"安全安心"の、スポーツによる健康社会づくりを目指して｜大阪大学

本プロジェクトのテーマは「安心安全の、スポーツによる健康社会づくり」です。

前回の「双子研究」に続いて、「身体活動量と健康」に関する最近の話題をご紹介します。

時代は、歩数よりMPA

「健康のために運動しましょう」「Exercise is Medicine（運動は薬)」などとよく言われます。COVID-19による行動変容を余儀なくされた際には、身体活動量維持を啓発するキャンペーンが全世界でなされました。それでは、どのような目標が適切なのでしょうか。我が国には「万歩計」という登録商標が存在し、歩数による目標設定がイメージしやすいですが、世界的にはコンセンサスを得た新たな基準が用いられています。世界保健機関（WHO）とアメリカ心臓協会（AHA）のインフォグラフィックスには、150という共通の数字が存在します。これは、一週間に150分以上の中強度身体活動（Moderate-intensity Physical Activity；MPA）を行うことを推奨するというものです。運動強度の単位としては、安静時の消費カロリーを1とするMETsが従来よく使用されますが、MPAは3METs以上の運動強度での身体活動を指します。

ウェアラブルセンサーデバイスによる身体活動量計測

このような質的・量的な情報を含む基準の達成を目指すために活用されるのが、スマートフォンに代表されるウェアラブルセンサーデバイス（WSD）による計測です。当研究室で健常ボランティア301名を対象とした結果（Inaba R et al., Sci. Rep. 2021）からは、活動強度で区分した定量において、歩数はMPAと強い相関（r=0.814）を示す一方で、その他の強度の身体活動時間との相関は弱いことが示されました。また、対象者のおよそ80%のカロリー消費は、歩行や移動を伴う活動よりも「household(生活活動)」動作で多いことが分かりました。WSDによる質的な情報を伴う身体活動量計測が、歩数計測からでは得難い日常生活上の身体活動評価を可能とすることがよく分かります。

質・量を加味した身体活動定量の情報取得が誰でもいつでも可能となり、

その情報を健康促進、健康寿命の延伸に活用できる、

そのような社会を、本プロジェクトでは目指します。