津波で壊滅した徳泉寺を救った「はがき一文字写経」恩返しを今。

私は北海道から九州までの、ほとんどの県の方と年賀状でのお付き合いがある。それもこれも曹洞宗という世界は狭いからであろう。

本山での修行時代や各地の寺院での法要のお手伝いをしていると、あっという間につながりが広がっていく。やれ本寺だ末寺だ法類だという寺院独特の結びつきができている。しかし、他の宗門との関係はかなり希薄な感じがする。これも曹洞宗という宗門を狭く感じさせている一因だろうか。

だが、東日本大震災では、どの宗門でもその垣根を取っ払って、支援活動に尽力してきたと感じている。震災から3年後の平成26年12月、私は奈良県五條市の転法輪寺様で、お話をする機会があった。それは「まけないタオル」についてのことと「はがき一文字写経」のことを含めて、被災地の様子を伝えてほしいと依頼があってのことだ。

転法輪寺様は真言宗であったが、広く社会貢献事業も行っていた。「まけないタオル」のやなせななさんと同県であり、既に多くの方が「まけないタオル」をご存じだった。参加者全員が「まけないタオル」を手にした光景は圧巻であった。

こうして宗派は違っても、良きご縁をいただき、その後も折に触れて転法輪寺様は、被災地に手を差し伸べて下さった。「はがき一文字写経」にも多大なご支援をいただいた。そして、震災犠牲者七回忌法要に合わせて、「にぎり地蔵」奉納の活動を始められた。参加者が土をにぎり、胸の前で手を合わせた6センチほどの地蔵さんを造り、窯で焼いて仕上げるというものだ。徳泉寺復興の願いがこめられいるので、「一心本尊」に因んで、「一心地蔵」と名付けられた。やなせななさんもこの活動に賛同され、一体造られている。

すべてができ上がって、転法輪寺の後住様が、わざわざ宮城県までお出でくださり、みなさんの想いのこもった「一心地蔵」76体を奉納して下さった。76という数は、「舎利礼文」というお経の経文72文字と表題4文字を合わせた数である。それを1体に一文字ずつ写経してある。そして平成29年3月の震災犠牲者七回忌法要の折に、参列者に披露し御真入れ（魂入れ）のご供養も行った。因みに、徳泉寺の震災犠牲者は74人である。

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