大成功!台湾で「台湾・福島フォーラム」が開催されました。
【ご報告】
ご支援に心から感謝いたします。
今回のクラウドファンディングによる皆様から多大なご支援をいただき、2023年12月8日、JR東日本大飯店において、特定非営利活動(NPO)法人福島台湾経済文化交流協会(会長:簡憲幸)の主催による「台湾・福島フォーラム」を無事に実施することができました。
当時は、原子力研究者・関係者、政府関係者、水産関係者、日台交流関係者、報道関係者など約50名が参加され成功裏に終了しました。まずは心より感謝申し上げます。有難うございました。
●台湾の総統選挙前の開催リスク
「台湾・福島フォーラム」の当日ですが、台湾が亜熱帯といえども北部に位置する台北では、この時期だいぶ涼しくなります。しかし数日前から天候に恵まれイベント当日も晴天ということもあり、暑くもなく寒くも無い素晴らしい気候でした。
さて約一か月後に中華民国総統選挙ということで、台湾の報道関係などは選挙一色に染まっていました。この総統選挙に関して、私たちは相当に心配をしていました。つまり今回の私たちの事業「台湾・福島フォーラム」が、台湾の総統選挙の道具に使われる恐れがあったからです。
今回の「台湾・福島フォーラム」の趣旨は、福島の風評被害について論じ合う場です。それを「与党・民進党」と「野党・国民党と民衆党」が、台湾の原発について反対・賛成などと論点がすり替えられることでした。私たちは、台湾の政治問題として振り回されないようにと、講師の方々、参加者の皆様、そして報道陣にも事前にご注意をさせていただきました。
元々、民進党と国民党とが原子力政策に関して激しいつばぜり合いが展開されてきた経緯があり、福島など農産品の輸入禁止の解除が相当に遅れました。
この遅れは台湾市民の「福島の食材は危ないのでは?」という懸念が、時が経つことで「福島の食材は危ない!」の断定になってしまいました。私はこれを「風評の凝固」と呼んでいます。風評が起きても、柔らかく流動性のある時期においては対応がまだ容易です。しかし風評が硬く凝固し固形化してしまうと厄介なのです。
それだからこそ、私は、処理水放出後に一時も早く風評被害対策をしたかったのです。また中華民国(台湾)の総統選挙前に風評被害対策として「台湾・福島フォーラム」行いたかったのです。政権がどのように変わろうと、選挙前に、まずは風評被害対策の一矢を放ちたかったのです。
●政治の枠を超えた感動的な快挙
そして今回の「台湾・福島フォーラム」では、国民党側、民進党側の双方から原子力関係の専門家と政治関係者が参加していただきました。
このことは実は大変なことなのです。そして両者の方たちから、福島の現状を理解していただき支援していただける旨のご挨拶やご意見を伺うことができました。これは私たちにとっても大きく誇れることでした。
台湾おいて政治的な意見が異なり、立場も異なっていても、福島の農水生産者たちが苦悩している風評被害について、また福島第一原発事故に関して、台湾の専門家たちが前向きに取り組む姿勢を見せていただきました。大袈裟な表現かもしれませんが感動的な快挙と言えます。
さて、以下、「台湾・福島フォーラム」のご報告をさせていただきます。
概要報告
●「台湾・福島フォーラム」を開催。成功裏に終了
「NPO法人福島台湾経済文化交流協会」の主催、「福島前進パートナーズ」の共催による、福島第一原発からの処理水放出後の中華民国(台湾)における風評被害対策として2023年12月8日に、台湾の台北市JR東日本大飯店(ホテル・メトロポリタン・プレミア台北)「牡丹」にて第一回となる「台湾・福島フォーラム」を開催しました。
会場には、「財団法人中華民国輻射(放射線)防護協会」など台湾の原子力関係者、日本側の大使館にあたる「公益財団法人日本台湾交流協会」、台湾の水産業者、「財団法人台南市台日文化友好交流基金会」「台日産経友好促進会」「早稲田大学校友会」「日台稲門会」「東京台湾の会」など日台交流に関わる人たち、さらに国民党、民進党関係者など幅広い方たち約40名が参加されました。
また台湾と日本のメディアの関心も高く、朝日新聞、毎日新聞、日本共同通信、中央通訊社、三立新聞、公視新聞(TV局)などが取材に来られ、どのメディアも報道していただきました。メディア報道については、最後にまとめて掲載いたします。
さらに日本から今回の「台湾・福島フォーラム」開催に賛同していただいたボランティア・スタッフが自費で参加していただきました。また台湾からもボランティア・スタッフが参加していただき、両国ボランティアの協力の下で実施しました。本当に有難いことです。
「台湾・福島フォーラム」のプログラムは下記です。
12:30 /開場・来賓入場
13:00~13:10/挨拶
司会者挨拶 呉 廷中(NPO法人福島台湾経済文化交流協会 理事長)
主催者挨拶 簡 憲幸(NPO法人福島台湾経済文化交流協会 会長)
13:10~13:30/来賓紹介・来賓挨拶
財団法人中華民国輻射防護協会 董事長:張 似瑮
輔仁大学 教授・中華民国国民党組織発展委員会国際部 副主任:何 思慎
財団法人台南市台日文化友好交流基金会 董事長・前民進党全国党 代表:郭 貞慧
13:30~14:10/講演
「台湾から見た処理水放水問題(以灣的角度看處理水排放問題)」講師:葉 宗洸
14:20~15:20/講演
「日本の原子力発電政策の現状/処理水放出の課題と廃炉への道程(日本核能發電政策現況/關於處理水排放課題及廢爐過程)」講師:木野 正登
15:40~16:40/パネルディスカッション
「日本と台湾との原発課題を考える(討⽇本臺灣的核發課題)」
・パネラー:葉 宗洸、木野 正登
・ファシリテーター:吉村 剛史
16:40~17:00/Q&A、閉会挨拶
●葉宗洸教授:台湾での風評は「ばかばかしい!」
最初の講演は、清華大学工学システム科学科・研究所の葉宗洸教授による「台湾から見た処理水放水問題(以灣的角度看處理水排放問題)」ですが、よりテーマを明確にされ「失衡的科學與現實(アンバランスな科学と現実)」としてお話されました。
最初に、葉教授は東京電力福島第1原発での汚染水の浄化処理について詳しく講演していただきました。そして今回の処理水放出について科学的な見地で判断しなくてはならないが現実にはそうではなく、たとえば処理水の放出後に台湾で市民が塩の買いだめが発生したことを例に挙げました。処理水に含まれる放射性物質トリチウムは水の形態で存在するため純塩に存在することはないと説明し、この塩の買いだめを「ばかばかしい!」と一蹴しました。
また「国際原子力機関(IAEA)の調査団が10月下旬に訪日したものの、台湾は国連に加盟していないため、調査団のメンバーには台湾の専門家が含まれていない」と指摘され、日本政府に対し「全ての利害関係国の専門家を招いて放水口で定期的に海水サンプルの採取をさせた上で、サンプルを持ち帰って分析することを認めるべきだ」と呼びかけました。
●木野正登氏:処理水は厳しい基準をクリアーしている
次に、経済産業省の木野正登・廃炉・汚染水・処理水対策官が登壇しました。木野氏は、最初に日本国のエネルギー政策について述べ、原子力発電について日本国の立場を明確にしました。
その後、多核種除去設備「ALPS(アルプス)」を使った汚染水の処理過程や放出計画について語りました。とくに処理水放出にいたる経緯、そしてその理由についてもお話されました。その結果、処理水放出について世界で最も厳密な検査をし、放出後の海洋検査など厳しく行っていることなども合わせて紹介されました。こうした日本国政府の取り組みについて、国際原子力機関(IAEA)が国際的な基準に合致しているとした報告書の内容をも詳しく丁寧に説明しました。
しかし風評被害対策の難しさに触れ、処理水放出に関して理解が得られるように日本国内でも様々な取り組みをしているが広がらず、ましてや海外の人々に伝えることはさらに難しいと指摘されました。
ちなみに今回のフォーラムのように木野氏のような現役の経済産業省担当者が海外で説明するのは初めてのことです。
●パネラーと来場者との活発な議論が展開
お二人の講演の後、パネルディスカッションが開催されました。その冒頭に、「財団法人中華民国放射線防護協会」の張似瑮董事長氏と「義守大学学映像及び放射線科学系」の陳清江教授の2名から原子力関係の専門家の立場からご意見をいただきました。
パネルディスカッションは「日本と台湾との原発課題を考える」とのテーマで、葉宗洸氏と木野正登のパネラーに、ファシリテーターとして産経新聞元台北支局長の吉村剛史氏が加わり、より具体的な今後の福島第一原発への対応や風評被害対策について議論がなされました。
日本と台湾との政治的な環境は異なりますが、感情的な思考や判断ではなく、あくまでも科学的な見地に立って議論することの重要性が共通した意見として挙がりました。
また会場の参加者からは「台湾にいて今回のような情報を知らなかった!」「台湾において日本から正しい情報提供がなされていない!」など海外における広報不足である日本の行政への注文などが出ました。
福島県の日本酒の試飲会
会場の一角で、参加された方たちに福島の日本酒4本を振舞いました。福島の日本酒を初めて飲んだ方たちがほとんどでした。しかし誰もが口にしたとたん「これは美味しい!」と絶賛していただきました。その試飲用日本酒リストを下記に記載します。
・福島県国見町:国見あつかしさん「極・純米大吟醸」「純米吟醸」「初しぼり純米吟醸」
・福島県磐梯町:磐梯酒造「磐梯山」
●参加者へ福島物産のプレゼント
今回、福島県産の食品を講演者、来賓、参加者、報道陣に進呈しました。どれも福島産の素晴らしい商品です。その商品リストを下記に記載します。
- 福島県磐梯町:ハチミツ、あま酒、昆布
- 福島県国見町:あんぽ柿、桃プリン、桃キャラメル、試飲用のお酒
- 福島県玉川村:エゴマパウダー、りんごチップ
- 福島県田村市/エゴマ農家・渡部芳男:エゴマ油(生・焙煎)
- 福島県福島市/果樹農家・景井愛実:りんごチップ、桃チップ
- 福島県飯舘村/(株)サクラシスターズ・峯岸ちひろ:焼き菓子セット
●台湾の税関でのトラブル
実は「台湾・福島フォーラム」前に、台湾の税関でトラブルがありました。福島県から送った日本酒100本が止められ通関できないのです。この日本酒は、参加者に進呈する商品であり販売目的ではありません。
事前に台北のJR東日本ホテルの担当者から「台湾の税関は、理由もなく、いや何らかの理由をつけて、日本からの物産を通関させないので困っています」といわれていましたが、それが現実となりました。
台湾は親日と言われていますが、貿易戦争という現実があり、実情は甘くないのです。台湾の不合理な税関の対応はひどいもので、担当者の考えで、イエスもノーも決まります。昨日は許可が出ても、今日は分かりません。法規や条例などもあるのでしょうが、税関担当者の気分次第なのです。
つまり「台湾の税関が日本製品に対して厳しく対応している」「俺たちはしっかりと働いているんだ!」というパフォーマンスを政府や国民に見せたいのだと思います。
また「福島産」ということでの「嫌がらせ」の可能性もあります。それは税関担当者の「放射線汚染が怖い福島産については、何らかの理由をつけて、簡単には台湾には入れない!」という心理が働いているのでしょう。これも一種の風評被害です。
そして私は台湾スタッフと一緒に台湾の税関に行き必死に対応しましたが、結果として「台湾・福島フォーラム」に間に合いませんでした。風評被害というのがこうした形でもあることを知りました。実に残念です。
メディア
以下、台湾と日本で報道されました。実際にはこれ以上あるかもしれませんが私たちの方で追えていません。現状で把握しているだけを掲載します。台湾メディアは中国語ですが、翻訳機能を使用することで日本語表示ができますので、お試しください。
<中国語>
①公視新聞(TV局)
②三立新聞
③中央通訊社
④経済日報
⑤今周刊
<日本語>
①フォーカス台湾
http://japan.focustaiwan.tw/society/202312080007?fbclid=IwAR28Opg9c9NW6zuyqyTYlpQeFZ8NYEenrca8kb5LoqRqZFs-K37fUCXsitE
②毎日新聞
⑤Yahoo!ニュース
http://news.yahoo.co.jp/articles/783c4c4d2e81eea45858b5c6864853a950edd44a
⑥dmenuニュース
/topics.smt.docomo.ne.jp/article/mainichi/world/mainichi-20231209k0000m030001000c?redirect=1
⑦The News Lens Japan
http://japan.thenewslens.com/tag/16737
⑧静岡新聞
http://www.at-s.com/news/article/national/1372099.html
⑨中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/819315
⑩信濃毎日新聞
http://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023120801097
⑪河北新報
http://kahoku.news/articles/knp2023120801001887.html
⑫西日本新聞
http://www.nishinippon.co.jp/item/o/1155253/
⑬47ニュース
http://www.47news.jp/10239259.html
⑭愛媛新聞
http://www.ehime-np.co.jp/article/ky202312080366800010
⑮岩手日報
http://www.iwate-np.co.jp/article/kyodo/2023/12/8/1215035
⑯日本ドットコム
http://www.nippon.com/ja/news/kd1105801669816107978/
⑰新潟新報
http://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/325187
収支報告
当プロジェクト「台湾・福島フォーラム」の「終了報告」が、実施日である12月8日から一週間以内となっています。
したがってまだ①各支払先からの請求などが届いていない、②READYFORからの入金予定が2024年1月10日である、などことで、12月14日現在、収支が正確に算出できませんので、収支予測と概算を下記に記載します。
●クラウドファンディングの収入(未入金/READYFORから2024年1月10日入金予定)
・目標金額: 3,000,000円
・支援総額: 3,215,000円(達成率107%/支援者数136人)
①クレジットカード決済分:3,055,000円
②振込決済分:75,000円
③コンビニ支払い分:85,000円
・クラウドファンディングREADYFOR手数料(17%):546,550
・クラウドファンディングREADYFOR手数利用の税金(10%):54,655
・実質獲得支援額:2613795円(予定)
●「台湾・福島フォーラム」の支出(予定)
<中華民国(台湾)の支出(予定):2,300,000>
・会場費と備品使用料等:600,000円
・イベント実行委託費と経費等:400,000円
・通訳費と翻訳料等:200,000円
・プログラム制作費と印刷費:200,000円
・ホテル滞在費と食事代(5名):300,000円
・参加者への福島県産品贈呈品代(50名):300,000円
・航空運賃(台湾-日本往復/5人/@60,000円):300,000円
<日本国の支出(予定):565,400円>
・日本語報告書制作費(136名):100,000円
①制作費+印刷費(日本語/翻訳/編集/カラー8ページ/200部)=100,000円
・クラウドファンディング支援者への報告費(62名):47,400円
①制作費+送料=700円×62名=47,400円
・クラウドファンディング支援者への福島県産品返礼品(98名):209,000円
①日本酒+送料=1,500円×63名=54,000円
②日本酒+物産2,000円+送料=4,000円×30名=120,000円
③日本酒+物産5,000円+送料=7,000円×5名=35,000円
返礼品の送付について
●2024年1月中に「報告書」と「返礼品」を送付
台湾で開催された「台湾・福島フォーラム」ですが、ほとんど中国語で行われました。その内容を「報告書」として冊子にして、クラウドファンディングでご支援いただいた方たちに送付いたします。
しかし原子力関係の中国語の翻訳は注意が必要であり、台湾側にも構成していただく必要があります。そのため翻訳作業から編集、そして印刷まで約一か月間を要します。また年末年始が重なります。つきましては「報告書」と「返礼品」については年明けの2024年1月中になりますのでご了承下さい。
なお返礼品不要の方も含めてご支援いただいた方全員に、当日の「プログラム(中国語)」と「報告書(日本語)」を送付いたします。
以上、ご報告をさせていただきました。最後に重ねて心から御礼申し上げます。本当に有難うございました。