重要文化財日下部民藝館・吉島家住宅｜歴史を護り繋ぐ運営費にご支援を

建築家・東京大学名誉教授 大野秀敏先生より応援メッセージを頂戴いたしました。

■吉島家と日下部家の住宅
吉島家住宅と日下部家住宅は、日本の民家のなかで燦然と輝く町家の名作です。いずれも空間構成は極めて明快で、見せ場の土間には力強い空間のドラマがあります。日本の伝統的な建築空間の統語法の全てがここに流れ込んでいると言って差し支えありません。この二軒の町家には一見似たように見えますが、見比べればそれぞれ明確な個性が見て取れるでしょう。重厚で強い意志を感じさせる日下部家に対して軽快で知的な吉島家住宅の対比と申しましょうか、近代的な個性とは異なる個性あり方というものを識ることができます

二つの中で、私が特に好きなのは吉島家住宅です。空間構成の論理は透明で、吹き抜けの梁組にみる品格の高さは民家の水準を大きく超えています。吉島家住宅は法隆寺や桂などと並ぶ日本の建築文化の至宝です。ところが、芸術品に対する公的な認証制度では不当に低く評価されています。国宝に指定されている建造物は２２６件ありますが（2019年度末）、国宝に指定された民家は一件もなく、吉島家住宅と日下部家住宅も含めて民家は全て重文止まりです。建造物の評価に士農工商の身分制が残っているのではないかと疑っています。民家の価値は民俗資料だけではありません。建築としてみたときに吉島家住宅には国宝の価値があると密かに思っています。

世界に誇れる価値をもった二つの町家建築をいつまでも残すことは人類文化に対する日本の責務だと思います。

撮影 大野秀敏