デネガ通り

おかげさまで、最初の目標額は達成しました。ここまで応援してくださったみなさま、毎日のように、ツイッターのリツイートを繰り返してくださったり、はらはら見守っていただいたり、ありがとうございます。12月2日まで、まだすこし、頑張らせてください。

 

閑話休題。

 

歌集が出ることは決まったので、短歌の紹介は控えめにしたいと思いますが、でも少し。
「ニューヨークの唇」に自動販売機の歌があります。

　　

　　月は高く自動販売機は低くデネガ通りに缶落ちる音

 

夜に自販機を使うとき、必ず思い出す歌になってしまったのですけど、

「デネガ通りって？」って聞いたら、「ああ、青森のね」って言っていたから、青森の人はわかるのでしょう。どこかの町にそういう名の通りがあるかもしれないし、方言かもしれません。

 

私が思い出すのは、再会してまもないころと思います、まだ蝦名さんの状況がよく呑み込めてなかった頃、私が上京して、夜に上野で会ったとき、自販機の前で「今日はお金あるから、おごれる」って、蝦名さんが言ったのです。それはありがとう、と缶コーヒーを買ってもらったと思います。上野公園の上り口あたり、缶コーヒー飲みながら、少しおしゃべりして、じゃあまたねって、別れたと思います。ポケットから小銭を出して、自動販売機にお金を入れる指先の動きを、なんとなく記憶しています。
あとになって知ったのですが、蝦名さんがお金あるって言って、ポケットから出した小銭は、そのときの蝦名さんの最後の持ち金だったのでした。

それはもう「お金ある」じゃなくて、「お金ない」と言うべきだよ、と思いました。

 

生きることの難しさは、人それぞれにあると思うのですが、何はともあれ、蝦名さんが、最後まで生ききってくださったことに、私はすごく感謝があります。あのときの缶コーヒーのあたたかさとか、缶コーヒーだけじゃない、私が気づくことができないうちに、支払わせていたかもしれない何か、に対して。