皆で支え合う！全国クレサラ・生活再建問題被害者交流集会の開催

　クレサラ運動の最大の障害が、借金を返せない奴が悪いという社会意識です。借りたお金は返す、当然の社会常識です。私たちも返さなくて良いとは思ってません。でも、返せないお金を貸す側の責任はどうなるのでしょうか。また、返したくても返せない場合はどうするのでしょうか。旧日栄の社員は金を返せないなら 「腎臓（じんぞう）売れ」「目ん玉一個売れ」 と言い放ちました。お金を返せないなら、腎臓を売って、目ん玉売ってでもお金は返せねばならないのでしょうか。近代国家ではあり得ない話です。また、お金をどうしても返せない場合は自己破産によって生活再建ができる法制度があります。

　お金を借りて返せない場合を法は想定して、手当てしています。お金の問題は必ず解決できるのです。さらに、当時はグレーゾーン金利というものがあり、違法な高金利を払わせられていました。それでも、社会の大部分は借りたお金を返せ、返せない方が悪いという考えでした。それを突破したのが3Kです。サラ金三悪といいます。高金利、過剰融資、過酷な取り立て、どの言葉もローマ字にするとKで始まりますから、3Kです。 3Kにはもう一つ、「きつい」「きたない」「危険」 というのもありますから、サラ金三悪の3Kと説明します。高金利、過剰融資、過酷な取り立てという言葉には、順番があります。羅列ではありません。高金利があり、あまりに儲かるから過剰融資となります。サラ金は原則50万円までの小口融資です。しかし、30万円貸してくださいというと、あなたは60万円まで借りられますから、余裕を持って60万円借りたらどうですか。貸しますよ、というのが過剰融資です。

　必要な額より大幅に高額を貸す、これが過剰融資です。これにはサラ金独特の計算があります。本来は借り手の返済能力を調べて、その範囲でしか貸してはいけないことになってますが、返済能力の調査は手間とコストがかかります。それに、借金は一生懸命返そうとしますから、でたらめに貸しても焦げ付きは5％程度にしか過ぎなかったのです。高いときは、109.5％、引き下げられても40.004％、さらに引き下げられて時でも29.2％の高金利で貸し付けていたのです。大手であれば調達金利は10％以下でした。5％の焦げ付きを考慮しても15％の営業コストで29.2％で貸したら14％の利益です。貸せば貸すほど儲かりますから、過剰融資は留まりません。

　それでも、この高金利ですから返済困難な人が続出します。5％の焦げ付きにするには厳しい取り立てが必要です。どんなに厳しい取り立てか、それは人を死に追いやるほどのものです。多重債務者の救済に関わっている弁護士の多くは、顧客の自死という厳しい現実に直面しています。顧客を助けられなかった、弁護士にとって一番辛いときです。私たちのクレサラ運動の厳しさと強さは、単に高金利、過剰貸し付けと数字で理解しているのではなく、それが現実に何をもたらしているのか、それを肌身で理解していることです。生活を破壊するほどの高金利、それは人に死を強いるほどなのです。サラ金三悪の根源は、高金利にあります。高金利だから、平然と過剰貸し付けが行われ、その結果、過酷な取り立てで生活を破壊していきます。

　10月5日の土曜日に熊本でクレサラの幹事会があり、出席してきました。その翌日に念願の相思社を訪問できました。相思社は水俣病を根源から問う拠点で、患者救済に尽力しています。そこに熊本地裁の判決が掲示されてました。低額の見舞金を払うことで被害者の損害賠償請求権を放棄する合意書がありました。形式的には双方合意の契約書です。しかし、熊本地裁は。「 被害者の無知、窮迫に乗じて」の理由により、公序良俗に反するとして無効としました。

　この「 被害者の無知、窮迫に乗じて」というのは、サラ金も同じです。

払えない高金利で無知、窮迫につけ込んでの貸し付けは公序良俗に反して、違法としなければなりません。返せない借り手が悪いのだという理解から、返せないと分かって貸す側の責任が認識され始めました。高金利被害者が、ようやく加害者ではなく正しく被害者となったのです。水俣病でも、奇病だ、水俣の厄介者だと被害者が加害者扱いされる時代がありました。この構造は未だに続いています。奨学金問題もそうです。高額の奨学金を借りなければ進学できないほどに授業料を値上げしていて、借りなければ進学できないのにひとたび返済困難になれば、借りた本人が悪いと非難されてます。

　この構造が本当に深刻と思ったのは、小田原市の生活保護でのなめるなよジャンバー事件、相模原市の 相模原障害者施設殺傷事件も同じ構造だということです。生活保護利用者が、障害者が社会への加害者扱いにされてます。加害者と被害者の関係を取り違えて、被害者を攻撃する、それが日本の社会の根源的な問題です。借りたお金を返せないのは、元々返せないような高金利で貸す側が悪い、多重債務者は高金利被害者だという逆転の認識が広まって、改正貸金業法の成立に繋がりました。

　その運動の推進力が取り立ての厳しさに怯える子供たちの光景です。何度も本多さんが生前に語っていた言葉です。彼は、ガンで2014年5月14日に亡くなりました。多重債務者救済に捧げた人生でした。本多さんの原点が水俣病での原田正純医師の言葉です。

　原田さんは、水俣の患者の惨状を見て「 たとえば、町を歩いていて、たまたま交通事故を目撃するじゃないですか。事故の当事者とは関係なくても、現場に居合わせた責任みたいなものを背負ってしまう。偶然でもね。...地元の大学にいて神経学を勉強していて、しかも、それを見ちゃった。あの状態を見て、何も感じないほうがおかしい。ふつうの人は何かを感じる。もう逃れられないんじゃないですか。それこそ見てしまった責任でね。（朝日新聞西部本社編『原田正純の遺言』岩波書店、2013年、25－26頁） 」と語ってます。

　それこそ見てしまった責任、見てしまった者の責任、それを本多さんはよく口にしていて、みんなそれに共感しました。本多さんもサラ金業者の取り立てに怯える子供たちを見て、見てしまった者の責任をとることに人生を捧げたのです。