【自由民になりたいラジオ：配信レポート】第12回「学び合う手法としてのアート」

◆「アートは誰のもの？」 コンプレックスは「可能性」である

「アートのためのアートには興味がない」と語る西尾さん。その活動の根源には、芸術より先に「人」への興味があると言います。誰もが日々行っている「装い」と同じように、アートもまた、すべての人がすでに参加している実践なのです。

青木さん：  アートって内在的なものであって、自分がどう見るかとか、自分がどう感じるかっていうことであって。でも社会ってそれだけじゃなくて、その外から見てどうかっていう、みんなはどう思うかっていう視点な気がしてて。（中略）一緒にそれをやってるって、結構今だと…言われてることだとは思うんですけど、でも僕そんなに、これをちゃんとやることって、そんなに当たり前じゃないような気がするんですけど。

西尾さん：芸術より先に人に興味があるというか、人と人の違いに興味があるっていうところがあって。（中略）何かが優れてるからアーティストになるっていうわけじゃなくて、美術の分野で言うと、人と違うことがあると、やっぱ認められる世界なので、コンプレックスであったりとか、自分が人と違って嫌だなと思う…ことの中に、実はすごい唯一無二のというか、可能性あるんじゃないかなみたいな興味もあるし。

劣等感や生きづらささえも、表現を通じて「自分を使い直す」ことで、面白い社会を創る力に変えられる。西尾さんの言葉から、アートが持つエンパワーメントの可能性が見えてきます。

◆   矛盾こそが面白い。「目的」から自由になるヒント

アートとプロジェクト、個人と社会、理論と感性。世の中は一見すると相反するもので満ちています。その「矛盾」をどう乗りこなし、付き合っていくか。そこに「自由」の鍵があると西尾さんは示唆します。

西尾さん： アートっていうのは、ビジョンを共有するもの。だけど、プロジェクトっていうのは、計画っていうことなんで、緻密に準備していく段階があると。（中略）アートとプロジェクトっていうのは、正直相性が悪いものの筈なのに、それが同居しているっていう。（中略）その矛盾の扱い方の、いろんな例を一緒に体験してもらうことはできるのかなっていう。

西尾さん： （アーティストたちの自由な活動は）特定の目的から解放されてるっていう。こうしなければならないからこれをするみたいなことじゃなくて、言ってしまえばやりたいからやるんだみたいなところによって成立している行為。（中略）そういう目的からさえも、自由になれるっていうのが、自由民なのかなっていうのを、すごく感じてますね。

「地域活性化のため」といった分かりやすい目的からさえも自由になり、「ただ、やりたいからやる」。その衝動にこそ、私たちを自由にする根源的なエネルギーが宿っているのかもしれません。