CF達成より1年!皆様のお力添えで動物福祉の向上へ!
あっという間に月日が過ぎ、昨年皆様のおかげで達成することができましたクラウドファンディングから1年が経過しました。あらためて心より感謝申し上げます。
とても寒くなってまいりましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?
のぼりべつクマ牧場はすっかり本格的な冬となり、重い湿った雪の除雪や路面の分厚い氷を割る作業に追われています。
クマたちは、それぞれで好き好きに過ごしています。若クマたちは、雪遊びをして穴を掘ったり、追いかけっこをしたりと活発な様子ですが、10歳以上のクマたちは、オスメス問わず消防ホースを集めてベッドをつくり、身を寄せ合いながら素敵な寝顔で眠っています。
2021年末、皆様のおかげでクラウドファンディングが無事に達成され、2022年は実現できたエンリッチメントの数々をクマたちにどんどん提供する年になりました。そして、クマたちへのその取り組みは、NPO法人市民ZOOネットワークさんが主催する「エンリッチメント大賞2022」にて”努力賞”という身に余る大変素敵な賞を頂くことにもつながりました。本当に皆様のご支援によって、クマたちへの動物福祉の取り組みを加速させることができた2022年と感じており、本当に本当に心から感謝申し上げます。
【取り組み報告】
皆様のご支援によって進められましたエンリッチメントや取り組みの数々をご報告させていただきます。
※支援者の皆様には2023年1月中に詳細の報告書を別途メール送付させていただく予定となっております。
1)エンリッチメントのバリエーションが豊富に♪
毎日、エンリッチメントカレンダーを基に提供するエンリッチメントとして、ハチミツ、イヌ用粉ミルク、イチゴジャム、マーマレードジャム、制汗剤スプレーを存分に用いました。また、獣舎にはKONG(イヌ用のエンリッチメント器具)や漁具の浮き球を頭数分確保するために大々的に購入させていただき、年間通して各個体や状態に合わせてそれぞれの獣舎に提供させていただきました。
毎日のエンリッチメントとは別で、エンリッチメントのうちどれが好きなのか試験的に条件を揃えて提供してみたりしました。それらの試行錯誤のなかで、動物の反応(行動)をクラウドファンディングの資金で購入できたカメラを用いて記録し、検証を行いました。特に、繁殖期に異常行動が増加する結果をふまえて、糞や毛を用いた異性の匂いのエンリッチメントの検証も行っています。オスはメスの糞の匂いを嗅ぐと興奮した様子もみとめられています。匂いコミュニケーションが重要となるヒグマにとって、とても重要なエンリッチメントになる可能性を感じました。繁殖期の異常行動割合は14%(2021年)から4%(2022年)に減少する結果が得られました。
これらの取り組みのなかで、2021年より実施してきた行動記録は全体的に良好な変化がみられ、異常行動の割合が徐々に減少する結果が得られました。
皆様のご支援によって、エンリッチメントや動物福祉向上の取り組みはとても加速しています。あらためて心より感謝申し上げます。
2)部屋でもプールで遊ぶ?
皆様のご支援のおかげで海外の動物園でもアメリカグマで採用されている小型のプールを購入することができました。高価ではありますが、とても丈夫で、オスグマにもすぐに壊されるということはありませんでした。屋外に大きな池があり、そこも人気スポットではありましたが、外で水浴びできるから部屋ではいらないということもなく、部屋のプールも存分に利用しています。人間は水に手をつけるのも嫌になる10℃くらいの気温でも、当たり前のようにプールに浸かっています…。ヒグマにとって水は本当に重要なのだと強く実感しました。

一方でスムーズにいかないこともありました。このプールは海外で製造されている商品であったため、新型コロナウイルス感染症の影響で製造が遅延しており、全ての獣舎分はまだ購入が終えられていません(あと4部屋分の不足)。そのため、日替わりのローテーションでの対応をしました。現在は、獣舎内も氷点下になることが多く、プール内の水が凍結してしまうため、一時的にプールの利用を中止していますが、気温が常時プラスになる来春には利用を再開したいと思います。
※予備も含めてあと、9個のプールを追加購入予定
「お部屋にプール」という、陸棲哺乳類であるヒグマでは聞いたことがないスタイルですが、クマたちは心から喜んでくれているのを感じます。あらためて、支援者の皆様、応援頂きました皆様に感謝申し上げます。
3)若きホープの獣医師が挑むヒグマのエコー検査!
エコー検査については、下記の臓器のデータ蓄積を進めました。
・眼、心臓、肝臓、腎臓、腋窩リンパ節、皮下脂肪
これにより、今後の体調不良個体の診断時に比較データとして活用でき、のぼりべつクマ牧場だけでなく、広く飼育下のクマたちに応用していただけるようにデータをまとめています。
また、2022年においては人気者でありながら高齢になったヒグマ「イナホ」で視力低下が疑われ、眼科検査にエコーを用いました。それにより眼内の異常をより詳細に診断できました。さらに、2022年から第二牧場の展示が開始された若齢ヒグマ「ミズキ」の関節炎にエコー検査を用い、関節内に貯留した液体の抜去などの処置を行うことができました。
70頭すべてのクマが、エコーを用いた適切な医療が受けられるような環境に近づいてきました。まだまだ獣医師側のスキルアップや知見の蓄積が必要な段階ではありますが、とても発展的な獣医療に向けた一歩を歩み始めることができたと感じています。あらためて、本当に本当に感謝申し上げます。
4)エンリッチメント大賞2022”努力賞”の受賞☆
このようにクラウドファンディング以前から取り組んでいた動物福祉向上の取り組みが、クラウドファンディング以降、グングンと音を立てて加速していき、クマたちの行動記録では異常行動が減少し、飼育ケアの体制も改善することができました。このことは、客観的にも評価していただき、エンリッチメント大賞2022”努力賞”を受賞させていただくことができました。

クマたちは、盾を見せても特に反応はなく影響はないかもしれませんが(喜んでくれているかもしれませんが…)、飼育員や会社も嬉しく、心から喜んでいます。ますますモチベーションも上がります!努力を認めていただけるような結果を残せたのも、クラウドファンディングのご支援があってこそだと感じております。あらためて、本当に本当に本当に感謝申し上げます。
【収支報告】
皆様からご支援頂いた資金は、下記のように使用させていただきました。
※残金の622,963円はプールの追加購入資金になります。海外製のクマ用プールについては新型コロナウイルス感染症の影響で現在(2022年12月末)も製造が遅延しており、製造され次第随時追加購入を行っております。
【今後の展望】
クラウドファンディングでご支援、応援いただき、エンリッチメントや動物福祉の向上については、加速して取り組むことができました。しかし、まだ十分というわけではありません。行動記録や検証によって課題や具体的な方策は明確になってきましたが、それらを継続して実行する体制を整えなければなりません。また、獣舎環境の見直しや飼育管理のバージョンアップなども1つ1つ着手していかなければなりません。行動記録やエコー所見など多くの得られたデータの解析も完了しておりませんので、それらの解析を進め、広くクマ飼育関係者や一般の方々が理解、利用できる情報として、公開していくよう進めてまいります!そして、のぼりべつクマ牧場だけでなく、国内、世界中の飼育クマの動物福祉が向上するように努めていきたいと思います。
引き続き、来たる2023年も皆様とより良い歩みができますように頑張っていきたいと思います。クマたちの情報発信もどんどんしていきたいと思います!エンリッチメントで楽しむ姿だけでなく、雪遊びをするクマや、ぐっすり眠るクマなどSNSでも毎日クマたちの様子をお伝えしておりますので、ぜひご覧いただければと思います。
あらためまして、動物福祉向上へのご支援、応援を頂き誠にありがとうございます。今後とも末永くよろしくお願いいたします。