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2022年04月18日 22:37

金属の引張特性と硬さについて(詳細版)

金属の引張特性と硬さに関する詳細な説明です。長文となっているため,数日中に簡略化したものも掲載するように致します。

 

金属の強度特性

金属材料は強度や加工性に優れることから,日用品から機械や構造物まで様々な製品に用いられています。金属を用いて何かを造る際は,金属を曲げたり,叩いたり,削るなどして目的の形に変える加工性が必要となります。さらに,製品として使用する際は大きな力が掛かることが多いため,どの程度の力まで耐えることができるか?,という強度特性を予め調べる必要があります。この調査が不十分でその金属の限界以上の力が掛かると,その金属は大きく変形し,そして破壊してしまいます。製品中の一部が変形や破壊してしまった場合,その製品は当初の性能を満たすことができない故障した状態,あるいは大きな事故に繋がる可能性もあります。

 

金属の強度特性は様々なものがあり,引張特性,圧縮特性,延性,靱性,疲労特性,クリープ特性などがあり,その中で最も基本的な特性が引張特性となります。金属材料を造ったとき(あるいは使うとき)には,ほぼ必ず測定される性質となります。

 

引張特性と材料の変形

引張特性は文字どおり引張った時の性質となり,丸棒や板状のサンプルの両端を掴み(端部の形状はやや大きめ),「引張る時の力」と「引張ることによって生じたサンプルの伸び」を測定します。これによって,その材料がどの程度の力まで耐えることができるのか?,そしてどの程度変形できるか?を定量的に評価することが可能となります。しかし,サンプルのサイズによって耐えられる力や伸びる量は大きく変化してしまいます。そのため,引張った時の力を中央の断面積で割った“応力(Pa)”,そして伸びた割合の“ひずみ”によって評価します。

 

下の図は純鉄の引張試験結果となり,横軸にのびた割合のひずみ,縦軸に断面積あたりの力となる応力を示したグラフです。試験開始直後は,ひずみと応力は比例関係を示し,この領域を弾性域と呼びます。弾性域で力を除くと,サンプルはもとの形に戻ります。その後,応力とひずみの比例関係が終わると弾性域から塑性域と呼ばれる変形に変わります。塑性域からは,引張る力を除いてももとの形に戻ることはありません。例えば,クリップでものを挟むときは,クリップを少し拡げます。その変形が弾性域ならば,力を取り除くと元の形に戻り,ものを挟んでくれます。しかし,拡げすぎてクリップが塑性域まで変形してしまうと元の形には戻らず,ものを上手く挟めなくなります。

 

図1 引張試験で評価される降伏応力,引張り強さ,破断ひずみ

 

弾性域から塑性域に移った際に,応力が少し低下することが多いです。この低下するときの応力を“降伏応力”と呼びます。降伏応力を過ぎると,その材料が塑性域に入ったことになります。その後,ひずみの増加(材料がどんどん延びる)に伴い応力が徐々に増えていき,最大値になった応力を“引張強さ”と呼びます。これが,その材料が耐えることができる最大の応力となります。また,引張強さまでは延ばされた金属は均一に変形していき,全体が細くなっていきます。その後,応力が下がっていきますが,この時はサンプルのどこかが集中的に変形して細くなり,限界に達するとそのサンプルは切れます。この破壊したときのひずみが”破断ひずみ“となります。これら全てを総称して“引張特性”,そして,伸びる特性を“延性”と呼称します。

 

金属の特徴として,強度が比較的高いにも関わらず,よく変形できる(延性に優れる)ことがあります。延性が高いということは,大きな力が作用し変形したとしても,すぐに壊れません。金属以外の強度の高い材料としてセラミックス(身近な例では陶磁器など)や硬質なプラスチックなどがあります。これらは硬いものの,一定以上の負荷が掛かると,ほとんど変形せずに壊れてしまいます。使用中に材料が簡単に変形してしまうことは困りますが,壊れてしまうことはもっと困るため(機械等ならば大事故に直結),その点で扱いにくい材料です。

 

一方で,金属であっても強度を上げていくと延性が低下していきます。ただ,その程度は金属によって異なります。図2は,純アルミニウム,アルミニウム合金(ジュラルミン),純チタニウム,軟鋼,590及び780MPa級高張力鋼板(ハイテン)の引張試験結果となります。図中の“HV”は後述する硬さを示しています。純アルミニウムと軟鋼,そしてジュラルミンと純チタニウムは,それぞれ降伏応力や引張強度はほぼ同等ですが,延性が大きく異なります

 

図2 種々の金属の引張特性とビッカース硬さ

 

図3は,軟鋼と780MPa級ハイテンの引張試験用のサンプルの写真となり,変形前,破壊直前,そして破壊後の写真となります。引張り方向は紙面の左右方向となります。軟鋼は高延性のため,引張りに伴ってサンプルが大きく伸び,それに伴い幅が細くなります。そして,引張強さ以降では試験片の一部(写真では左端)のみが細くなり,そこで破壊が生じます。一方で,低延性の780MPa級ハイテンは変形量が少ないためサンプルはほとんど細くならず,引張り強さ以降は左側のみ僅かに細くなっていますが,その度合いは軟鋼と比べて低いです。したがって,延性の差は,単純な変形量の違いだけではなく,変形の仕方も大きく変わってきます

 

図3 引張試験に伴い,サンプルが変形及び破壊する様子。引張り方向は紙面の左右方向。

 

このように,一口に金属といっても,その特性は様々です。異種金属で特性が異なることは当然ですが,同じ金属であってもその製法,例えば,異なる元素を僅かに混ぜたり,熱処理条件などを変えるだけで,その特性が大きく変わります。この特性の変化は,製法の変化による金属組織の変化によって生じます。製法が大きく変化すれば金属組織も大きく変化しますが,製法の僅かな変化だけでは組織の変化も少なく,定量化しにくい金属組織の情報からその僅かな変化を読み取ることは難しいです(少し見た目が変わるだけとなり,どこがどう変わったかがわかりにくい)。しかし,製法の影響を直接受け,特性が数値としてあらわれる引張り特性ならば,製法の変化を把握しやすくなります。

 

一方で,金属の種類によって引張特性が大きく異なる要因の一つは,金属の結晶構造(原子配列)が異なるためです。図中の,アルミニウム,チタニウム,鋼はそれぞれ結晶構造が異なっています。日本刀は鋼でできていますが,焼入れが施された部分は同じ鋼であるものの結晶構造が変化しています。これが刃のみが大きく硬質化する要因となり,未焼入れの鋼と比べると,強度は大きく上昇するものの,延性は著しく低下します。

 

硬さ試験

硬さ試験にはいくつかの方法がありますが,ここでは日本刀の強度評価に用いられることが多いビッカース硬さについて説明します。ビッカース硬さは,先端がピラミッド形状の微小な人工ダイヤモンド製の圧子をサンプル表面に押し付け,その時に生じる傷(圧痕)の大きさで硬軟を調べます。硬ければ圧痕は小さく,軟らかければ圧痕は大きくなります。圧痕の大きさから数値として硬さが得られるため,相対的な比較に便利な指標です。図4にビッカース硬さ試験で硬さを算出する方法,図5に走査型電子顕微鏡で観察した圧痕の写真を示します。

 

 

F:試験荷重(N) S:圧痕の表面積(mm2) d:圧痕の対角線長さの平均(mm)

θ:ダイヤモンド圧子の対角面(度)…θ=136°

 

図4 ビッカース硬さの計算方法

 

 

図5 走査型電子顕微鏡で観察したビッカース硬さの圧痕

 

図2の引張試験結果の中に“HV○○”という記載がありますが,これがその材料のビッカース硬さとなります。今回の硬さ試験の結果では,ジュラルミンならばHV 135,軟鋼ならばHV 92となります。ビッカース硬さは,経験的に降伏応力のおよそ3倍程度になるとされています。

 

硬さは表面が平滑であれば試験ができ,分析用の特別なサンプルを用意する必要が無く,簡便に強さを計測できることが大きな利点です。さらに,試験によって生じる圧痕は小さいため,極狭い領域の硬さを計測することができ,日本刀内部の硬さの変化を評価することも可能です。日本刀断面のビッカース硬さ試験の結果を図6に示します。色で硬さを示しており,赤がHV 900,青がHV 200程度となります。

図6 日本刀断面のビッカース硬さ試験結果

 

しかし,材料が変形することで圧痕が生じる仕組みは複雑であるため,材料の強度特性を厳密に測れる試験法ではなく,おおざっぱな強さの違いを計る方法です※。そのため,金属の強度特性として引張特性や延性などがありますが,その中に“硬さ特性”というものは存在しません。前述の引張試験結果において,純アルミニウムと軟鋼,そしてジュラルミンと純チタニウムは,それぞれ降伏応力や引張強度はほぼ同等ですが,硬さには大きな差が生じています。また,壊れやすさを評価する延性や靱性を評価することもできません。そのため,刀身内で硬軟の差が大きい日本刀の強さを硬さだけで評価することには課題が多いです。

 

※硬さ試験機に変形量などを計測できるセンサーを取り付け,より精密に強度特性を評価する方法も研究されています。ただ,現状では研究段階で通常の強度試験を代替することは難しいため,本研究では除いています。

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