プロジェクト進捗状況のご報告
国立天文台水沢VLBI観測所が実施したブラックホール研究支援のクラウドファンディングにつきまして、皆様から多大なご協力をいただきましたこと、改めて感謝申し上げます。2022年12月をもって返礼品の送付や返礼イベントの実施が完了し、また、皆様からいただきました寄付金についても使途を決めて各種関連事業が動きだしております。皆様のご支援に基づく我々の研究活動はこれからまさに本格化するところですが、readyforにおける本クラウドファンディングの公式活動期間は本年末で一区切りを迎えますので、ここに現在の進捗状況を報告させていただきます。
<研究面の進捗のご報告>
皆様からいただきました資金について、以下の3つを柱として研究に活用することとし、それぞれの活動がすでに開始されていますので、ここに状況をご報告いたします。
1.ブラックホール研究を推進する若手研究者1名の雇用
水沢VLBI観測所に所属してブラックホール研究を推進する若手研究者(特任助教、任期3年)を採用することが国立天文台として正式に決まりました。2022年12月現在、来春の採用に向けて候補者の募集を行っております(以下の写真は、国立天文台で公開された公募文の一部になります。なお、通例に従い特任助教の公募文は英語となっております)。適任者には2023年4月以降の適切な時期に国立天文台水沢VLBI観測所に着任していただき、ブラックホールの観測研究の最前線で活躍していただきます。これによって、若手研究者の活躍の場が広がるとともに、この分野の研究が加速されることが期待されます。
◆ 2022年12月に始まった特任助教公募のアナウンス文の一部。
2.ブラックホール観測のための波長3mm帯の受信機開発
東アジアVLBI観測網の視力をさらに向上させてブラックホールジェットのより細かい観測を可能にするため、水沢VLBI観測所の秦和弘助教を中心に、波長3mm帯の受信機の開発を進めています。2022年12月には、水沢の電波望遠鏡のこの帯域での性能を評価するために、簡易型の受信機を設置して天体電波の受信試験を実施しています(以下の写真)。その結果、水沢の電波望遠鏡として3mm帯の天体信号の初検出に成功しており、今後のこの波長帯での観測実現に向けてはずみがついたところです。今後皆さまからの資金を活用して受信機開発と設置をさらに進め、将来的に東アジアVLBI観測網やグローバルなVLBI観測網で3mm帯の共同観測を実施し、ブラックホール付近のジェットの根本の様子を明らかにしていきます。
◆ 波長3mm帯の簡易型受信機による試験評価の様子:(上)VERA水沢局の受信機室における簡易型受信機の器台設置作業の様子。(下)設置された3mm帯の簡易型受信機。
3.若手研究者向け研究支援基金の設置
皆様からの支援をもとに、水沢VLBI観測所にてブラックホール研究に従事する若手研究者(ポスドク・大学院生など)の研究を支援する基金を設置しました。この基金から、ブラックホール研究に関わる観測所の若手研究者に、研究会参加の経費や装置開発の経費などを支援していきます。この支援によって育った若手研究者が、将来的な研究の担い手として成長していくことを期待しております。
<返礼品・返礼イベントのご報告>
返礼品の発送および返礼イベントの開催につきましては、2022年12月までに完了しましたのでここにご報告いたします。返礼品についてはその一部を以下の写真にて紹介します。南部鉄器(風鈴、おちょこ、コースター)の製作には、地元の南部鉄器工房である及富様にご協力いただきました。その他写真にありますように、サポーター証、ブラックホール手鏡、クリアファイル、観測所定期報告などを対象者に送付させていただきました(定期報告については2年間継続して発送いたします)。また、返礼イベントにつきましては、対象者向けに所長講演会を計2回、所長による観測所案内ツアーを計3回開催させていただきました。さらに、ホームページ上でのご芳名掲載(ご了承のあった方のみ)については、こちらに掲載させていただいております。
◆ 返礼品の写真(感謝状など一部の品を除く)
<収支報告>
皆様から頂きました貴重な資金につきましては、上述の活動のため、以下のような配分で活用させていただく予定としております。
=============================
総収入額 3023.7万円
=============================
特任助教経費 1750万円
受信機開発経費 250万円
若手支援基金 150万円
返礼品・広報経費 109万円
手数料(国立天文台) 251万円
手数料(readyfor) 514万円
---------------------------------------------------------
総支出額 3024万円
=============================
<今後について>
今回のreadyforにおけるクラウドファンディングの公式なプロジェクト期間は2022年12月をもって完了ですが、私たちの研究活動はまさに始まったばかりです。今後皆さまからの貴重な資金を活用してブラックホールの研究を加速させ、すぐれた成果を皆様にお届けできるよう頑張っていきますので、今後とも応援いただければ幸いです。
国立天文台 水沢VLBI観測所長
本間 希樹
2022年12月