統合失調症という感性を本に!『めにみえぬものたち』を届けたい
統合失調症という感性を本に!『めにみえぬものたち』を届けたい

支援総額

3,085,000

目標金額 2,600,000円

支援者
198人
募集終了日
2018年5月31日

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2018年05月22日 10:37

大きな音楽

この「めにみえぬものたち」という物語に、実は主人公がもう一人いる。

 

彼女は、幼い頃から、宇宙人と交信していた。そして、大人になってからも、東急東横線では、皮膚がどろどろに溶けているゾンビを目撃したり、30センチぐらいの小さなおじさんにもよく会っている。Tシャツの中に大きな目玉がいて、目が合ったこともある。マンションのエレベーターが、階と、階の間にとまって、扉が開いたことがある。そこには、オレンジ色の不思議な別世界が広がっていた。彼女はミュージシャンとして音楽活動をしている。彼女の音楽は、すべてどこか遠い所から聴こえてくるそうだ。ある日、突然に、キュッキュッキュッ と蛇口がひらいて、ジャーーーッと、と滝が流れるように、音が水しぶきをあげて、音楽は、体の周りから耳のすぐそばで鳴り始めた。この音楽は、私に聴こえない。

 

「勘違いじゃない」「病気なんじゃない」と疑いの目と耳を持った人も、彼女が言葉を発すると、真剣に聞き始める。そして「何か、本当に、小さいおじさんとかいる気がしてきた。。いるよきっと」と皆が言い、疑いは、晴れていく。それは、何故だろう?彼女の名前は、キスミワコ。私の奥さんであり、永遠の親友のような存在だ。

 

ふたりの間に誕生した娘の、ゆもちゃんの顔は、私の生き写しのようだと、よく人から言われる。しかし、性格は、まったく違う。どうやら性格は母親のキスミワコに似ているようだ。彼女たちは、強烈な個性を持っている。そして、どこにいても、個性そのままの自分でいる。私は、どうも周囲の人に影響されやすい所がある。だから、人といると疲れる時がある。しかし、彼女たちは、誰かに、精神の影響をうけることはない。そんな強い自分を持っている。だから誰といても、どこにいても楽しいのかも知れない。

 

先日、広島市内で、詩の朗読パフォーマンスをした。その練習を、本番の日の早朝にしていた。詩を朗読する私の前に、寝起きのゆもちゃんがやってきた。ゆもちゃんは、じいーと、こちらを見つめて、朗読を聴き入っている。この詩は、人間と、社会というものについて書いている。最後まで、読み終えた。ゆもちゃんは、真剣な顔でこちらを見ている。そうして、少し不機嫌な表情でこう言った。

 

「しゃかいってなにぃ?」

 

そして、テーブルに置いていたDVDの盤面を手に取って、そのミッキーとドナルドが印刷されている表面をこちらに向ける。

 

「これは、しゃかい?」

 

「そうだなあ。。ミッキーとドナルドの二人がいると、そこに小さな社会ができるね。この人数が、どんどん増えたら大きな社会になるんだよ」

 

そうすると、ゆもちゃんがミッキーを指差してこう言った。

 

「ちがう!ミッキーはミッキー!ドナルドはドナルド!」

 

娘は真剣な眼差しでこちらを見ている。

 

「ゆもちゃん、ミーミー、だいちゃんは家族でしょ?それは、家族という小さな社会でもあるんだよ。人がいて、その関係性の中に、社会は現れるんだよ」

 

「ちがう!ゆもちゃんはゆもちゃん!ミーミーはミーミー!だいちゃんはだいちゃん!だからみんな、なかよし!」

 

絶対的な社会があって、その一員であることが重要な訳ではない。大切な自分があって社会があるってこと。迷いのないその言葉と瞳に圧倒された。娘に哲学的な問いを、投げかけられた気がした。娘の中にも、外側にも、まだ社会は存在しない。そして、娘は自分が感じたこと、触れた感触を何より大事にしている。社会って触れることができるのだろうか。手に掴むことができるのだろうか。私たちは、自分の身体より、社会を大切にしていないだろうか。大切な社会のために仮面をつけて生きてはいないだろうか。身体を忘れて生きていないだろうか。娘は、どんな場所にいっても自分でいる。そして、自分でいられない場所からは、すぐに立ち去る。

 

そんな娘の思想は、母親のキスミワコの生き写しのようだ。彼女は自分の体験を何より大切にしている。この「めにみえぬものたち」という物語を書き始めて、このタイトルに決めた時に、彼女は不思議そうに言った。

 

「なんで、めにみえぬ、なん?変やで、だって見えてるやん!」

 

私に、不思議なものは見えない。だから、彼女にこう言われるまで分からなかった。そう、見えている人にとっては、紛れもない体験で、確実に見えているものなんだ。彼女にそう言われて、私がスピリチュアル系のものが苦手な理由も分かった気がした。見えていないものを信じる気持ちは好きだけど、見えていないってことが、一番重要になってはいけない気がする。そして、それを、誰かの考えをもとに、集団で信じることは、とても危険だと思う。人間は集団を増やして、より大きな社会をつくりたがっている。狂いたがっている。

 

キスミワコはいつも自分の体験や、気持ちへ素直に生きている。だから、どんなに社会が、それを、妄想だとか、幻覚だとか、幻聴だとかとか、病気だよと、押し付けてきても、撥ね除ける強さがある。外科の先生に、躁病かも知れないので、心療内科に行った方はいいと言われた時も、「ちゃうわ!」と先生に一喝して、その場を立ち去った。

 

彼女は、何かを演じる仮面をつけたこともない。社会のどんな常識の中にいても、自分自身でいられる。だから見えていることに苦しみや、疎外感を持ったことはない。そして、彼女の体験を誰も疑うことはない。

 

彼女の近くにいる不思議なものたちは、決して攻撃を加えてきたりはしない。彼女の友達の宇宙人は、いつも優しく語りかけてくれる。それは、彼女が、世界とふれる時の、優しい気持ちが、そのまま、自分へと返ってきているからだと思っている。自然や動物、人に対する行いは、自分にも返ってくる。そして、何より、自分自身に優しく、素直な気持ちでいられたら、不思議な世界が見えて苦しんでいる人たちも、彼女のように、きっと、もっと楽しく生きられるだろう。

責任や、誰かにとって都合のいい常識やルールで社会は溢れている。その社会で苦しんでいる人たちがいる。キスミワコとゆもちゃんには、誰かの常識や、ルールや、責任も存在しない。キスミワコはキスミワコ。ゆもちゃんはゆもちゃん。そして、彼女たちは、不思議なものを、確実に見ている。社会が、どんなに、私たちを、抑圧しようと、その抑圧を、彼女たちは感じることはない。だって、その抑圧は手に掴めないのだから。彼女たちは、そういうものを信用しない。集団にもならない。だから、それらは、彼女たちの中にも、外側にも存在しないのだ。

 

今日も、彼女は、歌をうたっている。彼女の音楽はどこから聴こえてくるのだろう。懐かしく、どこかで聴いたことがあるようなメロディーが、聴いている私の体に染み込んでくる。どこで聴いていたのだろうか。体の細胞に残っている太古の昔の記憶だろうか。地底の奥底にあるマグマの記憶だろうか。この、ひろい、ひろい、宇宙のどこかに存在する、人類もまだ、発見していない、音楽が鳴りつづけている惑星があるのだろうか。あるいは、そんな私の想像を嘲笑うような、もっと大きな何か。そこから、聴こえてくる音楽に、彼女は耳を傾けている。耳をすまして、手をくっつけて、目をひらいて、音を体から響かせている。

 

リターン

5,000


書籍「めにみえぬものたち」サイン入り 巻末にお名前クレジット

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※1冊は、ご支援者様へお届けいたします。
※0円で本を届けてくれる人には2冊まで、ご希望の冊数を進呈します。周囲の方へ配布頂ければ幸いです。

申込数
151
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発送完了予定月
2018年9月

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オリジナル手描きトートバック

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•オリジナルの手描きトートバックをプレゼントします。作家本人が1枚づつトートバッグへ絵を描きます。世界に1点のトートバッグです。絵柄は、すべて違いますので、こちらで選んでお届けします。絵本などを入れて持ち運べるサイズのトートバッグです。図書館や、本屋さんへのお供に最適です。

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2018年11月

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