知的障がいのある方の自立のためのコインケース開発

支援総額

3,624,000

目標金額 1,000,000円

支援者
371人
募集終了日
2022年1月14日

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2021年12月18日 06:45

認知機能からみた買い物考(3)

「認知機能からみた買い物考」は今回が最終回です。今まで、買い物をしたときにレジで示された代金分のコインを財布から出すという行動を認知の観点から分析してきました。この最終回ではフォイヤーシュタインが考案した認知地図の考え方をご紹介し、それに沿ってさらに分析を進めましょう。

 

障がいのあるなしに関わらず、人それぞれに難しい課題というものがあると思います。多くの人にとって「量子コンピュータの動作原理を理解する」ことはとても難しいでしょう(私にとっても難しいです)し、幼い子供や知的障がいのある方にとっては「他人にとっての右左について考える」ということは難しいでしょう。このシリーズでは、買い物をしたときにレジで示された代金分のコインを財布から出すという行動を分析してきましたが、それを難しく感じる人々も多いのです。

 

認知地図は、「その課題がその人にとってなぜ難しいのか」を考えるときに役立ちます。認知地図によって課題を分析することでその課題の難易度やつまづきポイントなどが洗い出されます。ピンポイントで洗い出されるので、あとはその対策を取れば良いのです。升岡さんによる新着情報の記事「うちの子はお金を使えないとあきらめていませんか?」にもあった様に、「この子にこの課題は難しいから、やらせないでおこう」と諦めるのではなく、「この課題はこの子にとってはここが難しい。だからどう対策しよう?」と前向きに考えることができます。

 

認知地図は次の7つの観点から課題を分析します。

  1. 内容
  2. モダリティ
  3. 認知機能
  4. 認知操作
  5. 複雑さの度合い
  6. 抽象性の度合い 
  7. 効率性の度合い

これら7つの観点から、その課題が「どの点で」難しいのかを考えるわけです。では、早速一番最初の項目から見ていきましょう。なお、夢育てコインケース独自の工夫に触れた箇所のところに下線を引いてあります。

 

1.内容

これはそんなに難しいことではありません。その課題が「どの様な課題か」、「何について考える課題なのか」ということです。今回で言えば、「レジで示された金額(数字)分のコイン(具体物)をお財布の中から出す」ということでしょう。

 

2.モダリティ

課題を遂行するためには情報を適切に収集したり、誰かに自分が考えた内容を伝えたりする必要があります。モダリティとはその情報がどのような方法・形式をとるかということです。例をあげれば、

  • 図形
  • 書かれた言葉、発声された言葉
  • 数字
  • その他、触覚や筋肉運動などなど

といったものがモダリティです。例えば駅までの道順を示すときに、「地図を描く」こともできるし、「道順を言葉で説明」することもできます。あるいは「道順を動画で説明」だってできます。「駅までの道順」は同じですが、それを伝える方法はさまざまなわけです。

 

では、今回の課題をモダリティの観点から分析してみましょう。

  • 数字を見る段階 レジの数字を見るなら「視覚的な数字」。店員さんの声を聴くなら「聴覚的な数字」のモダリティです。
  • 位取りする段階  ここでのモダリティは「数字」ですね。
  • コインを出す段階  コインを金種に分類して取り出すために、「視覚」または「触覚」、そして「指先の微細運動」というモダリティを使います。

コインを出す段階では指先の巧緻性が求められるので、それが難しい人もいらっしゃるでしょう。しかしこの夢育てコインケースはすでにコインの列と列が離れて収納されるので、取りやすくなっています。視覚障害のある方でも使いやすいのではないでしょうか。

 

3.認知機能  

課題をする上で必要となる認知機能は何かを分析します。これについては第2回で明らかにした通りなので、今回は省略します。また、課題を解く上で認知機能の「入力」、「精緻化」、「出力」のどの段階が重要かを考えます。今回の課題をこの観点で分析すると、次の様になります。

 

  • 数字を見る段階  「入力」の認知機能が必要なので、「入力」が大事でしょう。
  • 位取りする段階  同様に、「精緻化」が重要な段階でしょう。
  • コインを出す段階 同様に、「入力」と「出力」が大事になると思います。 

 

知的障がいがある人は「精緻化」の段階が弱いことが多いので、位取りする段階が難所になるでしょう。しかし前述の様に、夢育てコインケースは桁表と同じ構造になっているので、「精緻化」が低い人を大いに助けてくれるはずです。

 

4.認知操作  

この項目では課題を解く上で必要となる認知操作はなにか、と分析します。認知操作の考え方は専門性が高くなりますので、今回は割愛いたします。

 

5.複雑さの度合い

課題の複雑さとは、その「情報量」と「新奇さ」で決まるとフォイヤーシュタインは言います。別の言い方で言うと、

 

複雑さ = 情報の量  新奇さ

 

といえるでしょう。「情報の量」とは、簡単にいうと考える対象の数のことです。同じ足し算でも一桁同士の足し算よりも4桁同士の足し算の方が情報量が多いと言えます。

 

また、自分にとって目新しい課題は慣れた課題よりも複雑に感じられると思います。そのようなわけで課題の「新奇さ」が課題の複雑さを押し上げるわけです。物事が練習によって上達するのは、それによって新奇さが減り、その結果複雑さが減少することも理由の一つにあると思います。

 

この観点で今回の課題を考えると、コインを出す段階がネックになると思われます。

 

  • 数字を見る段階   考える対象はせいぜい数字3つ程度なので、それほど高くないでしょう。
  • 位取りする段階   同様に、それほど高くないでしょう。
  • コインを出す段階  情報量が多く比較的複雑ですが、夢育てコインケースはそれを下げてくれるでしょう。

 

なぜコインを出す段階で情報量が高いかというと、お財布の中にはコインがたくさん入っているからです。たくさんあるものを考えないといけないわけです。夢育てコインケースは収納されるコイン枚数が意図的に限られているので、情報量を下げることができます。

 

6.抽象性の度合い

「抽象」は「具体」の反意語です。具体物の様に触ることができるものは抽象度が低く、より、「目に見えない」ものになるにつれて抽象度が高くなります。今回の課題で言えば、次の様になりましょう。

 

  • 数字を見る段階   ただ数字を見ればいいので、低いでしょう。
  • 位取りする段階   高いですが、夢育てコインケースはそれを下げてくれるでしょう。
  • コインを出す段階  コインという具体物を扱うので低いでしょう。

 

位取りする段階でなぜ抽象性の度合いが高いかというと、そこでは位取りの仕組みという「目に見えない」関係性を考えるからです。さらに、それは目の前にないので頭でイメージしなければならないからです。その点、夢育てコインケースならばコインの列が桁表と同じ並びになっているので、桁表をイメージしなくてすみます。五円玉、五十円玉、5百円玉も収納可能でありつつ、それらは一円玉、十円玉、百円玉とは段違いになっているので混乱しないように工夫されています。

 

7.効率性の度合い

この観点は、課題をどれほど効率よく行わなければならないかです。課題を正確に、素早く、しかも楽ちんにできればできるほど「効率良く」行えたということになります。言い換えると、 

 

効率性 = 正確さ  スピード  楽ちんさ

 

と言えるでしょう。レジでお金を払うときは正確さとスピードが求められます。これが大きな障壁になるでしょう。もちろん、買い物は日々のことなので、できるだけ気軽に(つまり楽に)済ませたくもあります。レジで示された額のコインを財布から出すという課題に要求される効率性は非常に高いと言えましょう。しかし、今まで見てきた様に、夢育てコインケースはそれを軽減してくれるでしょう。

 

  • 数字を見る段階  入力の認知機能が弱い人にとっては正確性が問題になるかもしれません。
  • 位取りする段階  桁の概念が弱い人にとっては高いでしょうが、夢育てコインケースが大いに助けてくれるでしょう。
  • コインを出す段階 効果を金種に分類し、必要枚数を財布から取る段階です。後述する様にここもネックになるでしょうが、夢育てコインケースが大いに助けてくれるでしょう。

もちろんこれはどのコインケースでも言えることですが、コインケースにコインを収納した時点で金種の分類が完了します。自宅などスピードが要求されない環境で落ち着いてコインをコインケースに収納すれば、求められる効率性の度合いのハードルを下げられます。

 

また、モダリティのところでも書きましたが、夢育てコインケースは指先の微細運動が苦手な方でもコインを取りやすい様に工夫されているので、比較的スピーディーにコインを取り出せるでしょう。

 

以上で、認知地図の各項目を全て見ることができました。多くの項目で夢育てコインケースが買い物時のレジでの支払いという行動の難易度を下げていることが具体的に確認できたことと思います。

 

認知地図の話から逸れますが、最後に夢育てコインケースに特有の工夫点をもう1点書きます。それはレジでお金を払うという実戦的な課題を超えた、教育的な側面にあります。夢育てコインケースでは一円玉、十円玉、百円玉の溝には10枚。五円玉、五十円玉、5百円玉には2枚コインを入れることができます。よって、それぞれの溝に全部コインが入っていると繰り上がりが発生することになります。百円玉のスロットに10枚あるから、全部で千円になるわけです。「百円玉のスロットに全部入っていたら、まとめて千円として使えるよ」という上級技も教えることができるのです。

 

それ自体実戦的な道具でありながら、さらにその先へ困難さを持った人々を導く手段ともなることは素晴らしいことだと思います。ぜひこのコインケースが世に出ることが可能となる様、皆様の支援をどうぞよろしくお願いいたします。

リターン

3,000


1つ使ってみたい

1つ使ってみたい

感謝の気持ちを込めてメッセージをお送り致します
進行報告
完成したコインケースx1個(ご自宅にご送付します)

申込数
195
在庫数
9
発送完了予定月
2022年4月

5,000


全力応援コース1

全力応援コース1

感謝の気持ちを込めてメッセージをお送りします
進行報告

申込数
57
在庫数
24
発送完了予定月
2022年1月

3,000


1つ使ってみたい

1つ使ってみたい

感謝の気持ちを込めてメッセージをお送り致します
進行報告
完成したコインケースx1個(ご自宅にご送付します)

申込数
195
在庫数
9
発送完了予定月
2022年4月

5,000


全力応援コース1

全力応援コース1

感謝の気持ちを込めてメッセージをお送りします
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申込数
57
在庫数
24
発送完了予定月
2022年1月
1 ~ 1/ 13

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