クラウドファンディングをご支援いただいた皆さまへ
お世話になります。クラウドファンディング「朽ちつつある遊廓跡を後世に残したい! 写真集制作プロジェクト」にご協力いただき、誠にありがとうございました。既にお手元に届いていると思いますが、無事、写真集を完成させることができました。
写真集は一般的な写真集と比べて、ずいぶんと文字が多いと感じられたかもしれません。私が雑誌づくりに長く関わっており、雑誌っぽいテイストが好きということもありますが、「満すみ」の存在を多角的な視点で立体化できればと思ってそうしました。
「鬼滅の刃 遊郭編」の放送にあたって批判が出ているように、遊廓は今なお意見の分かれるイシューです。古き良き日本文化として捉える方もいれば、悪しき人身売買、性売買の象徴と見る方もいます。これについてはどちらが正しいという問題ではないと思っています。
ただ、こういった賛否のあるイシューを扱う際には、それぞれの視点やファクトを読み手に提示し、こちらの主張を押しつけることなく読み手の判断を手助けすることが重要だと考えています。そこで、今の飛田新地の“ボス”である料理組合の徳山邦浩氏(インサイダーの視点)、『さいごの色街 飛田』を書いたジャーナリストの井上理津子氏(社会的な視点)、遊廓師を研究している大阪市立大学の佐賀朝氏(歴史的な視点)、建築史家の橋爪紳也氏(建築的の視点)の話を談話として載せました。
もちろん、それぞれのイシューを論じるには紙幅が十分ではなく、また踏み込みすぎると別の本になってしまうので、今の写真集のバランスに落ち着きました。「満すみ」という遊廓の記憶とともに、遊廓の存在を考えるきっかけになればと思っています。
なお、以下に収支報告についてまとめさせていただきます。
今回のクラウドファンディングでは、382万5000円のご支援をいただきました。目標金額は250万円でしたので、大幅に上回りました。改めて感謝申し上げます。
このうち、READYFORのシステム利用料42万750円を引いた340万4250円が蛙企画に入金されました。
一方、主な支出として、印刷代、皆さまへの発送料、英文への翻訳代、ISBN/JANコードの取得、NPOへの寄付に、計389万7817円を使わせていただきました。
内訳は、印刷会社(株式会社アイワード)への支払いに338万円(2500部)、発送料に27万1217円、翻訳代に12万4600円、ISBN/JANコードの取得に2万2000円、風テラスへの寄付に10万円です。
発送については、数が多かったため、在庫の保管とともに、一緒にクラウドファンディングを手がけたサミット不動産に外注しました。
ISBN/JANコードとは、書籍市場で書籍を流通させるために必要なコードのことで、主に本の背表紙についているものです。
風テラスは風俗で働いている女性の法律相談や生活相談を無料で手がけている組織です。今回のテーマにふさわしいと考え、寄付することにしました。
足元の収支はマイナスですが、写真集の在庫を地道に販売していこうと考えております。もし写真集を扱いたいという方がいれば、別途ご相談ください。直販サイトも作らせていただきました(KAWAZU PROJECT ONLINE SHOP)。正直、少し刷りすぎたので、ご関心のありそうな書店様などがいれば是非ご案内ください(笑)。
リターンの写真集は皆さま全員に発送しました。不在で返送された分も再配送しています。もしまだお手元に届いていない方がいらっしゃれば、ご連絡ください。
リターンのツアーに関しては、緊急事態宣言などもあり、終わっていない方もいます。こちらは個別にご連絡差し上げていますので、リスケジュールの日程をいただければ幸いです。
「満すみ」については、ひとまず写真集という形で遺すことができました。中にある残置物も保存する方向で所有者や大学と話をしています。建物の保存となると、老朽化が進んでおり、費用面でかなりのハードルがありますが、クラウドファンディングのメンバーと最善の方法を考えていこうと思っています。
なお、サミット不動産の杉浦が、同じ飛田新地にある「鯛よし百番」の修繕プロジェクトをクラウドファンディングで進めています(「鯛よし百番」修復へ。飛田百番の魅力、歴史を未来につなぐために。)ご関心があれば、是非ご協力いただければ幸いです。
また、私は今回と同じような写真集を今後も出していくつもりです。次作は遊廓ではありませんが、同じように「消えゆくもの」「失われていくもの」に焦点を当てる点は変わりません。今回同様、かなりニッチな内容になることは間違いありません。また告知しますので、その際はご協力ください。
以上、長くなりましたが、クラウドファンディングの終了報告とさせていただきます。ご支援、本当にありがとうございました!!
蛙企画 篠原匡