ケンブリッジ大学英語・学術研修参加費支援プロジェクト終了報告
【プロジェクト成立への御協力をありがとうございました】
まずは、本研修存続のための奨学金の原資として、多大なる御寄付をいただきましたこと、改めて御礼を申し上げます。これにより本研修の延命を図ることができたわけですが、その意義はそれにとどまらず、全国で経費高騰に苦しむ大学の海外派遣短期プログラムの運営者に対し、この種の研修に運営に対して、クラウドファンディングが極めて有効な手段として機能するということを、真っ先に示したものと考えられます。その影響には極めて大きな意義があり、皆様からいただきました御厚意が、本研修を直接支えるのみならず、社会にも貢献するものであったことを、プロジェクトの実行者として、大変うれしく思っています。
さてこの「九州大学ケンブリッジ大学英語・学術研修」ですが、2019年まで、すなわちコロナ禍前までは、参加者が全ての費用を全額負担する形で催行されていました。しかし1)コロナ禍で航空運賃が高騰し、2)1990年代以降日本では物価が上がっていない中を英国ではコンスタントに物価が上昇していたのがコロナ禍で一気に英国の物価が上がり(10%以上すら記録)、3)外貨に対する円安が進行し、本研修に限らず多くの海外プログラムの料金が高騰する中、本研修の存続に、多大な御貢献をいただきまして、未来を担う若者に、世界有数の大学における上質な大学学術文化の体験をする機会を、引き続き提供することができるようになりました。このことは、本研修にとっても、この種の研修一般にとっても、未来に対して明るい光を感じることを可能にした、大変貴重な御支援でした。
そのクラウドファンディングの内容詳細は、現在でも下記ににて御確認いただくことができます。
https://readyfor.jp/projects/kyudai-Cambridge
【いただいた御寄附が本研修にどのような支援となったかの御報告】
<本研修のこれまで>
本研修は 1996(平成 8)年に創設[世話教員:廣田稔名誉教授]、1999(平成 11)年よ り鈴木右文教授が世話教員として実施、これまでコロナ禍の中止(2020-2022)を除き、 26 回(2024 年)までの開催で 917 名の参加実績があります。 九州大学基幹教育言語文化科目「学術英語集中演習・2単位」、日本中から学生の集まる共創学部の留学義務対象プログラムです。 本研修の参加者から交換留学生、文科省のトビタテ!留学JAPANの奨学生および九州大学で優秀な学生を表彰する山川賞受賞者を輩出しています。
例年、8 月中下旬から 9 月上中旬の 1 か月弱の現地研修ですが、前年 11 月頃から約 10 か月間の長期間にわたり、手厚い事前研修を授業として実施しています。
<研修費用の高騰>
コロナ禍以前の過去の参加費用は一人あたり 66.0~79.4 万円(一人部屋)でしたが、 ロシア・ウクライナ情勢等に伴う為替変動および物価高騰の影響から、2023 年には総額 113 万円(一人部屋)、2024 年には総額 129 万円(一人部屋)になりました。2025 年にはさらなる上昇の可能性もあります。
<奨学金設置と原資の確保>
そこで本研修における研修経費の支援を目的に、「鈴木八重子基金」950 万円を原資として、 2022(令和 4)年 11 月に研修を主催する九州大学言語文化研究院が、奨学金内規および奨学金運用申し合わせを制定しました。それ受けて2023(令和 5) 年には大学発の「クラウドファンディング」として本募金活動を実施し、目標額に達成しさらに積み増しをして、奨学金原資に約 302 万円 が加えられ、原資は 1,252 万円になることになりました。このクラウドファンディングの成功のおかげで、さらに 2024-2027(令和 6-9)年の計画にて九 州大学基金使途特定寄附「ケンブリッジ大学英語・学術研修参加支援基金」の設置へとつなげることができ、大変感謝しております。現在、 大学のファンドレイザーとともに原資を増やす取り組みを行っており、令和 6 年 6 月 5 日現在で集まっている寄附額から控除分(7%)を差し引いて約 1,657 万円が加わり、現 在まで集まった金額は約 2,909 万円となっています。
しかし 2023 年参加者には約 396 万 円、 2024 年参加者には 355 万円もの給付をして、ようやく最低催行人員確保が出来たところであり、この資金繰りの流れを作った本クラウドファンディングがなかったら、すでに息絶えていたかもしれず、どんなに重要なステップであったかと、現在その思いをかみしめています。
また、クラウドファンディングという外部の方々との関係構築の事業を志したことがきっかけとなり、本研修を世話教員の個人的な対応によらず、正式に言語文化研究院の組織として対応していくため、研修参加者の決定、奨学金の給付・管理運営等を担う研修実施委員会が 2022 年 11 月に設置されるに至りました。こうして研修実施体制が強固なものになったのも、クラウドファンディングのおかげです。
【収支報告】
本クラウドファンディングは2023年3月から4月にかけて実施され、本研修のために使うことのできる金額として、約302万円が集まりました。改めて御礼を申し上げます。この金額は全額2024年夏渡英の研修参加者のための奨学金給付に使われました(355万円の給付でしたので、不足の約53万円は上述の「鈴木八重子基金」からの支出となりました)。
具体的には、24名の研修参加者のうちの奨学金給付申請者22名中、17名には標準額の15万円、特に優秀と認められた5名には20万円が、現地研修出発前の6月頃、九州大学の関連事務部から銀行振込により参加者本人の銀行口座に振込が行われました。合計で支出額は355万円となり、そのうちの約302万円が本クラウドファンディングによるものとなります。この給付額は、言語文化研究院の本研修の運営のための委員会、言語文化研究院総務会、言語文化研究院教授会の議を経て定められたものです。(その後急速なコスト増により、詳細は省略させていただきますが、2025年夏渡英分の参加者からは、為替レートの水準によって給付額が変動となる制度に移行します。それによると、もっともレートが円安の場合には40万円までの給付が可能になります。)
【2024年夏の現地研修】
<申込から現地出発まで>
このように、いろいろな意義深いクラウドファンディングでしたが、お金の流れから言えば、直接はすべて2024年夏の研修参加者への奨学金給付に使われたわけであり、その充実した内容を、御報告として御報告致します。
この夏渡英した参加者たちは、2023年4月配布のチラシや説明会等を通して情報を得て、5月から9月にかけて応募し、担当教員による面接を経て、言語文化研究院の研修運営に関わる委員会で、学業成績や英語能力なども判断材料として選抜されました。10月に言語文化研究院内で総務会、教授会と審議を進めて最終承認され、24名の合格と希望した22名への奨学金給付が決まりました。
その後10月30日に事前研修の最初の会合が始まり、以降14回の昼休み会合と5回の週末の学習連絡会(3時間が1回、終日が4回)が2024年8月12日にわたって実施され、英語の学習状況のチェック、英国歴史文化に関する学習と発表、英国の社会地理文化に関する発表、現地での週末旅行に関する準備等が実施されました。
<現地研修へ出発>
いよいよ8月19日には福岡を出発、羽田前泊を経て、20日夕刻にロンドン・ヒースロー空港へ到着、貸切バスでケンブリッジへ向かいました。到着は午後8時頃で、翌日の行事の簡単な説明と軽食の提供を受け、キャンパス内の学寮の滞在が始まりました。
<現地研修プログラム>
21日はオリエンテーション(ここで現地研修部分を共有する成蹊大学からのグループと初顔合わせになります)とケンブリッジ市内の案内。以降8月22日から9月9日までの平日は授業日(8月30日を除く)。毎日75分×2コマの英語授業があり、3人の先生からそれぞれプレゼン中心、英語の音声訓練中心、実用英語中心に学びます。また授業期間中に75分×12回(1回は試験)の授業があり、今年は3科目(英国視覚芸術、ケンブリッジにおける科学、シャーロック・ホームズ)の中からの選択制でした。
<現地研修の諸行事>
この他、礼服で臨む晩餐会(ケンブリッジ大学等世界でもわずかの大学にしか残っていない正規生の教員との礼装によるディナー。行先のペンブローク・カレッジでは正規の学期には毎週行われる。ラテン語による祈り等独自の文化が残っている)が3回、午後茶会、カレッジ出身の有名人ゆかりの貴賓室の見学会、世話役の現地学生が企画する各種の文化・スポーツ・エンタメ行事が加わりました。
さらに九州大学の正規科目の一部としてのケム川のパンティング(舟遊び)と隣村グランチェスターにある果樹園屋外喫茶店(ラッセル、ヴィトゲンシュタイン、ヴァージニア・ウルフ、ルーパート・ブルック等の知識人のグループで有名)へのハイキングを担当教員の随行で行いました。平日の空き時間には、豊富なケンブリッジ大学の諸博物館・植物園や、宗教文化施設等の見学を個人個人でしてもらいますが、期間中に行き尽くすことは到底できない充実ぶりです。これらの経験は、世界有数の大学ケンブリッジで行うことの緊張感を最大の幸福感に変換してくれます。
<週末旅行>
これはこの研修の大きな特長です。渡英前年から週末の旅行の準備を始めます。旅行先の選定からグループ形成を経て、教員からは鉄道やバスを利用した旅程作り、座席指定の取り方、宿泊施設の選び方等の指導も行いますが、週末のことでもあり、実施の責任は参加者自身が追う形で、自由に英国内を旅します。長期間かけて準備をするため、実際にそれが実行できたときの歓びは絶大なものになります。安全な校内に留めるのではなく、積極的に英国内を動き回ってもらいます。なまりで聞き取れない地方の英語、交通機関の日英の常識差などの面も重視します。これを経ると以後の外国行が怖くなくなります。遠くまで出かけられるように、現地研修の週末のうち一度は金曜日を休みとし、木曜日のロンドン発の夜行寝台列車(1年前から予約可)の利用を許可し、スコットランドの端でも行けるように配慮しています。今年もエジンバラ、ヨーク、ロンドン、湖水地方、マンチェスター、コッツウォルズ等々、グループ毎に異なる旅程で参加者たちが修行に出かけました。今回は2週前に予告された鉄道ストライキとぶつかり、その対応を現地であっという間に参加者たちが合意形成する様を見ると、この研修がいかに異文化対応能力を付けさせるのかがよくわかります。旅行は、第1週末の土日のうち天気がよい方がパンティングとハイキングに充てられるため、それ以外の日が自由になり、第2週末は木曜の寝台列車から日曜一杯まで、3泊3日の旅が可能で、第3週末は土日の1泊旅行になります。
<修了式からお別れ>
9月9日は授業が終了、試験が実施され、修了式を迎え、お別れの晩餐会が挙行されます。まさに最高潮大団円です。通例は翌日午後1時ころ帰国の途につくのですが、今回は航空便の都合で9月11日の出発となるため(成蹊大は10日の出発)、10日がケンブリッジ市内の見残しと隣町のイーリー限定で過ごす日でした。
<参加者の気持ち>
現地到着3日後程度で既に「もう最高で、すでに費用の元をとった気分です」という参加者が現れるなど、充実の現地研修だったと思います。最初の頃はケンブリッジのゆったりとしたペースと充実した行事で、時がゆっくり経つように感じるのですが、後半になるとまさにあっという間で、日本に帰りたくない病が蔓延しますが、実行する学生がいなくて助かりました。現地にいる間から参加者たちは、来夏の応募状況を心配し、積極的に臨時の説明会・相談会を提案したり、広報のインスタグラムを作成してくれるなど、何とかこの研修やケンブリッジの魅力を伝えたいと盛り上がってくれています。この気持ちが将来、国際関係や世界の人々を支援する活動につながっていってくれたら、担当教員がこの研修をライフワークとした意味があります。
・2024年夏参加者のインスタグラム
https://www.instagram.com/yb_cambridge?igsh=MXJ6ZjB4MTh6bTEydg%3D%3D&utm_source=qr
【リターンの発送状況】
本クラウドファンディングへの御寄附に対するリターンについては、多くが発送済みであり、研修参加学生との懇談会も実施させていただきました(某社の社長様に学生に対して行う学習連絡会においでいただき、興味深い講話をいただきました)。残るは今夏実施された現地研修を含む本研修のニューズレターの送付ですが、2024年度内の送付とお約束しております。現在帰国したばかりの参加者に編集担当人の募集をかけており、例年どおり担当してくれる学生が現れて、若い感性で作り上げるニューズレターが完成することでしょう。2025年3月31日までの発送を目指し、ゆっくりと作業を進めたいと存じます。どうぞお楽しみになさってください。
【今後に向けて】
今回のクラウドファンディングに御協力いただいた方々も、本研修の末永い継続を願っておられることと存じます。現在2024-2027(令和 6-9)年の計画にて、九州大学基金使途特定寄附「ケンブリッジ大学英語・学術研修参加支援基金」を新規に設置して、研修担当教員鈴木右文と九州大学基金課・ファンドレイザーが協働して、基金のパンフレットの制作をはじめ、企業の方々への働きかけなど、活動を強化しているところです。
・新基金HP
https://kikin.kyushu-u.ac.jp/info/news/view.php?page=1&r_search=&r_division=0&cId=1907
研修のコスト高には様々な要因があり、原因が解消されていくにはしばらく時間がかかると思われ、その間にも継続的に催行できるだけの奨学金原資が必要となります。しかし必要金額が高止まりしているため、企業・団体様からの支援も積極的に働きかけていく必要があると考えています。お心あたりのおありの方は、このたび担当教員と基金課で協働作成致しましたパンフレットを御配布いただけますと大変助かります。
・新基金パンフレット
https://archive.iii.kyushu-u.ac.jp/public/wXZEA6PI_q-LffyKByut50csFsP8OWwEvS2D3GdRFa1G
その他何か情報がございましたら、担当教員まで(yubun@flc.kyushu-u.ac.jp)お知らせいただけますと幸甚に存じます。
もちろん肝心の研修そのものについても、事前研修と現地研修の着実な継続はもちろん、その改善を志して、鋭意努力して参ります。研修参加者の充足感こそがこの研修の命だからです。
【終わりに】
以上をもって、本クラウドファンディングへ御協力いただいた皆様への事業報告とさせていただきます。拙い報告をお読みくださいまして、大変ありがとうございました。

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