kokoka展示室では、展示会を通じた様々な出会いが生まれています。その出会いが、新しい創作やつながりを生み出し、時には人生を変えてしまうこともあるのです。今日は、ベトナム漆画の展示会を通じて、新しいアーティストが誕生したお話を紹介します。

 2006年3月に開催された展示会「ベトナム漆画アートの世界-響きあう日本・ベトナムの心」では、ベトナム国立美術館所蔵の貴重な漆画作品や、現代の漆画作家の作品が展示されました。展示作品の中には、日本初公開となった「リナムデ王と妃」(作者不詳、17-18世紀)もあり、大変な話題となりました。また現代作家の作品も、ベトナムの自然や人々の生活を多様な技巧で表した素晴らしいものでした。

 

  当時、京都市立銅駝美術工芸高等学校3年生だった西本夏子さんは、この展示会を鑑賞してベトナム漆の虜となり、卒業後ベトナムに渡り、漆画家のもとで修行を始めました。2012年にはハノイで初の個展を開き、そして翌年の2013年11月にはkokoka展示室で、同じくハノイ在住の写真家、普後邦夫さんと一緒に「哀愁のハノイ 写真と漆画」を開催。どこかノスタルジックなハノイの一面を、漆の質感や深い陰影で表し、漆画アーティストとしての確かな才能を開花させました。

天然漆を使い精巧な技法を用いられた漆芸は、ベトナムの伝統工芸として古くから継承されてきました。ベトナム語も習得し、日越の架け橋となってがんばる西本さんの今後の活躍を、kokokaも応援したいと思います!

 

 最後に、当時の展示会主催者で、NPO法人日本ベトナム文化交流プロジェクトの清水崇彦さんにお話を伺いました。

 

Q.当時なぜ京都で展示会を開こうと思ったのですか?
A.私はそれまで建築、美術、音楽、伝統美術などのプロデュースを国内外でフリーで続けていましたが、そんな私にあるベトナム関連のNPOから天然の漆による本格的なベトナム漆画の展覧会を開きたい、ついてはそのプロデュースをお願いしたいという依頼が舞い込みました。私は当時ベトナムに行ったことがなく、ましてや漆画の存在など知らなかったのですが、持ち前の?楽観主義で引き受けました。その後、2006年3月1日オープンの2ヶ月半前の12月14日になって、依頼元代表の不手際で延期に追い込まれました。しかし、すでに走り出していた企画でもあり、理事会は続行を決定し、引き続き私が任に当たることになりました。ところが、予約していた東京の会場がその混乱で半月に短縮されてしまい、その苦境をどう脱するかが大きな課題でした。私はその時、日本の文化の本拠地ともいうべき京都で開催することが展覧会のステータスを上げることになると考え、京都での開催を緊急に模索したわけです。

 

Q.kokokaの展示室を利用していかがでしたか?
A.幸いなことに、その時kokokaでは2006年3月の予定がまったく入っていなくて利用を申し込むことができました。本当に幸運でしたが、年末年始の忙しいなか、担当の溝口さんが迅速、的確に対応してくださったおかげでした。ハノイのベトナム国立美術館から国宝級の作品1点をふくむ14点をお借りし、民間のギャラリーから27点、合計41点すべてを展示することができました。多少窮屈ではありましたが、立派な展覧会になりました。駐日ベトナム大使館も主催者のひとりとして参加してくださった特別な催しでした。感謝してもし切れないくらいです。同時に、kokokaや京都市の、文化に対する志の高さに感銘したものです。その後、展覧会は東京から札幌へと移動し、結局2ヶ月におよぶ長期間の催しとなり予想外の成功を収めました。

 

Q.展示会を見に来た高校生が、作品に影響を受けて、その後ベトナムで漆画を学び、再びkokokaで凱旋展示会まで開いてくれました。そのことについて、どう思いましたか?
A.展覧会をプロデュースした者として、これほど嬉しいことはありませんでした。私たちの企画がひとりの人の感動を呼び起こし、それがベトナムとの文化芸術の架け橋になったわけですから。私はその高校生の留学のために、当時のハノイ美術大学(現在はベトナム美術大学)やハノイ美術工芸大学の、それぞれ有力な教授や学長さんにお会いして便宜を図ってくださるようお願いしました。
西本さんは現在は結婚して日本で生活しておられますが、いずれにしても、kokokaのひとつの企画から、日本とベトナムの文化芸術の芽が育ったわけで、kokokaが立派な国際交流、国際文化理解の役割を果たしたと考えています。

 

Q.今回のリニューアルプロジェクトに向けて、メッセージをお願いします。
A.これまで述べたような経験から、リニューアルプロジェクトが単なるハード面の整備に終始してほしくありません。kokokaは素晴らしい経験と実績を持っているわけですから、それを生かした「志の高い」リニューアルを目指してください。従って、ソフト面でのリニューアルが決定的に大切だと思います。どこにでもあるような「貸し館業」に堕さないことです。私は漆画展以降も、さまざまな利用をさせていただきましたが、いつも担当窓口の方の、謙虚だけれども志の高い姿勢や矜持に感銘し共感してまいりました。ぜひ、このkokoka mind を大切にしていってください。

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