2019年の調査・保護活動を終了致しました。
NPO法人 屋久島うみがめ館です。
当プロジェクト「ウミガメの生態調査と保護活動」はクラウドファンド募集終了のすぐあと、4月初めから半年余りの活動期間を無事に終了することができました。
少し前の話にはなりますが、メディアに掲載された屋久島うみがめ館の存続危機・解散危機報道をご覧になった多くの方からの心配のお声がけを頂きました。昨シーズンは活動資金の枯渇、人材の不足などから活動を大きく縮小、後退せざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。
お寄せいただく多くの励ましの言葉のなか、運営的に大変厳しい環境のなかでこのクラウドファンディングのプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトを通じて広く皆様に私どもの活動を知って頂くことができ、最終的に300名もの方々のご支援を頂いたこと、ひとつひとつの応援コメントがとても力になったこと、このプロジェクトを通じて屋久島のうみがめ保護・環境保全・生態調査の活動を知る方の輪を大きく広げられたことがとても嬉しく、また、関係者一同の大きな励みとなり、今年は規模は小さいながらも一旦停止していたさまざまな調査・保護活動を無事に再開することができました。
本当にありがとうございます。
ご支援を頂きました皆様に活動の内容をお伝えするべく、記録や写真を撮りながらも発信をリアルタイムでなかなできなかったことをお詫び申し上げます。
現在は調査データの整理と分析、まとめにはいっております。1月中にはウミガメ調査の報告書を皆様にご覧いただけるように全力で努力しているところです。
シーズン中は夜間の活動が主体となるために、今年も協力をしてくださった全国から集まった37名のボランティアや当館スタッフ、関係者なども体力勝負で大変でしたが、おかげさまで大きな事故もなく無事にシーズンを終了できましたのも支援くださり応援下さった皆様のおかげと心から感謝を申し上げます。
【今年の活動状況のご報告】
詳しいご報告につきましては最終的に調査活動の報告書にてまとめますが、浜での活動が一段落をいたしましたので、今後はこちらのプロジェクトページでも写真なども入れてのレポートをしてまいります。
ここでは簡単にシーズンの活動内容について振り返ってみたいと思います。
・ウミガメの上陸・産卵回数・孵化率の調査と記録
ウミガメの上陸もほぼ終わりとなりましたタイミングでボランティアさんと一緒にうみがめ館に展示しているグラフ作成をしました。永田地区の年度別上陸・産卵回数は昨年度よりまた減ってしまいました。大変深刻な問題です。海洋汚染(漁具やプラスチックゴミなど)に加えて水温や気温の上昇など環境変化も影響はあると見られますが、無視できないのが、一部報道にもあったように密漁の問題も大きく暗い影を落としております。
保護活動を長年続けてきたなかで、人間が自然に対して影響を及ぼしているのに、自分たちの手で防ぐことのできない問題には大変心を痛めるとともに未来を憂いております。
・初上陸の確認は4月
屋久島でのウミガメの今シーズン初上陸・産卵は前浜にて4月19日に確認されました。これは昨年より11日遅い上陸・1日遅い産卵となります。これが日本での今年のアカウミガメの初上陸・産卵となりました。翌日には四つ瀬浜にてアカウミガメの上陸と産卵を確認しました。
アオウミガメについては4月27日に前浜にて昨年より24日早い上陸・43日早い産卵が確認されました。
・砂中温度計の設置
こちらも大切なデータとなる、砂中の温度計を設置しました。いなか浜と前浜に3地点、設置いたしました(40cmと60cmの箇所)こちらもデータ分析中ですが、例年になく砂中の温度が高い年となりました。羽化率との関連を調べていきます。
・子ガメの保護柵設置
卵の保護、子ガメの保護のための保護柵を設置しました。うみがめ館では保護柵内と外の羽化率の差についてもデータをとっています。
・浜の定点撮影
全島10カ所においての浜の定点撮影をおこなっています。記録を丁寧にとっていくことを大切にしています。
・当館主催の「2019うみがめ観察会」を開催(5/1-8/31)
親ガメ観察会(5/1-7/31)
子ガメ放流体験(8/1-8/31)
5月1日から8月31日まで行ったウミガメ観察会(親ウミガメ:5月1日~7月31日、子ガメ:8月1日~31日)は事故もなく、ボランティアのみなさんの力で無事終了しました。
5月の始め頃は、上陸が遅く観察会の終了が夜半以降になるときもあり、参加された方々は根気よくウミガメの上陸を待っていてくださいました。また、7月の後半も上陸が遅く、産卵シーズンの終盤にさしかかっていたため、親ウミガメを観察することは難しく、1年飼育の幼体を放流しました。
8月は、調査で保護した子ガメの放流を夕方行い、参加した人達は海に帰って行く子ガメたちの様子を観察できました。
5月1日~7月31日までの親ウミガメの観察会の参加者は、島内、幼児を含めて1,262名、8月の子ガメの観察会の参加者は、島内、幼児を含めて897名の参加でした。
・ウミガメの救出、保護活動
シーズンを通して何度か、漁の網にひっかかり弱っている幼体のウミガメや消波ブロックにはまってしまい、動けなくなっているウミガメ、高波でひっくり返ってしまい、自力で動けなくなったウミガメなどを発見した方からの連絡により現場に急行、スタッフや地元の人にもお手伝いいただき、救出するケースがありました。これは大変な力作業となります。
なかには残念ながらすでに白骨化したウミガメの発見もあり、ボランティア、スタッフの人数が少ないことで救えなかった命への思い、悔しさも感じる場面がありました。
・6月1日 世界環境デー いなか浜の清掃
当館と24時間テレビチャリティ委員会の共催で今年も世界環境デーにあわせた浜の清掃活動を行いました。昨年は当館の活動縮小のために主催が出来なかったので2年ぶりとなります。
参加者は126名で屋久島の人口の1%ほど、ゴミの量は流木、発泡スチロール、漁具・漁網など900㎏ほどありました。現在、世界中で問題になっているプラスチックなどが大半を占めていました。浜がきれいになり、ウミガメも喜んでいると思いますが、心配は、いなか浜に上陸してくるウミガメの減少が続いていることです。
・小中学校などとの活動(レクチャー、観察会、人工孵化指導、放流体験)
今年も屋久島町立一湊小学校、屋久島町永田小学校、屋久島町立宮浦小学校、郁文館高等学校、屋久島町立中央中学校など多くの子ども達にレクチャーや体験、指導などを行いました。一人でも多くの子どもがウミガメについて知り、環境について関心を持ってくれることを願っています。
・台風(高波)の影響からまもるための卵の移植
台風5号の高波により流出直前の卵を計65個保護、さらに8月14日には、台風10号の高波により流出直前の卵を計380個保護し、保護柵内に移植しました。まだ詳細なデータは出ていませんが、台風により流出した卵は数千個はあると思われます。
・識別タグの装着
子ガメの腹腔内へのPITタグを入れる作業、またインコネルタグを左前後肢に装着をします。地道な調査活動を通じて過去、ウミガメの回遊ルートなどの把握に成果がでています。ウミガメの大減少が続いている現在、生存率を高める為に子ガメを大きくして少しでも捕食者から守り、ウミガメの減少に歯止めができればと思います。
【ご支援いただきました資金について】
皆さまからご支援頂いた資金は、お約束の通り、本年シーズンのうみがめの生態調査と保護活動に使用させて頂きました。万全な調査活動をするには至りませんでしたが、工夫をして必要な調査用具、装備や備品など購入することができ、調査も昨年から比べると大きな進歩となりました。また昨年は閉館状態であったうみがめ館の展示館についても今年は開館をすることができ、多くのかたに訪れていただくことができました。
詳しい報告は調査報告と共にまとめる予定です。活動を大幅に縮小、展示館も休館となっていた昨年から考えると皆様のご支援により、規模は小さいながらも調査活動が他項目にわたり継続できましたことを心から感謝しています。
【報告書の予定】
今シーズンの生態調査と保護活動の報告書については現在データを整理しておりまして、例年年末から年明け1月中にはまとまったレポートを作成しております。ご支援いただきました皆様には今後、メール版やこちらのプロジェクトページでのレポートと、年明けになると思われますが、まとめた調査報告書のダウンロードURLをお知らせいたします。
来シーズンも引き続き活動を継続できるように頑張って参りますのでどうか皆様も暖かくお見守りいただければ幸いです。
【終わりに】
今年の調査プロジェクト開始から長いマラソンを走りきった気持です。現在もまだアオウミガメは上陸・産卵がありますので引き続き浜での観察、保護、調査活動を行っています。また、調査の過程で保護、または孵化した幼体の育成にご協力頂いている各施設からの里帰りのカメたちも戻ってきています。丁寧に計測と記録をし、タグを装着して放流をします。
このように当館の活動はとぎれなく冬も行っていますが浜での活動は夏がシーズンですので、ここからはデータ整理と来年のシーズンの活動準備となります。
当法人は運営の大部分がボランティアの方々と支援者である皆様からの寄付によって支えられています。ウミガメにとっての環境の悪化とウミガメの急激な減少に向き合っている我々は活動をなんとか継続し、この浜の環境を保全し、どうにかウミガメの減少に歯止めをかけたい思いを強く思って活動しております。
また、人材についても広く募集をかけていきます。
海洋に漂う人間の生み出したゴミや自然界にはない消波ブロックなどで事故に遭ってしまうウミガメの救出もボランティア、スタッフの人数が少ないことで助けられた命を救えなかったことも当館は大変悲しく感じていることです。どうか、カメの好きな方、夜空の落ちるような星を見るのが好きな方、ぜひうみがめ館にお問合せ下さい。
引き続き当館では活動を継続していくために、屋久島からの情報発信とご協力のお願いを続けて参ります。
最後となりますが、当プロジェクトにご支援を頂きました皆様に心からの御礼を申し上げます。この御縁を私達も大切にし、励みにもしてまいります。
皆様には、どうか引き続き屋久島の環境、ウミガメたちの未来について関心を持っていただければ幸いです。何年後でもこの浜で生まれたウミガメたちを「おかえり」と迎えてあげたい、その思いで引き続き活動をしてまいります。
NPO法人 屋久島うみがめ館 代表 日高俊郎
プロジェクト実行者:大牟田一美(NPO法人 屋久島うみがめ館前代表・創立者)
松原まどか(NPO法人 屋久島うみがめ館理事)