3月7日【岩手県大船渡市 山火事 緊急支援】一部地域の避難指示解除を発表。その瞬間とこれから

5日から6日にかけて降り続けた雨は山火事の延焼を食い止める恵みの雨となり、鎮火に向けて大きく前進。3月7日には一部地域の避難指示解除が発表され、避難所内には「よっしゃー」という声が広がりました。帰宅が許された方々は準備に追われる一方で、「うちはまだ帰れないのか……」と静かに時間を過ごす方の姿も。これで被害状況が明らかになっていきます。空撮などによってすでに住家も含めた約80棟の建物が山火事の被害を受けていることが報告されており、避難生活の長期化にともなう支援がこれからは求められます。

一部避難所を閉鎖。卒業式に向けた準備も始まる

2月26日、大規模な山林火災に見舞われた岩手県大船渡市は、およそ2週間続いた乾燥注意報が発表される気象状況等も影響して延焼が止まらず、被害は拡大。2900haにもおよぶ地区が焼失し、市は1896世帯4596人に避難指示を発令。市内に設けられた12の避難所に1200人を超える方々が避難生活を強いられ、そのほかに3000人以上の方が自宅に帰れない不安な日々を過ごしてきました。

この日、発表された避難指示解除の対象は、赤崎町宿・後ノ入・大洞・生形・山口・森っこ地域の957人。卒業式を控えた学校に開設された一部避難所の閉鎖も予定され、これからは避難者の帰宅準備とともに、式に向けた片付け等などの作業も進められます。避難所支援を行ってきた空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”のメンバーは、避難所運営者からの相談を受け、高校生ボランティアらとともに撤収の作業もサポートする予定です。

一方、明日以降も約1000人の方々は、もう少し避難所生活が続くことになります。被害状況がこれから明らかになっていくなかで、避難生活が長期化する可能性もあり、引き続き健康管理とともに、避難生活が続く方々への心のケアも必要になっています。

現在、大船渡市の保健・医療・福祉・介護調整本部（7日より「大船渡地域調整本部」と改名）には空飛ぶ捜索医療団をはじめ、日赤やJRAT、ICAT、DWAT、DCAT、歯科医師会ら災害支援に関わる関係団体が参集し、互いに連携して地域の健康を守る活動をおこなっています。

空飛ぶ捜索医療団は、市の大きな支援ではカバーしきれない細かいニーズを拾い上げ、関係各所と連携しながら主に避難所の環境改善の支援を中心に活動。その避難所を巡回中に、避難者とともに空飛ぶ捜索医療団のスタッフも避難指示解除の発表を聞きました。

発表をストーブの前で聞いていたふたりのおばあちゃん。避難所で知り合い、偶然同じ歳だったこともあって意気投合し、この1週間を互いに励まし合いながら過ごしてきたそうです。しかし、1人は避難解除が発表された地域、もう1人はまだ避難解除が出ていない地域の方で、ストーブの前で一緒にテレビを見て過ごすのはこの日が最後になりました。それでも……

「電話番号を交換したりはしなかったけれど、町でふらっと会えたら嬉しいね」と最後のラジオ体操を一緒に楽しみ、「またねぇ〜」と笑顔でお別れする姿がみられました。

また、先日のレポートでも紹介した、段ボール隊長に任命された成年のご家族は、避難指示が解除された地域の方で、おばあちゃんと一緒に帰宅準備に追われていました。

災害支援では、活動を通してさまざまな方々との出会いもあります。市では、まだ「復興0日目」とし、ようやく見えた鎮火に向けた今後の対策が進められていきます。空飛ぶ捜索医療団もその一員として、ひとりでも多くの避難者や被災者の声を聴きながら、復興支援をサポートしていきます。