研究部門の紹介 ①

今回、このプロジェクトではザトウクジラの鼻水に含まれている体内細胞から、日本で初めて「DNA解析」を実施します。ターゲットとなるのは細胞内に含まれている「ミトコンドリアDNA」というものです。

ミトコンドリアとは？

細胞の中にある細胞小器官の一つで、私たちが生きていくために必要なエネルギーを生み出す、細胞「呼吸」を行っています。おもしろいのは、このミトコンドリアは独自のDNA（ミトコンドリアDNA）を持つことなんです。しかも、このミトコンドリアDNAは母親から子ども達へと伝えられる「母系性遺伝」なのです。つまり、ミトコンドリアDNAを調べると、お母さんの家系がわかるのです。

もし、三宅島にやってくるザトウクジラのミトコンドリアDNAのタイプが、例えばアラスカ周辺のザトウクジラと一致していれば、アラスカから同じ母親家系の個体が日本に来遊していることがわかります。

そもそも、これまで、北太平洋からは28個の母系タイプ（母系家系）が発見されています（Baker et al. 2013）。この母系タイプ（母系家系）の頻度分布には北太平洋の低緯度地域にある繁殖海域間（フィリピン、沖縄、小笠原、ハワイなど、写真１）で偏っていて、それぞれの海域で差があります。

つまり、繁殖海域の間で、集まって来る「家系」のタイプとその個体数に違いがあるのです。例えば、A家系の多くが個体が沖縄に行くのが好きだったり、B家系の個体がハワイに行くのが好きだったりするのです。

今回、北太平洋の最北端の繁殖地？かもしれない三宅島にはA家系タイプ？B家系タイプ？それともこれまで知られていない新しい家系タイプ？など、どのような家系タイプのザトウクジラたちがやってきているのだろうか？？を調べようとしています。

研究部門の紹介②に続きます。