「”心に描いた島”を見失うな　見失った時、現実の航海で本当に”島を見失う”ことになる」N・トンプソン

「我々の祖先であるポリネシアの人々は、数千年前にすでに、自然界のサインだけを使って、何千キロもの海を旅する素晴らしい航海術を持っていました。正しい方角や自分の位置を知るために、星や太陽、波などを利用するのですが、そのほとんどは目を使って読み取るわけです。ところが、時に目が全く使えない状況があるのです。

　例えば、厚い雲に覆われた夜です。もし、波だけでも見えれば方角を知ることもできますが、それもできない闇夜です。そんな時、頼れるのは海との関係で生まれる自分の身体内感覚だけです。目を閉じて、意識を内側に向け、波の鼓動を感じ取って方角を知るのです。それは僕には、とても難しい。『百聞は一見に如かず』というのが、僕たちの文化だったから。

　マウは祖父から教わり、祖父はまたその祖父から教わっています。だから彼は３千年間絶えることなく続く遺産の継承者だと言えます。彼は我々が成長期に捨てることを求められた、様々な感覚を逆に磨きながら成長したのです。だから彼は、夜、目を閉じて横になっていても、波の動きから正確に方角を知ることができる。僕にはそんなことができない。でも大丈夫。彼と共にいて、彼を見つめ、古代の人々が自然界といかに波長を合わせていたかを学べばいいんです。」

(外洋カヌー航海者ナイノア・トンプソンさんは、２０２５年6月２８日土曜日午後６時から「屋久島文化村センター」で上映される「地球交響曲ガイアシンフォニー」第三番に出演されています。皆さまのご協力に感謝いたします。１０００円のご支援で離島に住む方も視聴できます。）