"命を守る"防災教育の加速へ。未来の災害に140年の教訓を。

日本赤十字社東京都支部

防災業務課　若松　大輔　　

過去の派遣先：東日本大震災　岩手県釜石市・大槌町

発災から約１カ月たったころ岩手県釜石市へ派遣されました。東北自動車道では、一部道路に段差があったものの何事もなく、高速を降りてからも特に震災の爪痕を感じることはありませんでした。

翌日、災害対策本部にて活動の会議を始めた矢先、震度６強の余震が発生し岩手県の２／３が停電しました。救護所のある釜石市へは信号が止まっている中、車を走らせました。そんな中「ここから津波浸水想定区域」の看板を境に景色が一変しました。

泥、がれき、流された車、傾いた家を目の当たりにし、言葉が出ませんでした。更に山の中のトンネルを抜けて大槌町に入ると、今度はすべて波にさらわれていました。ここに住んでいた人たちはどうすれば助かったのだろう・・・そんなことを考えながら避難所に向かいました。

避難所となっている旧釜石市第一中学校の校庭と鈴子広場という場所に仮設診療所を設置し、医療救護にあたりました。当時の私は、初めての被災地派遣ということもあり、「自分には一体何ができるんだろう」「被災者の方のために何ができたのだろう」という思いで無我夢中で支援にあたりました。

東日本大震災の救護２日目で診た傷病者は13名と少ないが、2018年3月時点での人的被害は死者15,896人、行方不明者2,539人、負傷者6,159人。死者の９割は津波による即死でした。生きてさえいれば救うことができるが、亡くなった人を生き返らせることはできない。だからこそ、けがをしないため、自分の身を守るための知識と技術の向上、そして周りと助け合える関係作りが必要です。

また、被災した経験や災害の惨状を実際に見たことがない方は、時間とともに意識が薄れていってしまいます。赤十字の防災教育は知識、技術に加えて防災意識を向上させるプログラムを行っています。また、自主防災セミナーでは「共助」に役立つセルフケアセットとストレッチャーを自主防災組織等に配付し、周りと助け合う関係づくりの一助となっています。

来る首都直下地震に備え、都民一人ひとりの知識と技術のみならず、防災意識を向上していくために、この防災教育プログラムの推進がとても必要です。今後も赤十字ならではの防災教育やセミナーを進めてまいります。