岸田徹(きしだ・とおる)さんは、25歳のときに、胚細胞腫瘍の中の種類の一つである胎児性がんに罹患し、当時は頸部リンパ節、縦隔、後腹膜リンパ節などに転移しました。2012年10月から2013年7月までは、国立がん研究センターの中央病院で入院治療を行い、抗がん剤治療と二度の手術、2015年7月再発、そして後遺症を抱えながらも、現在は、当センターの広報担当、そして「NPO法人がんノート」という活動を行いながら、がん患者さんのリアルな声を発信し続けています。

 

今回は、「患者サポート研究開発センター」を、利用するような患者さんの視点から、ここがどんな場所に感じているか、インタビューをさせていただきました。
 

2015年、再発時の手術前日の写真


「相談したい…」そう看護師さんに伝えることで、当時は初めて院内のケアサポートがあることを知った

 

● 岸田さん、今日はよろしくお願いします。まずは、岸田さんの経験した病気と現在について教えてもらえますか。

 

僕のがんは、胚細胞腫瘍の中の種類の一つ、胎児性がんというものです。25歳のときに罹患しました。胚細胞腫瘍になる確率が10万人に約1人。そのなかの約5%と言われているようです。あるデータによると、当時5年生存率は、48%でした。

一度は復職したIT関連会社を退職後、30歳になった今は、結婚もして、3年前からここ(国立がん研究センター)の広報部門で非常勤で働いています。
 

● 岸田さんの入院当時は、まだ「患者サポート研究開発センター」は開設されていませんでしたが、似たような仕組みはあったのでしょうか。

 

当時、こういった体系だったセンターは、ほぼなかったと僕は記憶しています。ただ、今の患者サポート研究開発センターの前身になるような、各部で患者さんをバックアップする体制自体はありました。

 

当時は、こういうことで悩んでいる、そういう相談したい、ということを自ら言ってみて初めて看護師さんが考えて、それに対応できる、例えばアピアランス(外見)についてアドバイスしてくださる先生を、病室まで連れて来てくれるみたいな、そんな感じだったんです。
 

● 看護師さん経由で相談して、専門の方に病室まで呼んで来てもらう形だったんですね。

 

しかも、それも呼べるとか知らないんですよね。そういうサポートが存在するということ自体を患者さんが知らない状態でした。僕も、入院してからたまたま看護師さんに相談できることを知りました。

 

● サポートする体制があることは素晴らしいのに、患者さんが利用しにくい状態ではあったんですね。

 

患者サポート研究開発センターで、(中央病院で入院もしていた)肝未分化胎児性肉腫経験者の加茂あかりさんへのインタビュー生配信を行ったときの様子

 

やっと患者さんの治療だけじゃない部分に目を向けてくれる時代がきた

● 岸田さんは、ご自身の病気のあと「病気について語りあう場や学びの場」を持とうと活動を始めたのちに、「患者サポート研究開発センター」が開設されましたね。

 

そうですね、(患者サポート研究開発センターが)できるよってなった時、「ようやくこういうのが、病院内にできるようになるのか!」と、すごく嬉しく思いました。と言うのも、それまでは、がん患者さんが安心して立ち寄れる「空間」みたいなものって、マギーズ東京さんだったり、患者会や病院の外の方たちがやっていたりしていましたから。

 

病院主導でこれだけのスペースを設けて「治療を越えたがん患者さんのための空間・環境」って他にあまりないと思います。もちろん、病院なので治療が最優先ですが、ようやくこうやって患者さんの治療だけじゃないところに目を向けてくれる流れができてきたんだって、すごく嬉しく思いましたね。

 

● 「患者サポート研究開発センター」って患者さんにとって便利な部分を教えてください。

 

例えば、これまでは、アピアランス相談とかだと2階に行かないとない、他の相談は1階にとか…分断状態だったんですよね。アピアランス、栄養指導、術後のリハビリなど他のことも含めて、8階で完結するというのはありがたいですね。今までは相談していい場所が分かりにくいところにあったこともあって、ここに集約されることで患者さんが相談しやすい環境になったのは、非常に大きいです。

 

● 岸田さんはここで他にどんなことに関わっていますか。

 

僕も実際に参加させていただくこともある、患者サポート研究開発センターの「AYAひろば」では、実際に病室ごとに区切られてなかなか交流のない患者さんたちの話し合いの場が開催されます。例えば、「夜眠れない時はどうしてるの?」「会社にはどう言った?」「友人には全員に言うべき?」「食事どうしてる?」など、細かいようだけど患者さんの生活にとっては大きな不安の一つを話し合えるんです。医療だけじゃなくてふとした疑問も解消できるように、それを病院が主導的にやっていることが素晴らしいと思います。

 

※AYAとはAdolescent and Young Adultの略で「思春期および若い成人」という意味です。同じ世代で集まる場所ができたらとの思いで開催中。

 

 

患者サポート研究開発センターが病院・先生の「ボランティア」的部分も大きくあって運営されていたことに驚いた

 

 

あと僕、正直このクラウドファンディングが開始されるまで、相談にのってもらうこととか、他のことも、かなりの部分が病院の持ち出しだったってこと知らなかったんですよね。利益優先でっていう病院もきっとありますが、持ち出しでここまでサポートしてくれていたんだって、すごくありがたいと思いました。

 

診療報酬が付く付かないとかは、患者さんにとっては全然わからないものであって、正直こうやって相談にのってもらって、当たり前というか…、「相談のってもらってもらえてよかった!」で終わってしまって、コスト面とか全然考えてこなかったです。

 

利用者の4割以上も診療報酬付かずに無料で受けていた、先生たちがボランティアでやっているレベルだっていうのを、正直、知りませんでした。患者さんも知らない人の方が全然多いと思います。

 

● 先進的な取り組みだからこそ、国からのサポートがつきにくい…もう持ち出しでやるしかないと。

 

そうですよね。他の病院にも広がって欲しいんですよ。今は確かに「中央病院とかだと国からサポートあるから大丈夫でしょ」とか思われるかもしれないですけど、これを一過性のもので終わらせずに、全国の病院のスタンダードになっていかないと、とは思っていますね。

 

患者への多面的なサポートが続くようにっていうことを考えたら、今の患者もそうですけど、本当に病院の関係者だけじゃなくて、みんなが一丸となってサポートしていく必要があると思ってます。

 

● 「がん=死」というイメージを持つ人は多いと思いますが、今は「がんと共に生きていく時代」。そして「がんを治療すること」だけではなく「がんを治療しながら生活していくこと」を考えた場所・仕組みを持つ病院は、数少ないと思います。患者が必要なサポートを適宜受けられる場所を今後の日本のスタンダードにしていくためにも、是非、皆様にこのクラウドファンディングを応援頂けたらと思います。

 

 
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