プロジェクト終了のご報告と今後の活動について
「漱石の肉筆を後世へ!漱石文庫デジタルアーカイブプロジェクト」は、令和2年12月25日をもちまして事業期間を終了いたしました。あらためまして、ご支援いただきました皆様には心より御礼申し上げます。
以下、本プロジェクトについてご報告いたします。
当プロジェクトにお寄せいただいた資金は、READYFOR株式会社への手数料(15%+税)と、東北大学の基金事務局への支出(10%)を除いた3,444,945円を全額、このデジタル化事業のために使用いたしました。以下が主な支出用途となります。
・自筆資料(および周辺資料)電子化:1,865,600円
・蔵書電子化:74,800円
・マイクロフィルムコンバート機器一式:1,312,850円
・消耗品(撮影時に使用した保存紙、文書箱、保存袋など):191,695円
おかげさまで、当館が所蔵する夏目漱石の自筆資料および周辺資料(漱石宛書簡、弔辞、漱石を偲んで詠まれた短冊など)792点と蔵書1点(全部で7,620コマ)についてデジタル化を行い、データベースで公開いたしました。
https://www.i-repository.net/il/meta_pub/G0000398tuldc
なお、今回公開しているデータベースは暫定のものです。当初は新しいデータベースでの公開を計画していましたが、サービス開始が大幅に遅れているため、まずは従来から使用しているシステムで公開いたします。新データベースへ移行する際には、あらためてこの新着情報でご報告いたします。
データベースの利用方法については、以下を御参照ください。
https://readyfor.jp/projects/soseki-library/announcements/154350
寄付者の皆様へのリターンについては、グッズ類については全て発送を終えました。
しかし、予定していました特別展示会、特別報告会については、コロナ禍のため、延期せざるを得ませんでした。こちらについては、状況をみながら今後の開催を検討させていただきます。
書き入れ資料のデジタルアーカイブ化については、マイクロフィルムのデジタルコンバートで対応いたします。画像公開については、準備が出来次第、随時公開していきます。
データベースでの公開について、先にも書いたように現在のサーバーは暫定です。国際的なスタンダードであるIIIFに対応した形での公開は、プラットフォームの準備が整い次第、順次行います。公開状況につきましては、逐一、このプロジェクトページの新着情報や、当館HPにてご報告させていただく予定でございます。
今回のプロジェクトを通じて、通常の図書館業務の範囲内では接点がなかなか得られなかった方々からも、思いがけず大きなお力添えをいただくことができました。全国にこんなに私共の事業を応援してくださる方々がいらっしゃること、大変大きな励みになりました。
東北大学附属図書館は、今後も一層、貴重な資料の保存と活用を進めると共に、皆様にその魅力をお伝えしていきたいと思います。
最後に資料を一点ご紹介いたします。こちらは、漱石の最後の漢詩です。
https://www.i-repository.net/contents/tohoku/soseki2/SK26-015/SK26-015_00040.jpg
晩年の漱石は、『明暗』を執筆しながら、午後は漢詩を作るのが日課となっていました。このノートに毎日のように書き付けられていましたが、大正5年11月20日の夜、この漢詩をもって終わっています。漱石は翌月の9日に逝去しました。
(最終聯)
「眼耳 双(ふた)つながら忘れて 身も亦た失い / 空中に独り唱う 白雲吟」
(見ること聞くことをともに捨て、わが肉体をも忘失する境地 / 空中に ひとり唱える、白雲の仙郷の歌)(書き下しと意味は『漱石全集』第18巻 (2018)による)