箱バルの建築担当の富樫です。 箱バル不動産では現在「函館移住計画」と題して、函館に移住体験をしていただくモニターを募集しており、8月10日の締め切りまであと1週間を切りました。「函館移住計画」は今年で3回目となりますが、毎年どんな出会いがあるかワクワクドキドキして締め切りを待っています。 →「函館移住計画」の詳細はこちら
函館移住計画の舞台でもあり、僕たちの暮らす函館の西部地区は『伝統的建造物群保存地区』(以下、伝建地区(でんけんちく))に指定されています。

函館山の裾に広がる西部地区
函館山の麓に広がる西部地区


伝建地区?と聞くと、倉敷や京都や白川郷や川越など何となく統一された様式の景観で、観光地化されたイメージをしますが、函館の伝建地区はちょっと違います。和風であったり洋風であったり、それが上下に合わさった和洋折衷様式だったり、その顔ぶれはとてもバラエティー豊かなんです。そうした建物が普通に暮らしの中で使われ、それが連続するのではなく函館山の麓である西部地区の広範囲に点在しているのが特徴です。
 

左に「金森赤レンガ倉庫」突き当たりに「カリフォルニアベイビー」があるベイエリア

今では古い建物を活用するリノベーションが流行っていますが、函館では1976年に旧特定郵便局をリノベした「カリフォルニア・ベイビー」を皮切りに、僕の生まれた1980年に函館相生教会がレストラン&土産店「元町マリンハウス」、1983年旧函館郵便局がユニオンスクエア(現在の「はこだて明治館」)に、1988年に「金森赤レンガ倉庫」が商業施設として活用されるなど、全国的に見ても函館はリノベの先駆けだったようです。 そんな街であっても、バブルとともに開発が進み、マンションが次々と建設され、多くの歴史的な建物が失われ、今も姿を消しゆく建物が後を絶ちません。そんな状況をどうにか変えたいと、僕自身の建築家としての独立をきっかけに築80年の和洋折中の古民家を買い取り2年半の歳月を掛けハーフセルフビルド「常盤坂の家」を自宅兼事務所としてリノベしました。 それ以降、旧松橋商店を「港の庵」として復元するなど、さまざまなリノベを手掛けさせていただいています。そんな中で蒲生くんと出会い、この街の日の目を見ない埋もれた古民家をどうにか再生し、その空き家を活用して移住体験してもらおうと盛り上がり、トンボロ苧坂夫婦の協力を得て「函館移住計画」を企て誕生したのが箱バル不動産でした。

2015年に「函館移住計画」をキッカケに結成した箱バル不動産

その活動を通じて相談があったのが、大三坂ビルヂング(旧仁寿生命(大正10年築))の建物でした。箱バルメンバーだけでなく地域の多くの人に愛され気に掛けられていた特徴的な建物。

改装前の「大三坂ビルヂング」。外壁や土蔵の土が崩落し危険な状態であった

大三坂ビルヂングはユーゲントシュティール様式の白いスタッコ塗りの事務所棟と、土蔵、さらに奥に続く古民家という大きく3つに構成されていました。洋風の中でもウィーンで昇華したユーゲントシュティール様式は柔らかい曲線美と幾何学的な文様などが特徴的で、坂下から見える建物の角を象徴的に丸くしています。ちょうど学生時代にバックパックでヨーロッパなどを回っている際に立ち寄ったウィーンで目を引いた建物を思わせるものでした。

創建当初の姿。関根要太郎研究室@はこだてより

この建物をどう活用し未来へ引き継いでゆくか。それを考える中で重要だったのが、自分たちの原点でもあった「函館移住計画」でもありました。函館に来てもらった旅人と地域の人が交流でき、函館らしい暮らしも体験してもらい、そのおもてなしをコーディネートできたら移住へと繋がるきっかけになるのではないか。そう考え、その入り口になる宿「SMALL TOWN HOSTEL」を自分たちでやりたいと思いました。 古民家の部分を宿に、伝建でもある事務所棟と土蔵を地域と交わるカフェや物販店などのテナントビルに再生しようと始まったこのプロジェクト、そのリノベーションもそろそろ佳境に入ります。 昨年末に事務所棟の外壁が崩れ、土蔵の壁上部の蛇腹が崩落し、応急処置でシートやネットで押さえていました。今年2月から宿の工事を始め、5月から本格的に事務所棟や土蔵の修復工事が始まりました。事務所棟は雨漏りが激しく一部の土台、柱と梁が腐ってなくなっており、はっきり言って崩落寸前の状態でした。

事務所棟の外壁を剥がした状態。柱も梁も跡形もなく消えていた
柱や梁は新しく入れ替えた
ボロボロになっていた漆喰のレリーフも復旧
そして左官屋さんが外壁をモルタルで復旧する
スタッコ塗装で綺麗にお化粧中

土蔵も瓦が割れて雨漏りしており、土壁も触るとボロボロと崩落する状態でした。事務所棟は建物の約半分を解体しスケルトン状態にしその他の部分も内部をすべてバラす状態、土蔵は屋根を下地まですべて撤去する大掛かりなものとなりました。

瓦を降ろし、崩落した蛇腹を解体
原寸図を起こしながら下地から全て大工さんが復旧
そして左官屋さんがモルタルを塗って形を再現してゆき最後に漆喰で仕上げる
いよいよ瓦屋さん。3色の瓦でランダムに自然な風合いを出しながら葺いていく
鬼瓦も復元し、影盛りという装飾をこれから仕上げていく

そんな状態だったのですが、施工の山建中川組の大工さんや左官屋さん瓦屋さんたちの奮闘のお陰で、仕上げまでもう少しの状態です。宿も間取り変更、断熱改修し窓も部分的に入れ替え、内装もDIYサポーターのお陰様でもう一踏ん張りのところに来ましたが、まだまだ皆様のお力が必要です。

現在の大三坂ビルヂングの様子。足場が取れるのが待ち遠しい

今年の「函館移住計画」で移住体験してもらう方にも、西部地区の空き家で暮らし体験をしていただき、宿のDIYサポーターにも参加していただいたり、地域の小商いや暮らしを見てもらうツアーを行ったりします。いずれ、この街が好きになり移住へと結びつき地域に根付いてくれることを願っております。

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