駒場農学レガシー，ケルネル水田を未来に継承するために

改修工事により水田全体の表層土が掘り返され、土壌改良されると、表層土壌に依存する植物などは大きく減少する可能性があると考えられます。また、中の土を掘り出して広げると、温度差などで埋土種子が発芽ことがあります。そこで、2023年7月～9月の間、中層にある土の発芽試験を行いました。これは、新しい種子が発見される可能性があるためです。ケルネル田んぼ内の6ヶ所において、水田耕作前の2023年5月2日に土壌採取を行いました。採取深度は➀深さ 40cm 程度、➁深さ40cm以上の2種類としました。

採取した土壌は、深さ 20~30cm 程度、縦横 60×80cm 程度の9個の箱に巻き出しました。土壌を巻き出した9個の箱を校内に置き、水の管理および発芽植物の観察を行いました。観察は約半年続けました。下の写真が発芽試験の様子です。水がなくならないように、生物部の生徒にお願いしながら、夏日も水やりを続けました。

下の写真が調査終了後（10月）の様子です。最終的に芽生えた種数は20種で、うち東京都区部の絶滅危惧種が3種ありました。また、絶滅危惧種ではありませんが、都内での最近の記録として見られなかった「ホタルイ」という湿地の植物を確認しました。ケルネル水田は限定的な使用方法のため、外部から植物が入っていることが少ないことが挙げられます。今後も生物多様性の視点を大切にしていきたいと存じます。

※この埋土種子調査などの結果を受けて、最終的には山土や植物性資材の混入は行わないこととしました。