「児童養護施設を退所した若者たちの困りごと」

児童養護施設でカットのボランティアを続けていくうちに、もっと子どもたちと深く関わって

いきたいという思いが強くなりました。

あるとき園長先生に相談したところ、「家庭体験」という提案をいただきました。

私の仕事は平日休みが多いため、夏休みや冬休みに子どもたちが私の家に泊まりに来たり、

一緒に出かけたりするようになりました。

そうして数年にわたり、子どもたちと自然な形での交流を続けてきました。

やがて、彼らは成長し、施設を退所して社会へと巣立っていきます。

「美容室にはいつでもおいでね～」
そう伝えていたこともあり、退所後も何人かの子が美容室を訪ねてきてくれるようになりました。

すると、自然と仕事や生活の悩みを聞くようになりました。
施設では仲間も先生もいて、衣食住が整っていた環境から、突然のひとり暮らし。

そして慣れない仕事。
社会に出るということは、たくさんの「初めて」に囲まれることでした。

慣れない職場では、怒られたり、注意されたり…。
心が落ち込み、帰宅しても食事を作る気力もない。つい買って済ませてしまう日々。
するとお金もどんどん減っていき、生活が苦しくなっていきます。

話せる同期や先輩がいればいいのですが、そういう環境でない場合、誰にも相談できず、

どんどん不安が大きくなり、ついには仕事を辞めてしまう…。

次の仕事を探さなきゃと分かっていても、心も体も疲れ切っていて、動き出せない。
ようやく就職活動を始めても、今度は「緊急連絡先」や「保証人」が求められる現実に

直面します。

頼れる親がいない彼らにとって、この壁はとても大きいのです。

このような話を聞くたびに、「社会で生きていくには、支えが必要。話せる人が必要だ」

と強く感じました。

私自身、親ではないけれど、彼らの“もう一人の大人”として寄り添える存在になりたい。
そう考えて、一般社団法人を立ち上げる決意をしました。

法人として活動することで、就職時の緊急連絡先、病院や不動産屋さんとのやり取り、

弁護士相談への同行など、本来は“親”が担う場面にも、正式に関われるようになりました。

それでも、一人ではできないことも多く、他の支援団体に足を運び、学び、つながることで、

専門的な知識や支え方を身につけてきました。

若者たちには、「困っても、なんとかなる」「話していいんだよ」と伝えたい。
大きな「困った」になる前に、小さな「困った」を打ち明けられる場所をつくりたい。
未来に、ほんの少しでも希望が持てるようになってほしい。

そう願っています。

今の時代、ネットでのつながりも増えましたが、やはり“顔を見て話す”“一緒にごはんを

食べる”そんな関係が、心を支える大きな力になると感じています。

そして、この活動を一人で続けていくには限界があります。
だからこそ、少しでも多くの方にこの現実を知ってもらい、共に関わってくださる

「理解者」を増やしていきたいと思っています。

困りごとは、誰にでも、いくつになっても起こるもの。
それでも、失敗から学び、理不尽に負けず、立ち上がる力を持ってもらいたい。
そのための“最初の一歩”になれるように、これからも活動を続けていきます。

皆さんの応援をこれからもよろしくお願いします。