【第11弾】蘇る六代目の舞台、小津安二郎『鏡獅子』を次世代へ。

支援総額

4,494,000

目標金額 4,000,000円

支援者
290人
募集終了日
2022年10月26日

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2022年10月26日 15:49

終了まであと少し&IMAGICAさんのスキャン作業ご報告

松竹大谷図書館の武藤です。

 

プロジェクトの支援募集終了まで、いよいよあと7時間となりました!本日も引き続きご支援を頂いておりまして、初日から最終日までのこの50日間の皆さまの温かいご支援と応援に本当に励まされております!

 

支援募集期間はそろそろ終了しますが、皆さまからのご支援により蘇らせることが叶った、この貴重な映画『鏡獅子』のデジタル修復作業は、これから本格的に始まります。今後デジタル修復のご報告や作業の進捗はこの新着情報でお伝えしてまいりますので、引き続きお見守り下さいますよう、どうぞよろしくお願い致します。

 

さて今回は、株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービスさんにおける作業のうち、フィルムを専用フィルムスキャナーでスキャンして4K解像度でデジタル変換する「スキャン作業」についてレポートを頂きましたのでご紹介いたします。

 

ビネガーシンドロームによる劣化が進んでしまい、スキャナーに掛けることができるかどうかギリギリの状態だったあのフィルムが、はたしてどのような手順でスキャンされたのか? 株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービスさんの職人技、ぜひご覧ください!

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

   『鏡獅子』デジタル化作業の紹介(スキャン作業とは)    

 

【1】フィルムチェック 

 映画フィルムは比較的大きなフォーマットである35㎜フィルムでも、横幅が35㎜(3.5cm)しかありません。また、経年劣化により、コシがなくなり、強度が弱くなっていたり、長い年月使用される中で、つなぎ目が弱くなってしまったり、端の部分がかけていることもあります。そのため、いきなりスキャナーや映写機にかけると、機械のテンションで、フィルムが破損してしまったり、機械を破壊してしまう可能性があります。そのため、すべてのフィルムは機械にかける前に技術者の感覚を使ってチェックされ、物理的な修繕作業を行います。

<パーフォレーションの欠損の修復>

 

 劣化した古いつなぎ目や、パーフォレーションと呼ばれるフィルムを駆動させるために必要な穴に欠損があると、そこからフィルムが裂けてしまう可能性があります。そういった症状を発見するため、技術者はすべてのフィルムを巻き取りながら、手の感覚で問題がないかチェックします。

<古いつなぎ目>

 

 技術者は手動リワインダーを使用して巻き取りながら、フィルムに根付いたカビや汚れ、付着物、キズ、ムラなどを指先と目でチェックします。

<ムラ>

 

 技術者にとっては、鼻も重要な道具です。
 支持体がアセテートという物質で作られているフィルムは、経年変化により、変形やカビの発生、あるいはフィルム自体から発生する酢酸による自家中毒=ビネガーシンドロームという症状が発生していきます。この症状が発生したフィルムからは、とても“すっぱい”においがします。

 

 このビネガーシンドロームは一度発症すると、劣化を止めることはできません。症状が進行すると、フィルムの溶解や固着が始まり、中身の映像や音声が取り出せなくなってしまいます。そのため、一刻も早くデジタル化やフィルムの複製を作成して映像や音声を保存する必要があります。今回の鏡獅子もビネガーシンドロームが進んでいました。ADストリップと呼ばれる酢酸濃度を測定する資材で計測したところ、一番レベルの高い「3」という数値がでてきました。このままではもしかすると映像を救出することが難しかったかもしれない鏡獅子ですが、このタイミングでデジタル化をしていただけて、とてもよかったと思っています。

<ADストリップ>

 

 このように、手や目、鼻をつかってフィルムの状況を把握し、どのような機材を使い、どのようなアプローチをしていくかを検討します。

 

【2】修繕作業 
 チェックで見つかった問題の対象個所を、丁寧に修繕していきます。
破損の危険性がある壊れたパーフォレーションは、専用の補強テープで一か所一か所修繕します。古く劣化したつなぎ目も、断裂の危険があると判断したものは繋ぎ直し、補強していきます。

<パーフォレーション部分の破損>
<修繕に使用する道具たち>

 

 カビやムラ、アセテートフィルムの劣化による析出物の結晶は拭き取ったり、特殊な溶剤を使用して処置を行うことで軽減することもできますが、カビが根付いてしまっている場合は完全に除去できない場合があります。

 

<アセテートフィルムの析出物が結晶化してしまった症状を、溶剤で除去>

<Before>                                                <After >
<Before>                                                <After >
<Before>                                                <After >

 

<結晶除去機>

 

 『鏡獅子』のフィルムには物理的ダメージや変形等の症状が強く見受けられましたが、フィルムベース強度があったため、結晶除去効果の高い機材を使用して処置しました。その際、フィルムへの負担を抑えるため手動で巻き取りながら、変形がある箇所はその形にブレードの開きを合わせた上で、フィルムへのブレードの当たりを位置調整をおこない、結晶を除去しました。

 

【3】クリーニング 
物理修復が終わったフィルムは、スキャニング作業の前に当社独自のクリーナーにかけられます。劣化状況や、付着物の状況により、使用するクリーナーはドライとウェットを使い分けます。今回は油汚れ等みられなかったことに加え、フィルムに変形やべたつき等の症状が見受けられたためドライクリーナーを使用しました。ドライクリーナーを使用することで、フィルムの表面についた細かいホコリなどを除去でき、次工程に良い状態でフィルムを渡すことができます。

 
 1959年製フィルムに関しては、極めて著しい劣化状態であったためクリーナーにかけることが危険と判断し、クリーナーについているホコリを除去するローラーをリワインダーに取り付けた別の装置で細かいゴミを除去しました。

<ウェットクリーナーマシン>
<ドライクリーナーマシン>

 

<シリコンローラーを使用したクリーニング>

 

【4】スキャニング 
 物理的な修復が終わったら、いよいよスキャン作業です。当社はスキャナーを4台所有しています。フィルムの劣化症状や、用途に合わせてスキャナーを選定していきます。

 フィルムのスキャンとは、フィルムの1コマに対し、1コマずつ画像化していく作業です。(スキャンされた画像は、DPXというファイル形式になります)映像データはせっかくフィルムが持っているたくさんの情報量を、どうしても圧縮する形になってしまうので、1コマ1コマ静止画として残していくことで、後工程に十分な情報を渡すことができ、修復やグレーディングで作業できる幅が広がります。
 今回のフィルムは劣化が進んでいたので、パーフォレーションにピンをかけず、フィルムに強いテンションをかけない状態で走行できる劣化対応スキャナーを使用いたしました。

<Lasergraphics社 ScanStation>

 

 『鏡獅子』は特にワカメ・カーリングと呼ばれるフィルムの変形の症状がひどく、破損のリスクがあるため、通常よりもスピードを落として収録をしました。症状がひどいフィルムの場合、スキャン中にフィルムの巻き取りがうまくいかずタケノコ状になってしまう危険があります。今回もフィルムを手で抑えながら丁寧に作業を行いました。

 

<わかめ/カーリング>

 

 それでも、カーリングに加えて収縮の症状もはじまっていため、フィルムの安定的な走行を保つことが難しく、スキャン途中にフレーミングのズレが生じてしまい、1回のスキャンでは正しく画像をとらえきることができませんでした。そのため、複数スキャンを行い、デジタル上で編集をしてひとつのデータを作りました。

 

<慎重な作業の様子>

 

 あまりに劣化が進んでいたので、アーカイブコーディネーターの私自身も正しくデジタル化ができるか、やってみなければわからない部分もありましたが、あきらめずにゆっくりフィルムに向き合っていくことで、無事デジタル化に成功いたしました!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

いかがでしたか?スキャン作業前の細かいチェックで、ビネガーシンドロームや経年により劣化したフィルムがどのような状態になっているのかと、その修繕作業について、そしてクリーニング作業についても詳細にご説明頂きました。4Kデジタルスキャン作業に入るまでの技術者の方たちのチェックと手作業が素晴らしいですね。機械やデジタル技術が進んでも、技術者の方たちの手と鼻の働きを欠く事は出来ないのです!

 

この素晴らしい技術のおかげで、「ワカメ」状態のフィルムから、無事4Kデジタル映像をスキャンしていただく事が出来ました。この映像がこれからどう蘇るのか!乞うご期待下さい。

リターン

3,000+システム利用料


alt

活動報告+サンクスメール+HPにお名前掲載

■サンクスメール
■松竹大谷図書館HPへのお名前掲載(ご希望の方のみ)
■報告書(2023年4月末に送信予定)

申込数
63
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2023年4月

5,000+システム利用料


松竹大谷図書館オリジナル文庫本カバー『鏡獅子』完成台本表紙デザイン

松竹大谷図書館オリジナル文庫本カバー『鏡獅子』完成台本表紙デザイン

3,000円のリターンコース内容に加え、
■松竹大谷図書館オリジナル文庫本カバー
当プロジェクト限定!
当館所蔵『鏡獅子』完成台本(昭和25年編集版)表紙デザイン

申込数
95
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2023年4月

3,000+システム利用料


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活動報告+サンクスメール+HPにお名前掲載

■サンクスメール
■松竹大谷図書館HPへのお名前掲載(ご希望の方のみ)
■報告書(2023年4月末に送信予定)

申込数
63
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2023年4月

5,000+システム利用料


松竹大谷図書館オリジナル文庫本カバー『鏡獅子』完成台本表紙デザイン

松竹大谷図書館オリジナル文庫本カバー『鏡獅子』完成台本表紙デザイン

3,000円のリターンコース内容に加え、
■松竹大谷図書館オリジナル文庫本カバー
当プロジェクト限定!
当館所蔵『鏡獅子』完成台本(昭和25年編集版)表紙デザイン

申込数
95
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2023年4月
1 ~ 1/ 7


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