「KOTOWARI 会津サマースクール」終了報告書
【KOTOWARI 会津サマースクール開催!】
この度は「KOTOWARI 会津サマースクール」開催のために、合計で130名の方から356万5千円のご支援をいただきました。本当にありがとうございました。
2021年8月17日-20日、福島県南会津の会津山村道場にて、「KOTOWARI 会津サマースクール」を開催いたしました。
コロナ禍で実施が危ぶまれましたが、町役場や宿泊施設のご理解とご協力、徹底したコロナ対策と事前検査への参加者の協力もあり、安全に十分配慮した上で無事に開催をすることができました。
高校生から大学院生までの18名の参加者が、期間中にケガや病気なく、無事にプログラムを終えることができました。以下、当日の様子や参加者の声の一部をお届けいたします。
【当日のプログラム内容】
〜「真に持続可能な生き方と社会の実現」をテーマに、個人の自己観、人間観、自然観、世界観のつながりを、「リベラルアーツ」と「内省」、「自然」を通して深めていく〜
Day 1「SOCIALIZATION」
事前課題で、人口爆発・穀物・家畜・養殖・工業製品・エネルギー、燃料・温暖化・個人の行動など様々な分野を隅々まで取り扱った、『地球を滅ぼす炭酸飲料』を読んだ上でディスカッションをしました。
人生ではじめてディスカッションをするという学生も多く、全員でディスカッションの心得や作法を話し合って決めた上で、それぞれの立ち位置から気候変動の現状や解決策を語り合いました。
教育や啓発で環境問題は変えられるのか?と言った議題や、実際に自分は問題解決のために何をどこまで犠牲にできるのか?などと言った素直な疑問を互いにぶつけ合って、白熱したディスカッションの時間となりました。
また、プログラムの柱の一つである「内省」を対話を通して行いました。それぞれの参加者にとって最も特別なもの、大事なものを互いに共有し、人種や言語が同じでも多様な世界に個々人が生きていることを知りました。違いを相互に共感、理解した上で共に環境問題を考える土台作りをしました。
参加者の声(一部):
- "周囲にはいない特別なバックグラウンドを持つ人に出会ったとき「違う」と認識し境界線を引いていたが、その人の持つ新しい世界を理解し、お互いが心地よく感じる対話の方法を考えるようになった。"
- "最初のディスカッションで私自身とても自己中心的な視点から環境問題を考えているなと気づき、自分の考えが非常に排他的であったことを知った。"
- "自分自身がこのアクティビティで言葉にしたことが、結果としてサマースクール全体の学びを自分ごととして繋げてくれたので、とても有意義な時間だった。"
Day 2~3「INDIVIDUAL & SOCIETY ~ SOCIETY & NATURE」
政治哲学・経営学・経済思想のゲスト講義を受けた上で、現地の民俗資料館や只見のブナ林でのフィールドワークを行い、分野横断的にリベラルアーツの枠組みで環境問題を捉え直しました。
断片的に知っていた環境問題を大きな枠組みの中で理解し、全てのつながりの中における自分自身と現代社会の土台や経済構造、自然環境がどのように相互に作用し合っているかを参加者は探求しました。
哲学者の荒谷大輔氏、経営学者の武田悠作氏、経済思想家の斎藤幸平氏。参加者は各学問分野の視点から、環境問題を引き起こしている、社会の土台や経済構造、ビジネスの仕組みは何かを考えていきました。環境問題の根底には社会や経済の構造に起因する近代的な価値観があり、ビジネスによる公共価値の創造が環境問題を解決できるか否かを話しました。
また、奥会津博物館では現代社会や経済の「当たり前」を問い直し、産業革命と資本主義以前、前近代の世界を垣間見ることができました。その上で今と昔の変化を理解するために「KOTOWARI ROLL」という、コンビニの巻き寿司の製造、流通、消費にかかわる「つながり」をマップにすることで可視化していくアクティビティを行いました。
只見のブナ林では机上の学びが体験と結びつきました。環境保護活動に人生を賭した2人の現地の活動家の方々から、時代を経て変わっていく環境保護(保全)の在り方を学び、過去には伐採が進められていた只見のブナの原生林が、どのように地域の公共の富となったかの過程を知りました。これまでの学びを身体感覚を通して現実認識する時間でした。
夜には焚き火を囲んで、ゲスト、参加者、メンターが夜更けまで語り明かしました。人生観やキャリア、社会に対する疑問や希望、興味関心を互いにシェアしました。
参加者の声(一部):
- "昔は農家と消費者の間にコミュニティがあった。でも今は社会規模が大きくなるにつれて間に企業などが介入するようになり、自分が買っているものがどのような影響を環境に与えているのか知らないという事実が浮き彫りになった。"
- "自分が生きている資本主義社会については何も知らないことがよくわかり、普段の自分はかなり受動的に生きていることに気が付いた。社会とは離れたところで、自分が何を幸せと感じるのか、どう生きていきたいのかを考える必要があると思った。"
- "コモンズ(公共資材)を増やし経済成長はしていないけれど豊かな社会を作ろう、というような考えは新鮮で今の社会に必要な視点だなと思った。でも成長を止めるのは成長するよりも難しいし、新たなリーダーシップやそれに乗っかるムーブメントも作りづらい。そんな世の中でどう環境問題や社会にコミットできるかは私たちの大きな課題だな、と感じた。"
Day 4「NATURE & INDIVIDUAL」
プログラムからの学びを通して、どんな未来、どんな人間と自然の関わりを想像、創造していくか。これが、プログラムの締めのテーマとなりました。社会や政府といった大きな主語に目が向きがちな環境問題において、いかに「自分」を支点に社会と自然とがつながっていくのか、を考えました。
ゲストの辻信一さんの「あいだ」の講義は参加者の心に深く響き、辻さんの「Share, Care, Fair」は新たな豊かさのヒントを示してくれました。性善説と性悪説という視点から社会システム、ひいては自分自身を見たとき、どのようにより「つながり」をベースにした生き方をできるかが問われました。
最終課題の「KOTOWARI STORY」ではプログラムからの全ての学びを元に、「フィールドワークで訪れた只見のブナ林で拾ったものをはじまりとして、自分にとって特別なもの/大事なものにまでつながる物語を書いてください」というお題から、参加者一人ひとりの「つながり」の物語が生まれました。
参加者の声(一部):
- "環境問題を人の思想から本質的に考えることが面白かった。性善説の視点だったり、ナマケモノの生活だったり、環境問題を考える上で面白い視点を沢山知れた。gift→share、care、fairというキーワードがすごく印象的で心に残った。"
- "要約をさせたり感想を述べさせて終わるのではなく、想像力を求めるアクティビティがあることは素晴らしいと思った。想像力があればこそ新たな価値観とより良い社会を築けるのだから。"
- "自然であり、豊かであるということがどういうことなのか、という問いに向き合うことで、これからも自分にとって大切なことを見失わずに生きていけると思った。"
Day 1 - 4 「KOTOWARIの豊かさ」
自然や内面から湧き上がる「豊かさ」と「つながり」に気づけるよう、以下のような心得と想いをプログラム設計に組み込みました。
KOTOWARIの心得:
一、心の静寂を大事にしましょう
一、自分の思考や感情、記憶を観察しましょう
一、物事の大前提が何かを意識しましょう
一、自分と異なる意見や視点から学びましょう
一、共感を土台にした関係性を築きましょう
毎朝の朝食前の時間には選択制のマインドフルネスと瞑想の時間があり、自己を観察すること、人間の内面と環境問題とのつながりを学びました。毎晩のジャーナリングの時間では、日々の気付きや学びを言語化して、参加者同士で自由にシェアをしていきました。
KOTOWARIの「食」への想い:
自然への想いをはせるきっかけとなる「食」の体験を提供すること。
日々の食事は、現代人に残された数少ない「自然」との接点です。食材がどんな気候・環境条件下で、どのように育てられ、どう調理されるのか。本当に美味しい食事とは、自然の摂理に即して育てられ、調理されたものではないかとKOTOWARIは考えています。口に入れる食べ物を源に人間の心と身体は作られており、そうした意味では、食材も心身も全て自然の一部だからです。
美味しさに感動し、その背後にある「自然」の原理原則が知りたくなる。KOTOWARIは「食」をそのような喜びと学びの体験として位置付けています。プログラム中は完全ベジタリアン食、食材は会津屈指の有機農家「無の会」のお米と野菜、お味噌を無償で提供していただきました。
参加者の声(一部):
- "生産者も作る人もすべて見えるものを食べることは、自分の体に取り入れるものにより意識を向けるきっかけになった。"
- "本当に美味しくて、毎回の食事がとても楽しみでした。食事はただ空腹を満たし身体を作るだけのものではなく、自然とのつながりや作られた方の想いなどを伝え、喜びや感謝で心を満たしてくれるものだという感覚を実感できたのがとても良かったです。"
- "優しさと、素敵で純粋な思いとお野菜がたっぷりで本当に美味しかったです。KOTOWARIのご飯が私の体の一部になってたくさんのことを学べたことに感謝しかないです。今、家庭のご飯を食べるのが怖くなっているのが少し課題です…"
【プログラムの振り返り】
参加者のみなさんに事後アンケートを提出していただいたところ、"自分の人生観、世界観、自然観が、これまでにないくらい大きく変わった""人生で最も濃い、最も幸せな数日間だった"という声が多数ありました。
自然、リベラルアーツ、内省という本サマースクールを構成する大きな柱から、それぞれの参加者が重要な学びと気付きを受け取ることができたようでした。後日、報告書にまとめて参加者の声やプログラム内容の詳細をお届けします。
参加者の声(一部):
- "住む場所、着るもの、働き方など、誰かが決めた固定観念や恣意的に形づくられたものを、当たり前だと言って自分のライフスタイルに組み込んでしまうと、人間の中の自然である状態が揺らいでしまう。また、そこから個人の生活の中での問題が発生し、さらには地球規模の問題にまで発展しているという構造も見えてきた。"
- "一番大きいのは、「仲間」と「人」との出会いだと思う。仲間ができたことで自分や世界のビジョンとかが明確になってきた。可能性が広がった。そして以前よりこの地球と人類の未来に対しての希望も持てるようになり、色んな道も見えてきた。"
- "サステナビリティにおける課題解決が自分のやりたいことであるという認識の上で、その中の特に何にフォーカスするべきなのか迷いがあった。その迷いを紛らわすために様々なアクションをこれまで詰め込んでいた。活動自体がいつしか目的のような感じになってしまっているのに気づかなかったが、本スクールを通じて内面から湧き出るものの重要性を感じることができた。今後自身の内省をさらに意識的に取り組みたいと思うことができた。"
また、クラウドファンディングを通してご支援をいただいたみなさま、プログラムのはじまりから人的なサポートをいただいたNPO法人Earth & Human、当日に尽力してくれたボランティアスタッフへの感謝の想いを胸に抱きながら、今回の学びを今後の人生の糧にしていきたいという参加者の決意も見られました。
参加者の声(一部):
- "クラウドファンディングで支援をしてくださった方々、このプログラムを作り上げ支えてくださったすべての方々に心からの感謝を申し上げます。コロナ禍のなか、対面での貴重な経験をありがとうございました。このプログラムから学んだことはこのような多くの方々に支えられて身につけられたと思う感謝の気持ちが、学んだことや変化したことを東京の生活でも忘れずに持ち続け、これから新たな実践に向けて動いていける一つの理由になるのだと思います。本当にありがとうございました。"
- "100点満点中、1万点をつけたいくらい、学びが多い素敵な機会を頂きました。 当日の運営に携わってくださった方々、参加者に見えづらい裏方で支えてくださった方々、地域や講師の方々、クラウドファウンディングで支援してくださった方々、全ての関わる方々に心から感謝します。まさに自分は自然や社会の繋がりの中で生きる存在であることを、サマースクールにおいて受け取る全てから理解するしかない時間でした。できればこの感謝を皆さんにお返ししたいし、それが難しければ、また他の人への恩送りという形で繋いでいきたいという気持ちです。本当にありがとうございました。"
【プロジェクトの収支報告】
皆さまからご支援頂いた資金は、約150万円を今回のサマースクール運営費のために使用させて頂きました。
サマースクールの会場費と宿泊費に55万円、現地でのバスやタクシーの交通費に10万円、当日必要な備品のレンタルと購入に15万円、ゲスト講師の講演費や必要諸経費に20万円、スタッフの交通費と宿泊費に20万円、コロナ対策や検査費用に10万円、プログラム開発費に20万円を使用させて頂きました。
「自然農法 無の会」による食材提供とボランティアの調理スタッフのため食費は無料、また、スタッフは全員がボランティアのため、経費のみの負担になりました。
いただいたご支援の残りは、次回以降のスクールの開催のための費用や、活動をより広く、深く発展させるための資金として充てさせていただきます。
【リターンの発送状況】
9月中には報告書と報告用の動画を作成し、支援者の皆さまにお届けいたします。また、報告会については10月下旬、社会情勢によって形式を決定いたします。農作物付きのリターンは「自然農法 無の会」からお届けします。
プログラムの詳細や参加者の声をお届けできるのを楽しみにしています。準備ができるまで今しばらくお待ちください。
【KOTOWARIのこれから】
「KOTOWARI 会津サマースクール」は色々な意味で初の試みでした。
科学技術や政治といった外側の問題に意識が向かいがちな環境問題は、逆に人間の意識や価値観の問題であると私たちは捉え直しました。
アメリカのリベラルアーツ思考や東洋的な内省、身体的な体験を通して、参加者がより自身の内面から、社会と自然とのつながりを見出すこと。そのことが環境問題を含む、人間の社会問題の根本的な解決となる。
このようなビジョンをもとに未だかつてない「環境教育」の枠組みを作り、クラウドファンディングのサポートをいただいたおかげで制約なく自由に、我々自身を含めた若い世代のための学びの場を企画、提供できました。
このプログラムの意味は参加後の若者たちの変化の中に如実に表れていました。答えのない問いに対しての向き合い方、その中での自分自身との向き合い方を、サマースクールの場を通して学ぶことができるという実証になりました。今回の成功は、活動を発展させていく意義と自信につながりました。
これからも「リベラルアーツ」「自然」「内省」を柱とした教育機会を、未来の社会を創り上げていく若い世代の問題意識と興味関心に届くよう、日本中の様々な地域に根ざした学びの場として提供していきます。その先にある真に「豊か」で「持続可能な」生き方と社会を想い描きながら。
みなさまの変わらぬご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。この度はご支援をいただき、改めてありがとうございました。
KOTOWARIスタッフ一同
(お問い合わせやメッセージはinfo@kotowari.co、または以上のSNSアカウントのDMまでお願いします。)