駒場農学レガシー，ケルネル水田を未来に継承するために

今回は2023年4月から10月までに行った動植物調査の目的および、環境影響評価の視点から見たケルネル水田の特徴を紹介します。

【動植物調査の目的】

水田本来の機能改善と希少な動植物等の生息・生育地としての環境保全を両立させるため、現状の動植物の生息・生育状況を把握することです。

【水田の特徴その①】

明治時代から続くケルネル水田では、限られた人により管理されてきたために、外来種の侵入や人による踏み荒らしなどは限定的です。現在では少なくなってしまった昔ながらの水田の自然環境が良好に残されています。確認された150種の中には、7種の絶滅危惧種（東京都区部）が含まれていました。ケルネル水田は、水田特有の植物が多くみられ、帰化植物なども比較的侵入が抑えられています。

【水田の特徴その②】

動物の生息状況についても、植物と同様に、水田と緑地が一体となっている環境は 23 区内では限られており、確認された両生類や爬虫類9種のうち外来種2種を除く7種は東京都区部の絶滅危惧種でした。また、トンボ類・水生昆虫類では、確認された16種のうち2種が絶滅危惧種でした。このような種が現在も生息しているケルネル水田およびその周辺環境は保全の重要度が高い場所であることいえます。

【水田の特徴➂】

一方、現在の水田をトンボ類相から見ると、現存する環境に比べ確認個体数が多くありません。これは常時水が保たれた植生のある水域が見られず、多様なトンボ類が生活を完結できる十分な環境に乏しい状況であることに起因しており、それらが改善されれば生息の回復が期待されると考えられます。

引き続き、改修工事と環境保全との両立を目指します！