津波で壊滅した徳泉寺を救った「はがき一文字写経」恩返しを今。

東日本大震災発生の年の2011年11月、シャンティ国際ボランティア会（ＳＶＡ）のカンボジア事務所が開設20周年を迎えた。

 

記念式典がプノンペンで開催され参加してきた。勿論、大震災で混乱期にある日本を離れるのはとてもためらいがあった。私は事務所開設間もない1992年2月に初めて訪れていた。

 

以来、小学校建設や絵本を贈る活動に携わり、10回近く訪問する機会があった。カンボジアとの関りがあったからこそ、ボランティア意識が培われてきたような気がしている。今ある自分の原点がカンボジアだとの思いがあり、無理しても行くべきだと決断した。

 

更にもうひとつ理由があった。大震災の惨状がカンボジアにも伝わり、日本の人々の支援で建設された小学校をはじめとする全国の小学校から、日本の被災者に向けたメッセージや募金が寄せられていたからだ。

 

 

学校給食のないカンボジアの小学校では、子どもたちがお腹をすかないようにともらってくる100～500リエル（約2円から10円）のおこづかいの中から、募金をしてくれたという。各地で行われた犠牲者を追悼する式の様子も伝えられた。その子どもたちに直接お礼を言うことはできないが、何らかの形で謝意を伝えられたらと願ったからだ。

 

 

式典の2日後、その願いは叶った。2008年12月に母の追善供養の意味も込めて、母の名前を冠したドップ・トノット・シズエ小学校を建設贈呈していた。

 

 

そこを再訪する機会を作っていただいたのだ。その日は日曜日であったにもかかわらず、全校生徒が出迎えてくれた。その挨拶の中で、ニョイン・シアラー校長先生は「この度の大震災で、3年前に贈呈式にお出でいただいた早坂さんはじめ、みなさんの安否が確認できず、とても心配しておりました。私たちの村でも、僅かですがＳＶＡを通じて、日本にお見舞いを贈りました。どうぞ困難を乗り越えてください」という、有り難い言葉を述べてくださった。

 

3年前は小学校すらなかったなかったこの村の人々も、遥か日本のことを思ってくださっていることを知り、胸が熱くなった。

 

カンボジアの高僧マハー・コーサナンダ師の言葉に、「まさかの友が真の友」というのがある。

 

世界中の誰もが「まさか」と思った東日本大震災に対して、実に多くの方から手を差し伸べていただいたおかげで復興に向かうことができた。今「まさか」の恩返しを、私「はやさか」は考えている。