シャチとヒトが共に生きる未来のために。知床・釧路の調査を拡充

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3,520,000

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2023年01月21日 12:23

マッコウクジラと英語の話

マッコウクジラのライブストランディングと海洋投棄で世間は賑わっていましたね.マッコウクジラの専門家とは言えない私のところにも取材が来ていたのですが,ちょうどそのとき調査に行っていて,返信が滞ってしまいました(すみません・・・).


 

マッコウクジラの研究者は他にいるので,詳しくはその先生方に聞いていただければと思うのですが,「なぜ迷い込んでしまうのですか?」と聞かれても,「それはクジラに聞いてみないと・・・」と私だったら答えてしまう気がします.

 

 

でも実はマッコウクジラについてだけではなく,研究しているはずのシャチについても,質問に答えられないこともあります.私が勉強不足なだけ,という場合と,本当にわかっていない場合とがあります.そして,一度広まった「定説」については,「XXとも言われているけれど,それを否定する人もいて・・・」などと,歯切れの悪い回答になり,「それはまだ証明されていません」ということはなかなか広まりません.

 

 

今回のマッコウクジラの話題でも,「マッコウクジラの大きな頭の中には,脳油と呼ばれるものがあって,冷えると固まるので浮力調節に使われる」というのがまことしやかに流れていったのですが,実はそれ,まだ誰も証明できていないのです.

 

マッコウクジラは潜水するときに尾鰭を上げて潜ります.

 

 

 

Clarke (1970). Function of the spermaceti organ of the sperm whale. Nature, 228(5274), 873-874

これはマッコウクジラの頭部の構造としてとても有名です.spermacetiというのが脳油です.

 

 

なぜ,「脳油凝固による浮力調整説」が根強いのか.

 

やはり,検索すると出てくるですかね・・・.

 

「脳油は他のハクジラ類のメロンと異なり、マッコウクジラの体温下では液状であるが、約25℃で凝固することが知られている。鯨類学者クラークはこの性質に着目し、潜水の際には鼻から海水を吸い込んで脳油を冷やすことで固化させて比重を高め、浮上の際には海水を吐き出し血液を流し温めることで液化させて比重を小さくすることで、急速な潜水および浮上を可能にしているという説を唱えている。」(マッコウクジラ, Wikipedia, 2023年1月21日確認)

 

とあります.

 

 

ちなみに,英語のWikipediaで"sperm whale"(2023年1月21日確認)では,

”The spermaceti organs may also help adjust the whale's buoyancy. It is hypothesized that before the whale dives, cold water enters the organ, and it is likely that the blood vessels constrict, reducing blood flow, and, hence, temperature. The wax therefore solidifies and reduces in volume.[90][110] The increase in specific density generates a down force of about 392 newtons (88 lbf) and allows the whale to dive with less effort.[citation needed] During the hunt, oxygen consumption, together with blood vessel dilation, produces heat and melts the spermaceti, increasing its buoyancy and enabling easy surfacing.[111] However, more recent work[95] has found many problems with this theory including the lack of anatomical structures for the actual heat exchange.[112] Another issue is that if the spermaceti does indeed cool and solidify, it would affect the whale's echolocation ability just when it needs it to hunt in the depths.[citation needed]

 

と書いてあり,最近の研究では問題が指摘されているところまで書いてあるのです.

 

バイオロギングを用いたMiller et al. (2004)の論文でも,Clarkeの説と一致しないところがあると示されています.

 

 

日本語の情報だけだと,網羅的な研究レビューができないので,学生の皆様は英語でも調べるようにしてくださいね!

 

 

さて,他にも調べたことをTwitterで上げたところ,

 

 

 

確かにこれ,どうやって切ったんだろう,と思って調べてみると,New York Timesの記事にこんな図が.

 

 

頭の"junk"と呼ばれる脳油が取れないところを切り離して,"case"と呼ばれる脳油が入っているところをとって,その後,リンゴの皮を剥くようにくるくる体の皮を剥いていく,と・・・.

 

 

そんなこと,船の上でできるんですかっ?

 

 

と思ったら,少なくとも頭の切り離しは船に横付けしてやっているようでした.

 

 

2人の男性が,cutting stageに立って,マッコウクジラの"case"から "junk"を切り離しているところ.Copyright 1903 by H.S. Hutchinson & Co.

(アメリカは政府がこのような写真をデジタルで公開し,ダウンロードできるようになっているのですよね.すごいなぁ・・・)


 

ですが,やっぱり,Clarkeの図のように構造を調べたいなら,船の横付けの解体では無理で,じっくり開いていく必要があります.

 

ニューヨーク港に迷入して,捕獲されて死亡した若いマッコウクジラ(5.5m)の鼻の部分の解剖図.Raven, H. C., & Gregory, W. K. (1933). The spermaceti organ and nasal passages of the sperm whale (Physeter catodon) and other odontocetes. American Museum novitates; no. 677.

 
これはちゃんと博物館まで運んで解剖したようです.
 
ストランディングネットワーク北海道(SNH)の調査のお手伝いで,浜辺でストランディングした小さいマッコウを解体しましたが,皮が硬くて刃を入れるのも大変だったので,これもきっと大変だったのではないか,と実感を持って感じます.
 
 
今回の大きな成熟オスのマッコウクジラも,色々と大変だったと思います.関係者の皆様,お疲れ様でした.
 
 
そしてもし,シャチが何らかの原因で死んで海に浮いていたとき,通常であれば,そのまま放っておかれます.もし海獣班が情報を得て,回収して解剖したい!と思ったら,持って帰ってもらい,引き上げてもらい,解体後の処理費用まで,全部の作業の支払いは海獣班持ちになるそうです(追記:実は以前,調査中に死亡個体を発見して,持って帰ってもらったことがあったのですが,それは調査でチャーターしていた船とその親会社で重機を出していただいた建設会社に,調査コーディネーターの方が交渉してくださり,費用を免除していただいたのでした….その当時は気軽に考えてしまっていたのですが,他の場面だったら無理だったと今ならわかります.).
 
 
もし,沿岸に流れ着いたら自治体が処理することになるのですが,流れつかなかったら永遠に調査機会は失われますし,流れついてもドロドロに腐っていて,わかることが少なくなるかもしれません.ですので,わかったらすぐにでも引き上げたいのが研究者としての希望です.
 
 
いつあるかわからないけれども,千載一遇の機会を想像し,100万以上はかかるだろう費用をどうしたら良いだろうか,と頭を悩ませています・・・.

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