青春時代に憧れたアメリカの文化と現在の姿を多くの仲間に!!!

　1960年代テレビが普及し、アメリカのTV番組を通してルート66・名犬ラッシー・スーパーマンなど豊かなアメリカの生活文化が身近になった。特にルート66、シカゴからサンタモニカ（ロス近郊）に続くハイウェイを舞台に、若者二人によるスポーツカー旅番組は憧れの極致でした。今回の我々のアドベンチャーツアーは、まさに当時憧れたそのアメリカを自力で横断して見せようとの企画でした。新聞公募による全くの他人同士人9人、それも平均70歳に限りなく近い老年者グループです。それぞれ力を合わせ、幾つかのトラブルやコロナ禍を乗り越えて無事成功した顛末を、紀行と合わせ写真エッセイにして多くの人と感動を共有しようとの規格に熱き想いを寄せるものです。

　特に私事での一番の思い出は、二車線の細い山道で遭遇したどでかいコンボイの連結したトレーラーの後部車輛がコーナーで膨らんできて我がモーターホーム左側ミラーが吹き飛ばされたことです。センターラインではなく、右側のライン（路肩側）を気を付けてトレースして運転していたので恐怖はありませんでしたが、そこそこの衝撃を感じたもののその一瞬は何が起きたのか理解できませんでした。しかし、アメリカではこの程度は事故扱いされないとのことでしたが、その後応急修理をするまでは大変気を使い神経を研ぎ澄ましての運転に終始しました。

　二番目は、憧れのヘミングウェイの聖地キーウェストを経て、アムトラックでニューヨーク入りし、夜中に繰り出したタイムズスクェアでは好戦家を喜ばす映画『トップガン・マーヴェリック』の巨大な広告塔一方で路傍に佇み支援を求める人たちが同居していたことでした。これこそが先進資本主義国家アメリカの象徴なのだと感慨を持ちました。そして帰国してみれば「岸田政権による安保3文書閣議決定、日米が一体で適基地攻撃が可能」、そしてそのための増税論議。インフレによる実質賃金の目減り、貧国化進む…。タイムズスクェアではこれがアメリカかとの感慨でしたが、今となっては戦争も貧困も日米一体のものであると思わざるを得ません。

　そして三番目は、政治的なことはともかくこのツアーでの困難に出会った時のアメリカ人による「無言の人助け行為」に助けられたことです。我がモーターホームがスタックした時には、自分のことをさておいて多くのアメリカ人のヘルプを受けました。無償の互助の精神はアメリカ人の文化なんだとの感動をおぼえたことです。

　思い返せば鮮明に甦るこの感動を、リアリズム写真家を自認する我が写真とともに感性豊かなエッセイと合わせ、そしてアドベンチャーチーム全員の想いのこもったこの本を世に出すプロジェクトに、73年の人生をかけて取り組むものです。このプロジェクトにご支援をお贈りいただく多くの方々に感謝を込めて御礼致します！

民藝を愛するドキュメントカメラマン　　高林　順