プロジェクト終了報告
「ゼロ・ウェイストな暮らし体験ができる茅葺き民家を守りたい」プロジェクトに、ご支援、応援、そしてボランティア活動にご参加いただいた皆様に、スタッフ一同、心から感謝いたします。
お陰様で、3月2日に北面屋根の葺き替えが完了しました。雨や雪に見舞われ、予定より少し遅れましたが、事故やケガもなく終了できたことに安堵しています。
(before:葺き替え前の北面)
(after:葺き替え後の北面)
葺き替え作業はまず、1月9日の足場づくりから始まりました。
材料の茅についても、1月中に3回、今年の分を刈りに行き、旧花野邸の保管部屋に運び入れました。これまで4年かけて集めた茅はおよそ1200束。これで十分揃っただろう!と意気込む私たちは、この後たいへんなことになるとはまだ気がついていませんでした…
初日の2月10日は雨のなか、打ち合わせや下準備。「たわら」という屋根の一番上に飾るちょんまげのようなものの作り方を教わったり、足踏式脱穀機で茅の葉っぱを取る(しぶをそぐる)作業を試行したりしました。
旧花野邸の棟の上についていた「たわら」は7本。葺き替えても同じ見かけになるように7本作りました。
そして、この時点まで、すべての茅の「しぶをそぐる」予定はしていなかったので、さぁ大変!
というのも、八重地のやり方では、しぶは残したまま葺いていたそうで、これまで集めた茅は、むしろ、しぶを残していたのです。八重地のアイデンティティを守る、ということも大事なことではありますが、しぶを取った方がキレイに仕上がるし、葺きやすくて速い、という職人さんのアドバイスを取り入れ、1200束もの「しぶをそぐる」戦いが始まったのです!
それは、束をいったんほどいて、ひと握り分ずつ道具や手を使ってしぶをとり、軸がまっすぐなものはまっすぐなもの、曲がったものは曲がったもので集めて束を作り直す、という果てしない作業です。
2月11日には雨が上がり、北面の茅を剥がしました!
天井裏からは、なかなか見られない景色が!
軒(茅屋根の一番下の部分)には、使える茅もあったようで再利用できましたが、棟(屋根のてっぺん)の方はもうボロボロに腐っていて、使える物がほぼ無かったので2日見込んでいた撤去作業は1日で終了!
茅を剥いだ後は、「えつり」という下地の竹を点検し、使える物は使い、補強すべき所は新しい竹で補強する行程を経て、さぁ葺き始めです!
と思ったら、また雪と雨。2日間の休みをはさんで2月15日から作業再開です。
この日からは、徳島県三好市の中平建工の職人さんが4名全員揃い、ガンガン葺いていきます!そのためには、しぶをそぐり終わった茅束がたくさん必要になるので、地上では駆けつけてくれたボランティアさんが無心でしぶをそぐりますが、人数が少ない日はなかなか追いつかず、校長からは「上、茅足らんよ~」とプレッシャーを掛けられまくります・・・
延べ15日の間に、参加してくれたボランティアの皆さんは、延べ70名!
本当に助かりました。有り難うございました。
「雨でなければ、雪でもやります」という職人さんの方針の下、吹雪の中でも汗をかき、その汗が休憩で冷え、晴れた日には晴れた日でキツい紫外線で肌を傷めつつ・・・
厳しい環境の中でも、ボランティアの皆さんは、「楽しかった!」と言ってくれました。その笑顔を見ることが出来て、申し訳なさも少しは和らぎましたけども、本当に有り難うございました。
葺き方のコツや、八重地には無かった道具について聞きながら、どんどん葺いていきます。
その下では、上で切られた茅などがどんどん落ちてくるので、常に掃除。古い茅、そぐったしぶ、長さを揃えて葺くために切った部分、どれもが肥として畑に欲しがられる優良な有機物です。フレコン(いわゆるトン袋)で軽く20杯分以上出たかと思います。役目を終えた後でも、自然の循環の輪の中で、私たちに恵みをもたらしてくれるんですね。
そして、忘れてならないのは、毎日毎日、10時の休憩、お昼ご飯、15時の休憩に栄養補給や癒やしを与えてくれた炊き出し班の協力です!
「今日のご飯は何かな?」「あぁ、良い匂いがしてきた。もうちょっと頑張ろう。」そう思わせてくれる炊き出し。最小6人から最大25人まで人数が変動しながらも対応してくれた炊き出し班の皆さんに感謝です!ちなみに、最後のほうにブームになっていたのは、職人さんが直火で焼いてくれた、焼きみかん。体も温まり、甘みも増して最高でした。
さて、作業のほうに話を戻すと、2月24日には一番大事な棟(むね)の作業に入っていきました。
最初の打ち合わせで、今回は杉皮を入れて丈夫にすることを決定。ちょうど2年前に「ひさし」を葺き替えた時に残っていた杉皮があったので、それが活用できました。その杉皮も、町内の林業家さんが50年前から蓄えていたのを譲っていただいた大切なものです。その他にも遮水シートを使い、雨漏り対策万全の棟を目指します!
杉皮を並べ、押さえの竹で締めたら、縫い目の穴を隠すように「たわら」を置き、飾りの竹を乗せて棟は完成。(と、書くのは簡単ですが、棟にたどり着いてから5日ぐらいかかっています)
仕上げに茅をバリカンで整えていきます。散髪の時のように、角度をこまめに確認しながら刈っていきますが、実は親方、茅を葺いている時からも頻繁に角度を確認していました。
遠目から見て、茅が膨らんでいないか、凹んでいないか、元からある茅との境目に違和感が無いか。棟に近づくほど確認の回数は増え、緊張感が感じられました。
最後はまた雨が降って作業中断。3月2日に無事に完成までたどり着き、立派な屋根が出来ました!パチパチ!
作業を終えてみて、今回携わった若者スタッフは、ここには書き切れない技術を学ぶことが出来ました。茅一本一本の選び方、ヒモの結び方一つをとっても、それが必要な理由がちゃんとある。次に作業する人のため、次世代のため、バトンをつないでいけるようになりたいと思います。改めて、技術を惜しみなくご教示くださった、中平建工の皆様に深く感謝申し上げます。
◆収支について
この度のクラウドファンディングでは1,363,000円のご支援が集まりました。
うちサイトへの手数料179,916円(税込)とリターン費用176,000円(税込)を差し引いた1,007,084円は、茅葺き作業に従事していただいた業者さんへの支払いへ充てさせていただきます。
◆リターンについて
大変お待たせしております。3月下旬~4月末までに発送する予定です。もうしばらくお待たせいたしますが、ご了承ください。イベント参加などに付きましては、ご要望をいただきスケジュール調整後に確定となりますのでよろしくお願いします。
◆今後について
今回北面を葺き替えましたが、こびら(横の小さい面)と南面の補修が残っているので、これからも茅は集め続け、出来るようになったらまた作業を行います。棟が新しくなって雨漏りの心配が無くなりましたので、4月から施設利用を再開いたします。
私たちの活動は、今後もFacebook等で情報を発信していきますので、これを機会に末永くお付き合いしていただけると嬉しいです。コロナが落ち着いたら、ぜひ一度実物を見に来てください!お会いできる日を楽しみにしています!
ひっそり見に行きたい場合は、普段は無人なので、ご自由に近くまでお上がりください。事前にご連絡いただければ、ご案内もさせて頂きます。
すっかり仲良くなった中平建工の皆さんと