ポン・カッセ復活!ゴリラもマルミミゾウも安心の楽園へ向けて
いつも大変お世話になっております。UAPACAA国際保全パートナーズの岡安です。
記録的猛暑の夏がいきなりという感じで終わり、寒暖の差が激しいまま師走に突入してしまいましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
世界はコロナのパンデミックを抜け、ほぼ平常運転に戻ったのを受け、昨年に続きこの9月、1年ぶりにカメルーンのロベケ国立公園に行ってきました。これも昨年の皆さまのご支援の賜物です。
とはいえ、コロナ禍以来”高値安定”の航空運賃に加え、大幅な円安の進行で出費増も天井知らず。旅費節約のため、助成金で進めているコンゴ民主共和国の「ボノボの里Mbali地区」支援と抱き合わせで、2カ月の長期出張となりました。出発を控えた8月は、まだ各国の水際対策がバラつき、先に訪問したコンゴは未だPCR陰性証明が必要とされ、冷や汗をかきました。万一、陽性だったらすべての予定が振り出しに戻る…。
日本で有効なPCRを受けるなら、キンシャサに72時間以内に入れる変更可能な便を選ばなければならず、経費がバカになりません。それを避けたければヨーロッパ経由でPCR検査。しかしこれも陽性なら友人宅で隔離というはた迷惑が発生し、やることのフローチャートを作っていると、行き止まりだらけの迷路クイズのような混乱ぶりでした。
せめて1年以内に現地訪問を実現させて、ポン・カッセのガードポストの様子とプチ・サバンナのゾウのその後を確かめ、エコツーリズムのポテンシャルを確認したい。それを実現するのに、コンゴの水際対策は土壇場まで不安材料として立ちはだかっていました。
それが出発1週間前に、現地協力者から「水際対策撤廃」の知らせ。在日大使館に問い合わせてもよくわからずアタフタするうち、3日前になってエチオピア・エアーのサイトに案内が載って、これなら陰性証明なしで出発できるだろうと胸を撫で下ろしました。万一違っていても、とにかく飛行機に乗れて現地に着きさえすれば、何とかなるという往年の勘?で(汗
【3回のクラウドファンディング・プロジェクト】
2018年にUAPACAAパートナーズを設立して、今年で5周年を迎えました。
その間、特にカメルーン・ロベケ国立公園の自然保護活動は、2019年から計3回のクラウドファンディングで皆さまのご寄付をいただき、現場支援を続けて来ることができました。改めて感謝申し上げます。しかし振り返ってみると最初のプロジェクトの終了報告の時点から、すでにコロナのパンデミック一色。
ようやくトンネルの出口が見えた昨年末の3回目では、ポスト・コロナの復興に向けてすべきことを現場で精査し、UAPACAAパートナーズとしては従来の野生動物保護に、軸足を戻すことができました。
ただ、それが予想以上に緊急事態だったことも事実です。
↑昨年の出張で明らかになった、現場プロジェクトの脆弱性
そして今回の出張で、皆さまからのご支援で無事にポン・カッセのガードポストが維持されて、プチ・サバンナの動物たちが引き続き守られていることを、確認してきました!!
今回のご寄附は、ポン・カッセに4人編成(レンジャー2人、生物モニタリング・アシスタント2人)のチームが、常駐する費用に充てさせていただきました。地域の安全対策が戻ったことが、広く知られるようになれば、その分、密猟者の侵入を阻む効果が期待できます。
限られた予算で4人の経費を賄うために、残念ながらガードポスト自体の施設を、整備するには至りませんでした。熱帯ジャングルの高温多湿の環境では、簡易施設はアッという間にシロアリに食われ、草が覆って数カ月で跡形もなくなってしまいます。それより、簡素な屋根組に雨よけビニールシート、その下に軽くてしっかりしたテントの方が、実は快適に暮らせるので、写真のようなシンプルな佇まい。そんな中でも意気軒昂なレンジャーたちの、笑いが絶えないキャンプに励まされました!
加えて、ガードポストが再開したことで、国立公園に点在するパトロール・ポストへ向かう、レンジャー部隊の発着拠点としても、ポン・カッセは活用されるようになっていました。私がプチ・サバンナの視察に出かけた時も、6人編成の部隊が帰るところに一緒になり、キャンプは一晩、大所帯に。
約2週間をかけて、重い自動小銃を肌身離さず、徒歩で回るジャングル。もちろんテントも食料も自力で運び、宿泊も自分たちですべてやりくりするのです。厳しい任務に現場で携わり、直接、野生動物たちを守ってくれている彼らと、久しぶりに焚き火を囲んで話し込み、改めて感謝の念に打たれました。コロナ後、1年がかりで取り戻したポン・カッセ警護のルーティーンを、ここからどうやって先に繋ぐか…まだ正念場は続いています。
【プチ・サバンナのゴリラ】
9月の動物探索ミッションは、まずポン・カッセでゴリラ・トランゼクトの様子を確かめ、それから約6km離れたプチ・サバンナのバイへ。
約2年ぶりに観察路の見回りに復帰した、地元の生物モニタリング・アシスタントは、以前に比べ今回は、ゴリラに会う機会が少ない気がするとのこと。ただ、1年前も今回も、観察路を歩いた感じでは、オスメスコドモの家族らしいベッドは確認しましたし、3月から半年間の報告を確認した限りでは、コロナ前から頻度が大きく変わった様子は見られませんでした。
他方でプチ・サバンナでは、8月〜9月の小乾季にいろいろ”事件”が起きていました。2 haほどしかない小さなバイ(水草湿地)ですが、驚くほど多様な動物たちが訪れます。カヤツリグサという、ミネラルをたっぷり含んだ植物が生い茂り、ゴリラたちも大好物。特に乾季になると、森のフルーツが減ることもあって、盛んに食べにやってきます。
過去のモニタリングの結果から、ポン・カッセのトランゼクトを利用しているゴリラ・グループは少なくとも3つあり、シルバーバックそれぞれ12、6、3ずつメンバーを率いていました。彼らはポン・カッセとプチ・サバンナの間を行ったり来たりしていて、ここの多様な植生がゴリラたちを惹きつけていることがわかります。それでも、プチ・サバンナのバイに、いっぺんに複数のグループが出てくるという観察例は、記録されていなかったのですが…。
岡安が渡航する数週間前、夏のバカンスでイギリスからきた4人組ツアー客がプチ・サバンナ滞在中に、なんと30を超えるゴリラたちがバイに出てくるのを観たというのです! ニシローランドゴリラがしばしば大きな集団になるのは知られていますし、岡安もガボンで何度か観察しました。しかしプチ・サバンナのような開けた場所で、しかも人の目の前にそんなたくさん出てくる、千載一遇のチャンスをモノにするとはなんという幸運!! 羨ましくてやきもちが焼けて、その日は眠れませんでした。ゴリラたちは、4人+αもいたツアー客には目もくれず、自分たちの「総会」を優先したようです!
ポン・カッセのガードポストが、ゴリラ観察路の開設に合わせて本格始動し、レンジャーの出入りが激しくなると間もなく、特に意識して追いかけなくても、ゴリラたちが勝手に慣れ始めた頃を思い出しました。最初にビデオに収められたのが、おそらくメンバー数12の最大のグループ。こんなにあっさり、人間を受け入れてしまうのか?と驚きました。それまで見かけたことのなかったマルミミゾウが、ポン・カッセ周辺に集まってきたのも同じ頃です。まるでレンジャーたちの存在が、自分たちの安全対策だと言わんばかりの野生動物たちの反応に、こちらが戸惑ったものでした。
1年近く中断があって再びポン・カッセに人が常駐するようになり、ゴリラたちの動きも活発に変化しているのかも知れません。というのも、この”ゴリラ祭り@プチ・サバンナ”の直後の9月3日、今度はシルバーバックがバイのど真ん中で死んでいるのが発見されました。これも未だかつてなかったことです。
WWF所属の獣医師が、カメルーン南西部のカンポ・マー’アン国立公園から派遣され、検死が行われました。私がロベケに到着したのが9月8日の晩で、まだ直接の死因は判明していませんでしたが、頭部に致命傷と見られる傷を負っていて、オス同士の闘争が原因の可能性が高いということでした。ゴリラ祭りの余韻でオス同士の闘争心も煽られ、行き過ぎた喧嘩が悲劇をもたらしてしまったか…?
後日聞いたところでは、感染症の可能性を検査するために持ち帰ったサンプルからは、リスクの大きい病原菌は発見されす一安心。ただ、他のゴリラや動物たちに影響を最小限に抑えるため、遺骸はその場で火葬にされました。
ロベケ国立公園では2020年の11月にも、ポン・カッセのトランゼクトで若いオスゴリラの遺骸が見つかっています(2021年3月3日の「世界野生生物の日」現地報告会でも話題に)。この時は特に外傷もなく、また感染症も出ずに済みましたが、こんな自然死の場合でもガードポストが機能していると、発見も対処も圧倒的に早くなります。また、昨年のクラウドファンディングでは、このような緊急出動の経費を含めた活動予算を組んでいましたので、今回のシルバーバックのために、カンポ・マー‘アンから獣医を派遣する費用に役立ってくれました。
【新たな野生動物たちとの共存】
現地視察の間に事あるごとに話題になったのが、どうもロベケの野生動物たちは、本当にレンジャーたちを”頼り”にし始めたらしいこと。森へ出発前の集合写真にあるように、彼ら彼女らは国立公園事務所を出る前に、自動小銃を一丁ずつ渡され手離すことは御法度とされます。ポン・カッセのゴリラ観察路を歩く時に、観察の邪魔になるから誰かに預けて、と頼んでみましたが、答えは却下。規則破りを強要する訳にもいきません。
ただ彼らの話を聞いていると、野生動物たちはグリーンのレンジャー服をちゃんと覚えていて、例え銃を持っていても無闇に逃げることはない、というのです。確かにポン・カッセの観察路で、ゴリラたちが勝手に慣れはじめた時のチームもレンジャーがリーダーでしたし、マルミミゾウをよく観るようになったという報告も、ポン・カッセからプチ・サバンナに向けたパトロールを担当しているレンジャーチームからもたらされました。
そして今回の視察でも、プチ・サバンナのゾウたちの態度は、さらに「進化!」していました。ポン・カッセからジャンギへのパトロール隊が入れ替わり立ち替わりやってきて、昨年よりずっと賑やかなはずなのですが、ほとんど気にしていないようです。私たちが泊まった翌朝6時半、すでに日が昇って明るくなっているのに、バイのほとりに建てられた観察台のすぐ横、ほんの数十メートルの藪の中に出てきました。
こちらは、鼻息と水浴びの騒々しさは動物園のゾウ舎さながらなのに、微妙に姿が見えないもどかしさで、観察台の外廊下を何とか観たいとオロオロです。でもその最中に「ああ、これは『共存してもいいよ』と、ようやくゾウに許してもらっているんだな」と突然悟り、10年来のロベケ通いが報われた感激が押し寄せてきました。長年の皆さまのご支援と、現地の仲間たちの努力の賜物です。ありがとうございます。
この素晴らしい世界を、これからも残していけるよう頑張らねばと、ジャングルの朝に誓いました!! どうぞ今一度お力添えを、よろしくお願いいたします!
↓プチ・サバンナで観察した、生まれたての真っ白なシロクロコロブスの赤ちゃんです
【ギフトについて】
ご希望の皆さまにお送りする予定でしたギフトのうち、「会員向けメールマガジン」がアフリカ渡航中に現地のインターネット回線不通で、まったく発行できない事態が発生しておりました。このため発行回数が想定より減ってしまいましたこともあり、プロジェクト終了後もアフリカ出張期間分として、3号分を引き続き配信させていただきます。
【お寄せいただいたご支援の使いみち】
2023年暮れまでに、クラウドファンディングにお寄せいただいた3,775,000円は、当初の予定通り、以下の活動に充当させていただきました。
・ポン・カッセ派遣現地活動費(契約期間:2023年3月〜2024年2月) 約410万円の一部
・UAPACAAパートナーズスタッフ旅費 約73万円の一部
・UAPACAAパートナーズ管理経費(人件費、ギフト経費、通信費等) 約100万円の一部
・クラウドファンディング(12%+税)と早期入金オプション(3%+税)手数料 約62.3万円
不足した分につきましては、他にいただいたご寄附などを充てて、ここまで現地支援を続けてきました。しかしそれも限界に来ており、継続のために新たなクラウドファンディング募集を開始するところです。
皆さまの温かいお志を、再びロベケ国立公園とマルミミゾウたちのためにお寄せください!