産婦人科外来を患者さんに寄り添える場所にするために
【産婦人科外来を全ての患者さんに寄り添える特別な場所にするために】
【はじめに】
クラウドファンディングにご寄付を頂きました皆様、本当にありがとうございました。このクラウドファンディングを始めようと思ったきっかけは宮崎大学産婦人科に遠方から来られている患者様になんとかくつろいだ空間を提供し、診療までのお時間を落ち着いた雰囲気の中でお待ち頂けないかと思い立ったからでした。産科、婦人科、女性医学関連など多くの患者様が宮崎大学産婦人科には来られます。案をだした当時は新型コロナウイルスが大きな社会現象でした。宮崎大学は県内唯一の特定機能病院として病院の予算は生命に直結したものに限られています。『外来を快適に過ごす』目的の新たに出資される事はないのが現状です。これは待ったなしの状況であると判断してクラウドファンディングで患者様ファーストの取り組みを開始致しました。
【取り組み内容】
クラウドファンディングに先立ち、2023年5月15日から5月19日に宮崎大学産婦人科を受診された、外来患者様に外来をより快適にするために、ご意見をアンケートで聴取させて頂きました。アンケートでは250名程の患者様よりご意見を頂きました。意見が多かったものは、①椅子の改善 ②授乳室の改善 ③胎児モニターの設置希望 でした。椅子においては、『長時間座っても疲れないもの』、『できれば横になりたい』。『授乳室は夫も入れる授乳室が良い』。『胎児超音波検査画面が首を傾けないと見れない、斜めで見えにくい』、『経腟エコーで赤ちゃんの心拍を実際に見たい』、等の意見が多数を占めました。
【クラウドファンディングチーム作成】
責任者として、音頭をとった私桂木真司が就任しました。産婦人科医師 土井宏太郎先生、外来医長 平田徹先生、看護部副看護部長 河潟富士枝さん、外来看護師長 藤浦まなみさん、外来副看護師長 押川笑子さん、医療支援課 谷口司さん、地域創成学部 池田中也先生が実働部隊として活動していく事を決めました。 担当者として①椅子:看護師、谷口さん ②胎児モニター:産婦人科医師 ③授乳室:池田先生、看護師、谷口さん の3分野で活動内容を分担しました。
【機器、機材、材料選定】
①椅子:宮崎市内の産婦人科の医療機関や家具屋店を訪問し椅子の素材を見学しました。管理部松本課長に依頼し、九州の大学病院での椅子の素材、材質を調べました。病院やクリニックなどの医療施設から学校、ホテルなど様々な施設へ長椅子を提供している業者の方々と連絡を取り、自分達の見積もりと目的に合う椅子を吟味しました。最終的には意見の多かった、長時間座っても疲れず、安定感のある椅子として、座面が高く、ひじ掛けがあり、清潔を保ちやすい椅子32脚を購入しました。これまでの椅子は外来に残し、残りは、産婦人科病棟、周産母子センター、その他の院内部署、医学部生など希望箇所で継続利用する事としました。
②胎児モニター:従来は、妊産婦が自分の胎児の画像を超音波検査の画面を直接覗き込んでみる事は角度的に困難でした。そこで見やすい位置にモニターを設置し、胎児画像が見やすくなりました。また、経腟エコーではカーテンを開けて、胎児画像を見ていたものが、妊婦さんの顔の横にモニターを設置した事で大変見やすくなりました。腹部超音波検査の胎児モニター3台、経腟エコーの胎児モニター2台を購入致しました。患者様むけの設置という事でかなり減額した金額で購入する事が出来ました。
(↑)モニター設置位置を皆で議論する風景。モニター位置に段ボールを置き、産婦人科医師、外来看護師で安全面、有効性を考え設置方法を検討しました。
(↑)胎児モニター設置後の診察風景。患者さんは寝たままで楽な姿勢で壁につけられた自身の胎児の超音波画像をみる事ができます。
③授乳室:夫婦が同時に入れる授乳室を目指して機能的で明るい雰囲気の授乳室を目指しました。流しの位置を低くし、ミルクやポット、バックなどがおけるスペースを確保しました。全体的に落ち着きのある明るいブラウン色を基調として、新生児おむつ台、新生児ベッド、電球なども改装しました。床や壁も清潔で段差や、突起などをなくし安全面にも配慮致しました。入口には男女のサインを入れ、夫婦で利用できるように致しました。使用状況が分かるように、入口に使用札を掲げ、使用中・空室が一目で分かる様にしました。
【収支報告】
目標額550万円の所、合計268名の方から721万円の寄付を頂きました。
下記のように椅子196万円、授乳室189万円、胎児モニター99万円が主な支出先になります。収支は病院管理部で一括管理して頂きました。
椅子 |
1,960,000 |
授乳室 |
1,894,358 |
ガラスフィルム |
46,200 |
胎児モニター5台 |
990,000 |
カッティングシート(授乳室前男女マーク) |
27,500 |
クラウドファンディング銘板 |
4,000 |
産婦人科事務経費 |
253,000 |
外来補修費 |
340,592 |
本学管理費(5%) |
360,500 |
事業者手数料(16.5%) |
1,189,650 |
医学部拠出金(2%) |
144,200 |
合計 |
7,210,000 |
【椅子、胎児モニター、授乳室の開始時期】
胎児モニターは2024年5月の土日で設置工事を行い、2024年6月に安全面を確認し患者様向けのご利用を開始しました。患者様から『とても見やすくなった。』、『自分の胎児が実際動いているところが見れて嬉しい。』、『手、足、心臓、腹部、など医師の説明が分かりやすくなった。』などの好評の声を頂いています。
椅子は32脚を2024年10月20日に納入し、10月21日より患者様にお使い頂いています。オフホワイトを基調として背中面を高い椅子を購入しました。妊婦さんや、婦人科の方々、付き添いの方々にご使用頂き、『座りやすく立ちやすいです。』、『ゆったり座れて嬉しいです。疲れにくいです。』などの声を頂いています。外来北側のガラスに花柄の装飾シートを貼付しました。光は取り入れていますが、花柄模様があり落ち着ける空間になったと思います。
授乳室は2024年11月に工事を行い、12月21日より患者様にお使い頂いています。ご夫婦で利用でき、男性も授乳に参画する意識付けや、それまでの医療用の流しから、哺乳瓶やカバンを置けるスペースを作成し、赤ちゃん用のベッド、おむつ替え台も現代の使いやすく安全面の高い機材を導入しました。天井からの明かりもドングリから暖かい光が差し込むようで、お子様にもくつろぎやすい空間を作り好評を頂いています。
【宮崎大学HPでの活動内容閲覧】
本クラウドファンディングの活動内容は宮崎大学病院ホームページの下記URLからもごらん頂けます。
https://www.miyazaki-u.ac.jp/newsrelease/topics-info/post-1276.html
【本クラウドファンディングを応援して頂いた大学病院の他部署の方々の写真】
【クラウドファンディングを終えて】
患者さまに寄り添った医療を実現するためには、外来空間をよりくつろげるものとする事が大事と思い、この取り組みを実施させて頂きました。宮崎大学地域創成学部の池田中也先生に授乳室は設計して頂きました。宮崎大学全体としてこの取り組みを支えられた事が大きかったと思います。事務職員の谷口司さんにも広報や、その他のお仕事で幅広く関わって頂きました。患者様の命を救い、健康な身体を保つための大学病院としての任務があり、我々医師、看護師、薬剤師、その他多くの医療スタッフが尽力しています。その原動力は私達が患者様に寄り添い、患者様のご家族や、心のケアまで含めた全人的医療を行いたい、という願いにあります。そのような気持ちを形にする事ができて良かったと思います。ご寄付を頂いた方は宮崎大学病院内外の医師、看護師、スタッフの皆様、また、患者様自身、そのご家族も多かったです。『以前大学病院でお世話になりました。今後とも頑張って将来の患者さんを治して下さい』という内容の暖かいメッセージを多く頂きました。病院スタッフへの大きな励ましとなりました。
新しい、令和7年も始まりました。今後とも私達宮崎大学病院は宮崎県の最後のとりでとしての責務を全うする医療を提供して参りたいと思います。『最先端のその先の医療を患者さまに寄り添いながら提供できる』ように、日々努力・研鑽を積み重ねていく所存です。宮崎大学医学部附属病院を今後ともどうぞよろしくお願い致します。