【出品者紹介】横山純子さん（写真家）

「青砥青写真研究所（AOAOLAB.）」オープン記念企画展『青写真を描く！ 現在の青写真展 2025』に出品の横山純子さんを紹介します。

 

横山純子さんは、暮らしの中にある植物の影の青写真を集めた作品『野集』は、サイアノタイプ（Cyanotype）で制作された青写真です。

 

植物の青写真というと、最古の写真集のひとつで名高い、英国の植物学者、写真家のアンナ・アトキンス（Anna Atkins 1799-1871）が1843年に制作した少部数の私家版、植物標本集『British Algae: Cyanotype Impressions』を想起させます。サー・ジョン・フレデリック・ウィリアム・ハーシェル（Sir John Frederick William Herschel 1792-1871）が発明した、サイアノタイプ （cyanotype）の技法を用いて、アンナの父が科学者でもあったことから幼少期から植物や貝などの自然物に触れ収集する機会があり、のちにそれらを焼き付けた青写真をまとめたものです。

 

アンナ・アトキンスは標本としてのアプローチで青写真を制作しましたが、横山さんは、その場に生きる植物を刈り取ることなく太陽光の向きや強さをリサーチしてその存在を写し撮ります。

 

横山さんは、自分自身の作品について以下のようにテキストを送ってくれました。

 

 

作品について「野を集めたフォトグラム＆サイアノタイプ」：

 

日々のなかで野を感じて気になる植物をモチーフに、その場でフォトグラムの技法により写しとったサイアノタイプです。私は以前から植物愛が強く、その生態を知れば知るほど、人知の及ばない循環する自然を強く意識するようになりました。それはすべての生命と重なり合います。私が写しとろうとしているのは、そういった人の力とは異なるところで営まれる時間、自然の摂理なのかもしれません。
私は自分で薬品を塗った感光紙を用い、太陽光により10分前後かけて撮影しています。カメラを用いずにフォトグラムで写しとった画像には青のグラデーションで光の痕跡が残っています。綿々と繋がってきた植物の時間に僅かながら寄りそって、人の視覚では捉えられなかった姿を紙の上に定着しています。

 

 

 

メッセージ：

 

ものつくりの音や気配のする葛飾に、青写真研究所が始動する事は画期的です！青写真1枚にはプロセスごとの変化の驚きと楽しさがあり、目を凝らしていると感性が研ぎ澄まされるようです。それを探求、共有できることを楽しみにしています。

 

 

ぜひ、横山さんが撮影した植物の青写真を観に展覧会に足を運んでいただければ幸いです。

 

 

 

横山純子：プロフィール

埼玉県生まれ
女子美術短期大学造形科グラフィックデザイン教室卒業　放送大学教養学部人間と文化コース卒業。
グラフィックデザイナーを経て、女子美術大学で助手、講師として美術教育に携わった。2007年からフォトグラムによる表現に取り組み、近年はフォトグラムによるサイアノタイプの作品の発表を行なっている。2021年よりギャラリーヨクトメンバー。作品は女子美術大学美術館に収蔵されている。