きのう、小田原と真鶴の間ぐらいにある「江之浦測候所」を訪ねました。

 

建設された構造物のダイナミックさ

 

 昨年10月に公開されたところなので初耳の方も多いと思います。測候所 と名付けられていますが、観測、測候する機関ではありません。

 写真家で、総合芸術家と称したらいいのか、あらゆることに力を持った杉本博司さんが、「アートでできたお金は、アートで還元したい」と私費を投じて土地の選定からプラン、建設、小田原文化財団を設立して運営するまで手がけている施設です。

 上の写真は「夏至光遙拝100mギャラリー」と呼ばれるもので、右側の壁(内外を大谷石が挟んでいる)の片持ち梁形式で軽量の屋根を支え、左は37枚のガラス板がはまっていて間に柱はありません。夏至の朝には、この正面から太陽が昇ります。(最下段にある公式サイトTOPで夏至の朝の写真が見られます)

 

 金属製のこの構造物は、「冬至光拝隧道」。こちらは、冬至に太陽がこの先から昇り、隧道を通った光が反対側の巨石に当たります。

 

「古代人が意識を持ってまずした事は、天空のうちにある自身の場を確認する作業」であり、それがアートの源だ、という鈴木氏の考えから、このようなものを創り、「測候所」と名付けたのです。

 ほかにも、鎌倉の明月院~根津美術館~当地 と移築されてきた「明月門」、カメラのレンズなどに使う光学ガラスの舞台、元興寺(奈良/天平時代)や法隆寺若草伽藍(奈良/飛鳥時代)の礎石など、新旧さまざまなものが配されています。

 

 どれも、人間として、というより地球上の生物としての自分を思い出させてくれるようなもので、アートのもつ強さに心揺さぶられました。

 

 

スタッフの自然で見事な動き

 

 敷地内のアートもすごかったのですが、それを楽しませてくれるスタッフがに、また感心しました。

 例えば、お茶室に近づいてくる人がいると、さりげなく如雨露で周囲に水を撒いてくれます。

「できる範囲ですけれど」と言いますが、きのうのあの猛暑。まさに焼け石に水の行為なのに、お客様を迎えるときにはきれいにお掃除し、打ち水をし、清々しく準備しておくというお茶の心を、建物であるお茶室にしっかり乗せているのです。

 

 

 ほかのスタッフも、みなさんしっかりと鈴木博司さんの意図を理解していて、さりげなく見学者に話しかけて、押しつけがましくない説明や、違う季節のよさなどを伝えてくれます。

 こういう対応こそが、心地よいもてなしと感じました。

 

 

見せ方のルールのふさわしさ

 

 江之浦測候所は、1日3回(冬場は2回)、約2時間の定員制で、完全予約制。当日の申し込みはできません。入館料は3000円(税別)です。

 ほかの美術館などと比較すると、かなりハードルも料金も高いと感じると思います。

 しかしそれだからこそ、確かな意図をもって見学したいという人が選別できていて、結果としてだれもが心地よくこの空間を感じ、味わうことができるのだと思います。

 予約方法の説明の中に、「近代以前の人口密度を体感していただくため、入場人数を限らせていただくことといたしました」とあります。1人あたり、約50坪の専有面積になるところがMAXなようです。

 

 以前から、旅行者が旅先を選ぶように、旅先も旅行者を選んでいいだろうと考えていましたが、ここではそれを上手に実現していると感じました。

 とはいっても、入館料はこれだけのところを手入れし、掃除し、運営する人件費にもならないだろうなと想像します。そうすると、どこでもできることではありませんし、解決する壁は高いと思います。

 それはともかく、ご興味ある方はぜひ予約して訪ねてみてください。

  https://www.odawara-af.com/ja/enoura/

 

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