皆様のご支援のおかげでプロジェクトが達成しました!!
【皆様のご支援のおかげでプロジェクトが達成しました!!】
この度は、スタインベルクピアノを修復するプロジェクトにご賛同いただき、こんな厳しい時代に暖かいご支援をいただき、皆様のお気持ちに改めてスタッフ一同、心より感謝を申し上げます。
2022年6月11日より始めたクラウドファンディング。
皆様より総額3,708,000円のご支援をいただき、Readyfor社からは、手数料と税金を差し引いた3,014,604円が入金されました。
【オーバーホール結果のご報告】
スタインベルク・ベルリン社がピアノを製造していたのは、1908年から1940年までの32年間であったため、世界でも現存する個体数はわずかだとされています。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団にもコンサートピアノが納入され、名指揮者として名高いヴィルヘルム・フルトヴェングラーも購入したピアノですが、創業者はユダヤ人だったため、ヒトラー政権下でイギリスに亡命。第二次世界大戦で貴重な資料も含め何もかも灰燼に帰しました。
日本国内でも、現状数台しか確認されていないまさに幻のピアノです。
当館にあるスタインベルクは、側板が大きく括れ、現在のグランドピアノには無い独特の設計をされています。
フレームには強度をギリギリまで追い込んだ大きな穴が開けられ、豊かな響きを醸し出します。
(修復前のスタインベルク)
調律ピンは剥き出しの板に直接打ち込んである手法でベルリンのベヒシュタインピアノと同様に珍しい構造です。
アクションのウィペン部は、現在スタインウェイが特許を持ち、国内メーカーも採用しているダブル・スプリングタイプとは異なり、シングル・スプリングタイプです。
(左がスタインベルクのウィペン部、右は現代ピアノのウィペン部)
以前の部品は、ガーデンあずみ野に展示してあるので、是非ご覧頂きたいと思います。
さて、すでにご報告いたしましたように、スタインベルクピアノは2022年2月、信州にあるガーデンあずみ野から神奈川県相模原にあるピアノを修理・修復する工場、「プログレス」社に搬入され、工場長である佐藤一夫社長が丁寧に解体し、部品の一つ一つをチェック。
交換が必要なものをなるべくドイツ製で、ということでドイツの業者へ発注をしてくださいました。
もっとも、傷んでいたのはピアノの根幹とも言える響板でした。
台風被害に遭い、一度水を被っていたため、響板は割れ、歪み、たわんでおり、これを全て新しく作り直し、交換しなければならなくなりました。
ところが、ここで問題が発生。
なんと、日本で響板を作れる工場が1ヶ所しかないというのです。
静岡県磐田市にあるシュヴァルツ技術研究所の中森社長が響板を作れる唯一の職人さんということで、中身を抜き取ったピアノの躯体は磐田市の工場へと運ばれました。
プロジェクトメンバーはこの工程がウォン・ウィンツァンさんのお披露目コンサートにちゃんと間に合うのか気が気ではなく、静岡の工場を訪ねることにしました。
突然お訪ねしたのですが、中森社長はピアノの状態を見せてくださって、響板も製作が進んでいることが確認されました。
これが8月下旬のことです。
響板はとても微妙で繊細な部品で、クラウンと呼ばれる中央が4ミリのふくらみがあり、これをしっかりと維持しなければならない、とのこと。
湿度の多い日本の夏は乾燥したドイツで作られたスタインベルクにとって厳しい環境です。
中森社長は錆びた釘を一本一本抜くだけでとても時間がかかったことを説明してくださいました。
期限に追われながらも、昔ながらの職人魂の持ち主、中森社長はきちんと仕事をしてくださいました。
この工場は2022年末で閉じてしまうとのこと、本当にギリギリのタイミングで私たちのスタインベルクは救われました。
相模原のプログレス社に戻ったピアノは今度は佐藤社長によって、鍵盤の一つ一つ、弦の一本一本が張り直され、調整されるという工程に入りました。
これがまたとてつもなく微妙で細かい作業です。
ピアノの躯体が少し歪んでいるので全体のバランスをとりながら作業を進めていくと、こっちが合えば、あっちが狂うということの連続だったそうです。
オリジナルの鍵盤は象牙でしたが、部分的に剥がれてしまっていたため象牙を外して、コーティングし直しました。
音がよりよく響くように響板にはバイオリンに使う高級な自然素材のニスを塗ってくださいました。
ピアノ本体も塗装し直され、ピアノブラックと言われる美しい光沢のある姿に生まれ変わりました。
何と言っても、修復前、塗装はひび割れ、ボロボロの状態だったのが、まるで「別人」のように美しく光輝く姿になりました。
ガーデンあずみ野に戻ってきたのは10月23日。
武蔵野ピアノの輸送スタッフが丁寧に運んで、組み立ててくださいました。
翌日は調律師の三井一信さんが調律を開始。
新しく生まれ変わったスタインベルクの音を探りながら弦を一本一本調整・・・この作業が延々と続きました。
新しく張った弦は調律しても、弾いたらすぐに狂ってしまうとのこと。
どんどん弾いて、狂いを調律して行くことを繰り返しながら弦が馴染んでくるそうです。
ウォンさんの演奏の前に再度調律し、コンサートの前日にはウォンさんとやり取りをしながら最後の仕上げをしてくださいました。
とはいえ、コンサートの当日も二日間に渡り、調律をし続けてくださったのです。
10月29日と30日はウォンさんのお披露目コンサートを開催しました。
三井さんの調律によって準備万端となったスタインベルクはようやく、観客にその音をお届けできることとなりました。
ウォンさんのコンサート。
その響かせた最初の一音で涙がこぼれそうになった、と参加者がおっしゃっていました。
それくらい、深い響きの、それでいてキラキラとした豊かな音色が会場全体に広がりました。
ウォンさんのコンサートでスタインベルクの蘇った素晴らしい音色を皆様に堪能していただきました。
ウォンさんの唯一無二の演奏、豊かな音楽性、そして暖かいお人柄、素晴らしいコンサートになりました。
参加者の皆さんはこんな独特の響きのピアノの音が聞けたこと、感動したと口を揃えて感想を伝えてくださいました。
演奏してくださったウォンさんも、これからこのピアノをいろんなアーティストが弾いてくれることでピアノ自体もどんどん育って行く可能性を語ってくださいました。
そして、なんと一年に一回はこのピアノでコンサートをしようと提案をしてくださったのです!
こうやって、私たちのスタインベルクピアノを修復するためのクラフドファンディングプロジェクトは全てのプロセスを達成することができました。
関わって、ご尽力くださった全ての方に感謝しかありません。
ついに、ピアノは無事に修復され、新たに蘇りました。
これから、もう100年、多様なアーティストによって演奏され、豊かな音をより一層深め、広げて行くことが可能となりました。
ピアノ自身が一番、喜んでいると私たちは感じています。
こんな素晴らしい結果が出せたのもひとえに皆様のご支援のおかげです。
ご報告できることが何より嬉しいです。
そして、スタインベルクピアノとメンバー共々、改めて心より感謝を申し上げます。
ありがとうございました!!
【収支報告】
皆さまからご支援頂いた資金は、
スタインベルクピアノの修復とお披露目コンサート開催の費用、
そしてリターン品の経費に使用させて頂きました。
詳細は以下の通りです。
皆様からのご支援(Readyfor社から受け取った額) 3,014,604円
スタインベルクピアノ修復費用 3,098,420円
リターンのための経費 364,921円
コンサート開催費用 250,818円
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計 ▲699,555円
【今後の情報発信について】
これからスタインベルクピアノがどんなアーティストによって演奏されるのか、その様子やコンサートのご案内などこれからも、お知らせをさせていただきます。
これからも、スタインベルクピアノを見守っていただき、引き続き、応援をよろしくお願いします。
何よりも、ぜひ蘇ったピアノに会いに来てくださいね!!
幻のピアノ・スタインベルク再生プロジェク@信州安曇野
プロジェクトチーム一同より