだけでなく、女性たちの自信や満足といった気持ちの面にもプラスの影響を与えました。
■とても上手に栽培している女性 Aさん■
「この庭は私のちょっとしたパラダイスです。
夫は日雇いの仕事や支援物資を取りに行くときに、お茶を飲みながら友達と話したりして息抜きしているけど、私にはそういうのがなかった。無心になって菜園の手入れをしたり、近所の人にやり方を教えてあげたるついでにおしゃべりしたり、採れたものをわけてあげたり、私にも楽しみができた。」
その他にも、「支出が減った分を子どもの教育費にあてたよ!」という嬉しい声や、夫が日雇いのお金で種を買ってきてくれた」「屋根の上の収穫を手伝ってくれた」と協力的になったり、研修を横目に見ていた世帯が参加を申し出たりと、周囲にもプラスの意識変化をもたらしました。
IVY事業終了後もこの女性たちが家庭菜園を続けていけるように、そして、さらに多くの女性たちが家庭菜園を作れるように、今回のクラウドファンディングでは、家庭菜園に使う農業資材の購入、配布資金を募りました。
喜ぶ女性たち これからも栽培を続けていきたい!
皆さまのご寄付によって、自家採取しやすい野菜の種、肥料、袋栽培に使う袋、支柱や棚に使う竹、害虫駆除資材を購入し、家庭菜園に取り組んできた900世帯の女性に対して配布式典を行いました。
盛大に行われた配布式典
配布の様子
配布の様子は、コックスバザール県の地元紙で取り上げられました
WFSでの農業資材配布と研修の実施
配布式典とは別に、WFS(Women Friendly Space:安全・衛生に関する啓発セッションや性差に基づく暴力のカウンセリングなども行う場所)において、新たに家庭菜園に取り組みたい200人の女性に対して、農業資材の配布を実施、あわせて種まきや土の準備、水やりの方法等、基本的な栽培知識について研修を行いました。
WFSでの研修の様子
こうして女性たちが集まり、コミュニケーションをとる機会自体が、彼女たちにとって貴重なものだ
資材を受け取る女性
新たに家庭菜園を始める200世帯には、竹棚の設置も行った。
竹棚は、限られた栽培スペースと日当たりを解決してくれる最強アイテム!
WFSに花壇と菜園を整備 女性の憩いの場に彩を
WFSとは、いわば女性専用の公民館のようなところです。狭い仮設住宅に大家族で暮らし、イスラム圏であるため外出がままならない女性たちは、息を抜く場所がありません。そんな女性たちが訪れることができ、集い、セミナーに参加したり、様々な相談をしたりできる憩いの場所です。
この場所をさらにほっとできる充実したスペースにするために、今回のご寄付により、花壇と菜園を整備しました。菜園では、研修をうけたスタッフが、家庭菜園に関する質問や相談にこたえ、引き続き女性たちのサポートを行います。
WFSのスタッフ。スタッフみんなで花壇と菜園の整備を行った。
整備された花壇。訪れた女性たちの心を和ませる場所に。
② 女性が利用しやすい市場の建設プロジェクト
脆弱世帯の女性のための生計向上プロジェクト
IVYは2022年より、現地NGOムクティと共に難民受け入れ地域であるテクナフ郡ニラユニオンの脆弱世帯の女性350人を対象として、農業を通じた生計向上プロジェクトを実施しています。具体的には、野菜栽培や養鶏の技術指導、農業グループの組織化、公設市場建設による販売強化です。。
農業技術研修の様子。各地区の軒先や庭で勉強会を開く。
デモファームにおいて野菜の実地研修
プロジェクトでは、養鶏への資材提供、技術指導、ワクチン接種も行う
現在まで、裨益者の女性たちは農業知識や技術を獲得、向上させることで、徐々に農業収入を増加させることができています。それと並行して、彼女たちが自分たちの農畜産物を販売し、さらに収入を増加、安定させるための場所=公設市場の建設を進めてきました。
既存の市場では、販売者が男性ばかり、また、野菜や卸売業者に販売する生産者が多く、安く買いたたかれ、女性や小規模農家は販売する場所を確保するのが難しい状況です。現状を打開し、女性が販売者としても利用者としても使いやすい市場を作る、そのために、今回のご寄付では、女性が利用しやすい施設には必須となる、男女別のトイレをはじめとした水衛生施設の建築資金を募りました。
市場始動!
皆さまのご寄付により、最優先で設置したかった「女性が安心して使える男女別のトイレ」と、市場には欠かせない「水場」として、深井戸の設置を行い、5月3日に無事グランドオープンを迎えることができました。
市場の全体写真
女性用トイレの外観
女性用トイレは、子連れでも使いやすいようにスペースを広くし、休憩スペースも設けた
女性用トイレの内観
男性用トイレ
設置された深井戸。市場に水場は欠かせない。
5月3日にオープンした市場は、初日から賑わいをみせています。
市場の様子
近隣からたくさんの農作物が運び込まれる
現時点で、出店している販売人の数は114、そのうち、女性は9名(8%)です。南アジアでは食料品や雑貨の買い出しは主に男性の仕事になっており、そのため売り手も男性が大半を占めているのが現状です。そういう文化的背景はあるものの、女性たちが利用しやすい市場環境が整備されたこと、また販売の面では女性専用区画を設置したことで、女性たちのやってみたい気持ちをぐんと後押しする土台ができあがりました。現に、裨益者の女性の中で、早速市場に野菜の出荷を始め、収入を得た人がいました!この女性に続き、たくさんの女性が市場を利用し、女性でにぎわう市場になっていくことを目指します。
裨益者の中で初めて!市場を利用して野菜を販売した女性
女性たちへの市場研修スタート
完成した市場では、早速、裨益者の女性たちを招き研修を行っています。450人の女性たちが、いくつかのグループに分かれて、市場でのマーケティング研修に参加します。
市場研修に訪れた女性たち
新しい市場に目を輝かせながら、作った野菜や鶏を販売してみたいと意欲的に話した
販売している男性から話を聞く女性たち。その真剣さが目から伝わってくる。
研修は、実際に販売している人たちから、価格設定、売れ筋の農作物、野菜の質の判断方法など、様々な話を聞ける大切な機会です。こうした刺激によって、彼女たちが「市場へ共同出荷・販売し、収入を上げること」を具体的にイメージし、行動していけるように引き続きサポートしていきます。
また、市場の管理委員会とアドバイザリーボードの定期会合を開催し、市場利用者にアンケートを実施することで、女性が利用しやすい市場になっているか、意見交換やモニタリングを行います。地域のさまざまなアクターを巻き込み、この市場のコンセプトが浸透していくことを目指します。
市場管理委員会とアドバイザリーボードとの定期会合
【収支報告】
【リターン発送について】
市場の管理委員会とアドバイザリーボードの定期会合において運営に関する合意形成が難航したため市場のオープンが遅れてしまい、返礼品の発送が遅れていることを深くお詫び申し上げます。返礼品は6月上旬に発送できるよう準備を進めています。大変お待たせしてしまい申し訳ございませんが、今しばらくお待ちください。
最後に・・・
難民受け入れ地域の女性を対象とした生計向上プロジェクトは2年次に突入しました。1年次に学んだ野菜栽培や養鶏の知識・技術を活用することで、収穫量の増加、安定的な生産を目指します。また、今回のご支援で完成した市場を販売先として活用し、共同出荷を開始、さらなる収入の向上、経済力強化に取り組んでいきます。
2023年度からは、新たな地域の女性たち100人もプロジェクトへ参加することになりました。
IVYは、引き続き、女性たちのエンパワーメントと経済的自立に向けて支援活動を行っていきます。皆さまのご支援に心から感謝するとともに、今後も私たちの活動にご支援をいただければ幸いです。
ありがとうございました。